奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その155)

2017-01-26 09:09:47 | 奈良・不比等
荒井正吾・奈良県知事は平城宮跡を横切っている近鉄奈良線の移設にご執心である。運輸省出身であり参議院議員の頃から平城宮跡の整備と併せて考えてきており、平成20年には世界遺産・平城宮跡を県営公園から国営公園に昇格させて国交省の予算により公園整備が進むようになった。近鉄奈良線の移設問題については、大和西大寺駅の立体交差などを解決しなければならず、直ぐに片付くものではないが「今から云っておかないと40年たっても50年たってもこのままだろう。」との思いから荒井正吾知事は近鉄に正式に検討するように申し入れたとのこと。------
近鉄では、佐伯勇(さえきいさむ)社長の時代に大阪万博を控えて近鉄奈良線の大阪難波乗り入れと、近鉄油坂駅(新大宮駅)から奈良駅までの路面交通部の地下化を行った。この時も大和西大寺駅から地下化することも検討されただろうが平城宮跡の地下を掘削するのは遺跡を破壊するので取り止めたのではないかと考えられる。-------
平城宮跡を歩いて四方を眺めると、平城ニュータウンにある奈良市のごみ焼却場の白い煙が気になったり、大極殿の北側にある旧村の集落が邪魔に感じられたりするけれども、今更移転して貰う程の観光投資が成立するとも思えない。近鉄奈良線の開通は平城宮跡の史跡指定よりも古いのであるから、近鉄奈良線の方に慣行権がある。旧村の集落も同じことである。ただ、平城宮跡の南辺にあった積水化学の工場は移転売却が成立したのですっきりしたのは確かである。一つが片ずくと次の部分が目に付くようになるが切りが無いとも云える。------
一つ言えるのは、平城宮跡の埋蔵文化財の発掘調査が完了し木簡の解読・保存の心配が無くなれば、改めて平城宮跡の地表走行区間を地下化すれは良いのではないだろうか。それがリニア新幹線が開通する頃なのかもっと後になるのかは分からないけれども。また、木簡の文字の解読がAIを使って出来るようになれば木簡を埋(うも)れたままにしておく必要は無くなるのだから。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その154)

2017-01-25 08:56:11 | 奈良・不比等
「地方創生シンポジウム・住宅都市における持続可能なコミュニティ」が奈良県生駒市で開催(平成29年2月1日午後1時半~4時・生駒市コミュニティセンター)される。国の「一般財団法人・地域活性化センター」の調査研究支援事業の対象となった生駒市と神奈川県藤沢市の事例報告が聴ける良いチャンスの様です。-----
藤沢市(人口42万7千人)も生駒市(人口12万人)と同じで神奈川県という隣県に位置しながら東京大都市圏のベッドタウン(住宅都市)として誕生した住宅都市の様です。奈良市の人口(36万人)と生駒市の人口(12万人)を加えて奈良市の観光都市依存人口を差し引けば藤沢市と同じベッドタウン人口となる。------
シンポジウムの表題に「住宅都市における持続可能なコミュニティ」と銘打ってはいるが、元々ベッドタウンである住宅都市にコミュニティが成立していたのか怪しいところです。東京都の千代田区が夜間人口は極端に少ないが昼間人口はとても多いと云われていたがベッドタウンと云うのはその逆で、人間夜は寝ている訳であり活動しないので夜間人口が多くてもコミュニティは夜には成立しない。従って住宅都市のコミュニティは昼間人口である核家族の女性と子供だけであり男性の影の薄い不完全なコミュニティしかなかったと云わざるを得ない。何を持って持続と云っているのか不思議ですが、外国も含めてどこかの先進事例を紹介されるかも知れないので、若干は楽しみである。------
「少子高齢化による空家の増加現象を逆手にとってリタイア男性が中心となって地域コミュニティを形成できるかどうか。固定資産税を免除するなどして空家を市町村が借り上げてリタイア男性の実費支給ボランティアにより地域カフェを至る所に作れば、これまで住んでいても夜間寝るだけで昼間を知らなかった男性たちが知り合う切っ掛けが生まれるには違いない。気が合ったり合わなかったりするだろうから複数の地域カフェを数多く作れば良いのだろう。ただ寒暖を凌ぐ設備利用費は1日100円程度実費徴収するなどして運営すれば、公民館のような規則の多い使い難(にく)いものではない形で色々な地域カフェを作り梯子出来れば尚面白いでしょう。また街角ハイキングの拠点としても使えるだろう。静かに住んでいる人々の住環境が破壊されると苦情が出るようでは困るが、今は静か過ぎるのではないだろうか。」
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その153)

2017-01-24 07:54:57 | 奈良・不比等
インバウンド・ツーリズム(inbound tourism)で賑わう城崎温泉の地元・豊岡市では温泉と地場産業のカバン製造(奈良時代からの柳行李・やなぎこうりがルーツ)の二つを目玉に掲げて地方創生の施策としている。豊岡市の人口は8万1千人で、平成17年に「豊岡市・城崎町・竹野町・日高町・出石町・但東町」が合併して出来た。-------
奈良県では宇陀市が人口・3万1千人であり、平成18年に「大宇陀町・菟田野町・榛原町・室生村」が合併して出来た。------
このような合併により、行政のサービス機能の低下を免(まぬが)れない地方末端をカバーすべく病院施設などの拠点を集約し市町村の財政を健全化させることを目指している。また、出来れば企業誘致をしたり地場産業を活性化させて地方創生を果たし人口減少を食い止めようとの狙いを持っている。------
奈良県の場合、全国的な地方創生の対象となるのは県南部・県東南部(宇陀市など)であり、県北部や県中部は近畿の京阪神・都市圏の一部を構成しており、奈良県だけで解決するには荷が重いだろう。地方創生の対象市町村は人口が多くても10万人以下であり、施策も考え易かろう。しかしながら奈良県北部に位置し京阪神のベッドタウンとなってきた奈良市(人口36万人)・生駒市(人口12万人)などは少子高齢化の最たる地域となっており、放置する訳にも行かないけれど、近未来の市町村財政の破綻(はたん)を防ぐための有効な解決策は今の処見当らない。-----
地盤沈下して久しい関西の中心である大阪府(人口883万人)から生駒山を貫いて奈良県まで開通したことで近鉄奈良線沿線がベッドタウンとなることは明らかだったでしょう。奈良県北部の丘陵地は降水量も少なく大きな河川も無く耕作に適さない土地が広がっていた。飲料水を工面できれば住宅地としては開発に適していたのだろう。住宅地にしても100年の計とは行かないだろうが、ほとほと日本の街づくりの拙(つたな)さを思い知らされる気がする。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その152)

2017-01-23 09:53:45 | 奈良・不比等
「奈良県生駒郡・安堵町(あんどちょう)」の「富本憲吉(とみもとけんきち)・生家」が古民家ホテルとして今春オープン(平成29年)するとのこと。安堵町は江戸時代、換金作物の灯芯(とうしみ)となる藺草(いぐさ)の栽培により奈良盆地のど真中で山沿いの隠し田も無い村ながら裕福であった。その安堵町の豪農に生まれた富本憲吉は家業を継がず陶芸家という芸術の道に進んだ。作風は日本離れしたかのように豪華で「侘び寂び(わびさび)」などどこ吹く風の、金銀を使った派手なものである。陶芸と云っても楽焼(らくやき)などには目も呉れず、白磁・青磁の最高級品だけを目指した。------
生家を買い取った「公益社団法人(ソーシャル・サイエンス・ラボ)」がリニューアルし、運営は「ワールド・ヘリテイジ」が「うぶすなの郷(さと)・TOMIMOTO」と名付け「高級志向の滞在型交流施設」として行う。部屋数は二部屋、料金は一人一泊五万円からと成っている。残念ながら「富本憲吉・記念館」時代の展示作品は四散しているとのこと。------
国内観光客に向けての観光立県を考える時、団体旅行が減り、個人旅行が増えて、日本国内の経済格差も目に付く状況の中で、格安路線だけでは観光収益も伸びないので、富裕層に散財して貰うにも少しは観光投資が必要なのであろう。確かにこのような富裕層に向けての観光投資は地方公共団体が直接行うのは難しいようであり、公益社団法人を利用するのもこれからは多くなるのだろう。-----
安堵町からは世界遺産・法隆寺も近く、観光タクシーやハイヤーを使えば、信貴山(しぎさん)・生駒山(いこまやま)も一回りできる。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その151)

2017-01-22 08:56:59 | 奈良・不比等
世界遺産・姫路城を有する姫路市の人口は53万人、片や世界遺産・古都奈良を持つ奈良市は人口・36万人である。両市とも世界遺産指定を好機として観光振興に力を入れている。どちらも中核市に指定されており、奈良市は県庁所在都市である。残念ながら姫路市は明治政府の方針により徳川幕府側の藩の処へは県庁を置かなかった。奈良県においても大和郡山藩が一番大きな藩であったが、これも幕府側の烙印を押されたのか県庁所在都市にはなれなかった。姫路市では明治以来、発展のために軍都を目指したり、戦後は瀬戸内を埋め立てて新日鉄などの企業を誘致し、一応の成功を収めている。一方、奈良市の場合は、全国有数の観光寺院・神社が存在し県庁も置かれたこと、更には奈良市の位置する県北部が京阪神のベッドタウン化し、生駒市(人口・12万人)を加えると48万人と成り、日本経済の成長期には勤め人(サラリーマン)でも結構な住民税を支払い地元は潤っていたようだ。然(しか)しながら、奈良市でも2000年代に入るころから税収が減少し、老人パスなど手厚い施策は金策が付かなくなり廃止に追い込まれた。一方、大和郡山市や天理市などは企業誘致(シャープやパナソニックをトップとして)を進めて、それなりに税収の確保を図った。ところが、奈良市では状況の変化に対応出来ず、ジリ貧の観光収入に頼るばかりであった。-----
新幹線が京都に開通してより、古都奈良の観光は修学旅行だけで京都には置いてきぼりにされてしまった。------
日本経済の没落はメリットもあり、裕福になった東南アジアから外国人観光客が近年多く訪れるようになって、一見賑わっているように見える今日この頃であるが、これも日帰り客が中心のため観光消費額は少ない。奈良市の観光産業に従事する人々(全人口36万人のうち5万人程度に過ぎない)くらいは安心して暮らせるような施策を打ち出すべく奈良県も奈良市も頭を痛めているのでしょうか。------
ここでもう一度姫路市と較べると、奈良市の将来は介護を待つばかりの老人の暮らす新興住宅地が全人口の9割方を占めている現実に対処せねばならないが、果たして策はあるのだろうか。

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