炉端での話題

折々に反応し揺れる思いを語りたい

エキスコン(5) SISDの話題

2010-02-07 13:59:05 | Weblog
将来の展望をSIMDとかMIMDのスパコンからSISDのスパコンに向けてみよう。SISD はSingle Instruction Single Dataのことであるから普通のコンピュータである。普通のコンピュータを高速化すればいいというかも知れないが、視点はいささか違う。
「3.14159・・・」で知られる円周率π、スパコンを用いて主計算に400時間かけ、小数点以下約1兆桁まで計算したことを東京大学情報基盤センター(旧東京大学大型計算機センター)の金田康正教授を中心として2002年12月に報告している。現在のπ計算の世界記録となっているという。
ここで提案するSISDは、これ以上の桁でのπの値を計算するSISDスパコンである。普通のコンピュータは64ビットの加減乗除演算しかできない。10進数にすると20桁に満たない。1兆桁の計算をするとすれば、10進数1兆桁の演算器が必要である。普通のコンピュータを用いて、1兆桁の計算をするためにはこの桁数を分割して行わなければならない。おおざっぱにいうと1兆桁の計算をするためには約30億個に桁分割をして、分割ごとに計算することになる。πの計算に時間がかかる理由がそこにある。
仮に1兆桁の演算器を持つスパコンがあるとすれば、この桁分割は必要としないからπの値を求める計算は極めて短時間で実行できる。1兆桁の演算を行う演算器がハードウェアとして今後20年の内に実現できるかどうか。「それは多分無理でしょう」といわれるであろう。現実的には、10進数にして1万桁程度の演算器であろう。長大な演算器を持つSISDに夢として挑戦するのもロマンがある。
そもそもπの値の計算だけにそのようなスパコンを作成していいものだろうかといわれそうである。長大な演算器を必要とする数学的な課題は残されている。その一つには素数に関する課題がある。
2のn乗-1で素数となるものを特にメルセンヌ素数というが、現在のところ47個ほど見つかっているといわれている。素数であるかどうかの判定には、長大な演算器を持つSISDが威力を発揮するであろう。貴重な生データの暗号化に、素数は必要不可欠であるという。
他にも整数論にかかわる課題が多くあると聞いている。
数学での研究にはSISDのスパコンが役に立つといえそうである。
(納)