炉端での話題

折々に反応し揺れる思いを語りたい

遅まきながら、遂に読了しました

2009-06-30 18:46:00 | Weblog
 塩野七生氏の「ローマ人の物語」新調文庫本全31巻を読了した。2007年11月29日に購入して以来、約1年7ヶ月ぶりだ。
 まず、塩野氏の筆力に敬服する。よくもまあ延々と書き連ねたものだ。長いから、途中で放り出し、しばらくしてからまた読み出すのだが、文章が巧みだからすぐに入り込める。記述の随所から塩野さんの粘着質、こだわり性が見て取れるが、文献や現地訪問などの徹底的な調査には、まさに脱帽するほかない。
 古代ローマ人の考え方が随所で説明される。①人間を律するのは人間である(法治の精神)、②ローマ人の考える神とは人々を助ける存在である(人間を律するものではない)、③従って一神教の概念はない(人を助けるさまざまな神がいる)、④インフラ整備や人々が喜ぶ公共施設の建設はエリート(皇帝)の責任である、⑤皇帝といえども、人々から統治を委託された者である、等など、これらの考え方は現代の感覚からしても極めて合理的で、感心させられる。(しかし、別の著者チャールス・ヴァン・ドーレンによる「知の全体史」は、古代ローマ人の非合理性を痛烈に批判していて、人によってこうも見方が変わるものかと、分からなくなる。)
 そもそもこの本を読む気になったのは友人に紹介されたからだが、友人はカエサルの戦闘に関する記述が特に面白いと言う。だが、戦闘の話がこと細かく長々としていて辟易する。塩野さんはカエサルにのめり込みすぎている感じで、彼がいかに現実的、合理的であるかを力説する。しかし、事の経過から読者がそのように感じる前に、現実的、合理的という結論を先に述べてしまうので、読んでいて、力説されるほどには実感が湧かない。むしろ、私には、帝国が傾き始める辺りの記述のほうが簡潔に書かれていて分かりやすく、興味深かった。
 しかし、読了後、古代ローマが滅び、キリスト教文化が席巻する中世がどのように過ぎてゆくのか、塩野さんの続本を期待したくなる。(AO)

Outlook Expressのfilteringの奇怪ーその顛末

2009-06-24 12:24:46 | Weblog
 先に、Outlook Expressのfiltering に関する奇怪な出来事について書いた。畏友、納さんからアドバイスをいただいたり、相手のセンターに調べていただいたりしたが、なかなか1件落着といかず、現在も完全に事態は解明されていない。しかし、削除されることはなくなったので、その顛末をまとめてみる。
 Outlook Expressでのメール受信に関し、
①最初、A@office.univ.ac.jp (偽名にしてある)からのメールが削除される(削除フォルダに移される)事が生じた。Aさんは禁止送信者リストに載せていないし、そのほかのメールルールにも全く関係ない。McAfeeのSecurity software(これもインストールしている)にも無関係。最初は相手センターに不都合があるのではないかと疑ってしまった(Sorry)。
②そのうち、B@office.univ.ac.jp からのメールも削除される(削除フォルダに移される)事に気付く。Bさんも禁止送信者リストに載せていないし、そのほかのメールルールにも全く関係ない。McAfeeのSecurity softwareにも無関係。
③その後、驚いたが、 @office.univ.ac.jp からのメール だけでなくC@school.univ.ac.jp からのメールも削除される事がわかる。univ.ac.jp 以下の二つのサブドメインからのメールが削除されるのが奇怪だ。Cさんも、禁止送信者ではなく、その他のメールルールにも関係ない。McAfeeのSecurity softwareにも無関係。
④いろいろ調べているうちに、怪しげなメールアドレス xxx@school.univ.ac.jp(xxxが異常だ)が禁止送信者リストに載っている(どうして載っているのか記憶にない)のを発見し、これを削除したところ、@office.univ.ac.jp、@school.univ.ac.jp いずれからのメールも正常に受信できた。
⑤ためしにC@school.univ.ac.jpを改めて禁止送信者リストに載せてみると、Cさんのメールは削除され、Aさん、Bさんのメールは正常に受信できた。つまり、普通のアドレスを禁止送信者リストに載せると、Outlook Expressのfilteringは期待通りに作動することが分かった。

結論:怪しげなxxx@school.univ.ac.jp が悪さをしたのだが、school以外のサブドメインofficeにまで悪さを及ぼしている(つまり、上部のuniv.ac.jp 全体に影響しているのか?)点が奇怪だ。どのようなアドレスを禁止送信者リストに書き込めばこのようなことが起こるのかは、不注意にいきなりxxx@school.univ.ac.jpを削除してしまったので調べようがなくなった。xxx@school.univ.ac.jp にヴィールスがいたのか、Outlook Expressのfilteringに穴があるのだろうか。

 以上、お騒がせしましたが、ご協力いただいた方々に感謝します。(青)

COGNITIVE RADIO(5) ソフトウェア・ラジオとは

2009-06-18 14:08:45 | Weblog
コグニティブ・ラジオを調べているとソフトウェア・ラジオという単語に出合う。
ラジオにソフトウェアとは何のことかと思うのは私だけだろうか。

調べてみると原語はSoftware Defined Radioであるから、そのまま訳すとソフトウェア定義ラジオである。定義はあまりにも格式ばっているから、「整定」程度でいい。ソウトウェア整定ラジオといえる。しかし長たらしくなるのでここでは慣例に従ってソフトウェア・ラジオということにする。

考えてみると乗用車車載の高機能ラジオは、このソフトウェア・ラジオと考えられる。車載ラジオの中にはマイクロコンピュータ(CPU)が組み込まれており、ソフトウェアによってラジオ内部回路を制御する。ディスプレイ画面の上で、FMかAMの選択、さらに放送局の選定から音量調整、スピーカの左右のバランス、音質の調整などの指示入力を行う。このディスプレイ画面の入力センサからの信号を元に、組み込まれているソフトウェアにより、ラジオ内部の周波数選択回路、増幅器のゲイン、音響フィルタの特性変更などを行うのである。
このような高機能ラジオのことをソフトウェア・ラジオと言えばすでに実現されている。

コグニティブ・ラジオでは、ことさらソフトウェア・ラジオのことを取り上げるのはどうしてなのだろうか。
前にも述べたが、最近の無線通信では様々な変調方式が用いられるようになっている。上記のようにAMとFMの他に、ディジタル通信に適したPSK(Phase Shift Keying位相シフトキーイング)に始まり最近ではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access 直交周波数分割多元接続)、スペクトル拡散変調などが用いられるようになりつつある。どの変調形式の電波を用いて無線通信を行うか、またそれが行える地域、あるいは時間空間にあるのか「認識する」ことが必要である。コグニティブ・ラジオはラジオ放送を一方的に受信するだけではない。交互に無線通信することもある。周波数帯の認識、様々な変調方式の中から選択して整定することをソフトウェアによって行う。
調べてみると、最新のアナログ・ディジタル変換速度は500Mサンプル/秒の高速のものがある。原理的には250MhzまでのVHF帯の受信電波は直接ディジタルに変換できる。ディジタル・フィルタ・プロセッサにより、これまでのアナログ・フィルタに代わって、理想的な特性を持たせた処理ができる。これもVHF帯の周波数範囲にいたるまでディジタル・フィルタ専用のプロセッサで処理できる。ここでフィルタ特性の整定もソフトウェアで行うことができる。
ソフトウェア・ラジオは、多数個のコンピュータとそれに関わるソフトウェアによって整定されて運用される。アナログ素子は、アンテナ入出力とスピーカとかマイクなど音響装置の増幅器だけである。
ソフトウェア・ラジオは大多数を占めるディジタル素子、それにソフトウェアで構成される。このことは現在のケイタイ電話でも言えることではあるが。

ケイタイ電話にはない機能として、ソフトウェア・ラジオには、知的アンテナの整定がある。この知的アンテナもコグニティブ・ラジオに関わる重要な機能であるが、これについては別に述べたい。
(納)


COGNITIVE RADIO(4) テレビ放送帯の街道

2009-06-16 13:50:53 | Weblog
悩さんによる「米国にみるデイジタル化テレビの課題」は、コグニティブ・ラジオの展開に新たな話題をもたらしてくれた。

調べているとコグニティブ・ラジオでは、テレビ放送の様々な空白を利用しようとしている。この空白の一つは、地域に存在する空きチャネル周波数帯である。テレビ放送においては、あるチャネル周波数帯(複数)が、ある地域に割り当てられる。放送アンテナを中心として円形状に放送受信範囲が拡がる。但しこの受信範囲は地形とか構造物によって必ずしも円形状にはならない。これに隣接する別の地域では、混信を防ぐために同一のチャネル周波数帯を割り当てることはない。チャネル周波数帯は排他的に割り振る。従ってどの地域をとってもチャネル周波数帯の空白が必ず存在する。
この周波数帯の空白を「コグニティブ」、すなわち「認識して」迷惑がかからない範囲で、無免許で運用できる弱い電磁波を用いて無線通信を行うことがコグニティブ・ラジオの将来構想にある。
 安価な小電力の小型コグニティブ・ラジオを街道に沿って、周辺地域のテレビ放送受信レベルが充分な強度となるように多数個配置する。この構想が実現すれば、各家屋にケーブル接続を行う必要がないから、悩さんが懸念している災害時のテレビ情報の疎外化は心配ない。ここで各コグニティブ・ラジオは自律していることが前提としてある。すなわち電源供給は太陽電池と夜間動作に備えた充電式電池によるものとし、情報通信のための接続は行わない。情報接続はすべて無線とする。
街道の街路灯をイメージすればよい。ただし街路灯とは違ってコグニティブ・ラジオは昼夜を問わず動作し、しかも有線による電力供給を受けない。

2011年7月、アナログ・テレビ放送が、完全に停止されたときに -そうあってほしくないのだが- ディジタル・テレビ放送を従来のアナログ・テレビ放送に変換し、コグニティブ・ラジオの機能を使って、アナログ・テレビ放送しか受信できない家庭にサービスするのはいかがなものだろうか。技術的には実現可能である。もし法規上の課題があれば、それは解決する必要があることはいうまでもない。

2011年7月までまだ2年ある。アナログ・テレビ放送に頼る視聴者数が現在どの位残されているか調査し、捨て置けない情勢であれば、コグニティブ・ラジオの開発を行ってはいかがなものであろうか。それは単なるアナログ・テレビ放送受信のための開発投資ではない。災害対策が背景にある。
ここで述べた方式は、低開発国のテレビ放送として普及する可能性もある。コグニティブ・ラジオのことを調べながら、巨大なマーケットがあるとの確信が深まりつつある。
(納)


米国にみるディジタル化テレビの課題

2009-06-15 09:34:45 | Weblog
つい最近2009年6月12日に米国では、テレビのディジタル化が行われたという。本来は2月17日に行われる予定であったが、混乱をおそれオバマ大統領の要請により4ヶ月延期された結果である。これに伴い混乱があったことが報道されている。

CNNによるインターネット報道を引用する(誤訳は訂正)。
米国のテレビ放送は12日に地上波ディジタル放送に完全移行したが、全国の相談窓口には13日にも、ケーブルテレビや衛星放送に加入していない人々からの問い合わせ電話が殺到した。米連邦通信委員会(FCC)によると、移行日の12日に窓口が対応した電話は31万7450本で、30%はチューナーの操作に関する質問だった。問い合わせがあった問題の大半は解決済みという。
調査会社ニールセンによると、今年1月22日現在で地デジ化未対応の世帯は650万世帯(全体比5.7%)余りだった。コップFCC会長は12日までにほぼ半減したと語ったものの、300万世帯が依然未対応。電話による受信相談で問題が解決しなかった場合は、ボランティアが相談者の自宅に出向き、チュー ナーを設置している。
FCCは電話相談に4000人を動員しており、平均4.6分間隔で電話を受けている。スペイン語による相談窓口については、電話の間隔が平均1.8分と短め。平均通話時間は8.4分という。
引用はここまで。

3年ほど前に「地上波ディジタル放送」と題して、この炉端での話題に掲載したことがある。当時の経験からすれば、地上波ディジタルの場合は、アンテナとアナログ・テレビセットの間にコンバータを単に設置するだけでは済まない。このことは米国における混乱事情のインターネット記事からは明らかではないが。

電波がVHF 帯からUHF帯に変わるから、まずアンテナを交換しなければならない。またディジタル・テレビの場合は電波受信レベルもある一定以上なければならない。これまで屋内アンテナで受信できていた場合でも、一定以上の電波受信レベルになるようにアンテナとその場所を変更しなければならないであろう。
経験によると放送局アンテナと全く違う方向で電波受信レベルが高かった。これは地形とか構造物による反射波のためである。またアンテナを少しずらすだけで受信レベルが変わる。このことを電波のマルチパス(電波の反射、またそれによる干渉)といい、UFH帯では普通に見られる現象である。
電話相談では必ずしも解決しないから、しかるべき技術員がおもむき対処しなければならないであろう。このような混乱は、充分予測できた。米国にみるこのような混乱は2011年7月、日本での全面ディジタル・テレビ放送化でも生じるであろう。

青さんは、この炉端での話題のなかで「何故ディジタルテレビ放送なのか」とその必要性について疑問をなげかけている。その意見には全く同感である。まことに素晴らしい技術の粋を集積したアナログ・カラー・テレビ放送を放逐してしまう暴挙である。
この暴挙のツケは災害発生時に混乱として発生するであろう。

いま、ディジタル・テレビ化に伴い、ケーブル接続が普及している。すでに述べたように、ディジタル・テレビ受信にはアンテナの設置が厄介であることがその理由である。業者にとっても危険な思いをして屋根に上がり、しかも老朽化し、大風のたび毎に保守しなければならないような屋上アンテナの代わりにケーブルの設置を薦める。しかもこのケーブルの設置で、格安で高速インターネット接続も可能となる。
このようにすぐれたケーブルの設置、まことに優れものであることは認める。
しかしながら地震などの災害時、これが機能を維持し続けるという保証はない。ケーブルであれば地震災害で切断されてしまうことがある。

災害時に情報が届かない混乱は、ディジタル・テレビ時代としてアナログ・テレビを放逐したツケとなる、そのことを危惧している。
(悩)

電磁パルスとは

2009-06-14 10:35:57 | Weblog
前回のCOGNITIVE RADIO(3)の中で、納さんはスペクトル拡散に関連して電磁パルスすなわちEMP(Electro-Magnetic Pulse)ついて述べている。この電磁パルスについてはウィキペディアにも記述があるが、このウィキペディアに掲載されていない内容について、高々度核爆発に伴うEMPについて調べたことを述べておきたい。

核爆発によるEMPの発生は、アメリカが原爆の実験を行っていた第二次世界大戦頃からイタリアの物理学者フィミーによって予想されていた。しかしどれくらいの範囲でどのような影響を及ぼすのかという事ははっきりとしていなかった。ところが第二次世界大戦後1950年代においてソ連が1回、アメリカが5回行った大気圏核爆発実験によって各種の電子機器に妨害や破壊、エラーを引き起こすことが発見された。さらにその後の分析によって、これがEMPによる障害であることがわかった。その後の実験において実際にどのような現象が起きたかについて次に述べる。
①ソ連は61~62年の間に13回空中爆発実験を行いミサイルの奇襲防止とミサイルの敵防衛戦を突破、及び高高度で爆発した際、レーダと通信に及ぼす影響を実験した。主要実験目的は核爆発時のEMP反応を明確にするためのものであった。1961年10月30日、ソ連は、北極海ノバザゼムリアでTNT5800万トン相当の世界最大規模の核実験を行った。この時の核実験によるEMP現象は米国のアラスカとグリーンランドの警戒レーダと、4000Km範囲内の長距離通信システムを麻痺させ、24時間にわたる運用中止が余儀なくされた。
②アメリカは1962年7月9日、セント・ジョンストン島上空400Kmで「スターフィッシュ」と命名した核実験を行った。TNTで140万トン相当の大きさで、EMPは800Kmも離れたハワイのホノルルで、数百に及ぶ防犯ベルの動力線上のカットアウトリレー焼損、オアフ島の照明用変圧器も同時に焼損して30本の街灯を全部停電させた。また、29回の高々度爆発はこれまで低軌道人工衛星の大陽電池と電子装置に被害を与え予定より早く機能を停止させた。
このように、1960年代に入って各種の民間及び軍用の電気/電子システムに対して核爆発EMPが重要な被害を与える可能性のあることが確認された。しかし、1964年より大気圏核実験は停止されたのでEMPに関するデータは限られており、以降は地下核実験や核を使わないシミュレーション、論理的計算等によってデータを集め、防護対策等の研究が行われている。

あってはならないことであるが、ある国は核兵器開発と運搬手段のミサイル開発を再開した。地下核実験の代わりに、運搬手段の確認と核兵器の空中爆発、さらにはその誇示のために高々度核爆発実験、太平洋上空の領海外といえども行ったとしたら、納さんの言うように人災はなくとも、EMP対策を施していない電子機器は故障し、その被害が大きく、しかも広範囲に及ぶとすれば、日本の文明社会が瓦解する可能性は否定できない。
(応)

COGNITIVE RADIO(3) スペクトル拡散通信方式とは

2009-06-06 16:21:11 | Weblog
前回のCOGNITIVE RADIO(2)のあと、応さんから「コグニティブ無線は普及しつつあるのではないか」というコメントをいただいた。ニンテンドーのWii Fit にはBluetooth(IEEE802.15規格)が利用されていることなどについて新たな知見があった。有り難い内容のコメントである。
しかしながら現在普及しつつある無線接続方式は、コグニティブ・ラジオの心髄にまで至っていないと考えられる。その理由を挙げる。半導体のハードウェアのさらなる進歩、新たなソフトウェア開発が伴い、さらには電磁波の変調法式についても進展の余地がある。また電磁波は空間の広域に渉って伝搬するから、セキュリティの課題もある。通信容量の拡大に伴いお互いに及ぼす干渉とか悪意のある妨害にも対処しなければならない。
ここでは、その一端としてスペクトル拡散変調方式(スプレッド・スペクトル、Spread Spectrumのことで、簡単のためにSS通信方式などともいう)を話題として取り上げよう。スペクトル拡散通信方式は、すでに無線LANの変調方式として取り入れられており、周波数ホッピングとか直接スペクトル拡散方式などが利用されつつある。これらの方式の詳細に渉る内容は、すぐれた成書もあるので、これら解説にゆずることにする。

無線通信の歴史をたどるとマルコーニが始めて無線通信の実験に成功したのは1895年(明治28年)であり、その2年後には日本でも松代松之助が無線通信の実験に成功したという。この最初の無線通信は、まさにスペクトル拡散通信方式である。
もとよりマルコーニも松代もスペクトル拡散通信方式と認識していたわけではない。高い電圧を発生し、狭い電極の間隙で電気火花放電を発生させ、これによりスペクトルが拡がった電磁波をアンテナから放出させる。このときアンテナ自体に固有な周波数特性があるから、空間に放出される電磁波はアンテナの周波数特性で制限されたスペクトル拡散通信となる。これが歴史上の最初のスペクトル拡散無線通信である。

雷の放電現象により電磁波が発生することはよく知られている。雷が発生するとラジオとかアナログ・テレビにはスペクトル拡散した電磁波妨害がある。ディジタル・テレビではどうなるだろうか。正直のところいま私は知らない。次に雷の発生時期に調べることにするが、多分モザイク模様がでて一時的に画面が停止するのではないかと想像している。雷の場合は、電圧は高いが微弱な電流がまず誘導雷として電流が流れ、それによって空気を電離化してプラズマというイオン状態となり電気が流れやすくなる。それを伝わって次に大電流が流れる。雷はピカ・ピカッと数度にわたってひかる。昔から雷はピカ・ピカッとひかるといわれる由縁である。
かって高々度核爆発実験を米国が実施したとき、核爆発に伴うコンプトン効果により強度なスペクトル拡散電磁波が発生し、ハワイ諸島で電気機器に障害をもたらし、停電に陥ったことが知られている。どこかの国が、自国からは遠くても、日本から近い太平洋上で高々度核実験するとすれば、日本国内の電子機器は重大な損傷を起こすことがあり得る。明らかに文明社会は、原始社会になる。ハワイの事例では人命にまで影響はなかったとの記録があるから生命にはかかわらないであろう。核爆発の場合は、ピカ(ッはない、ッがないほどの短時間)と一回だけであることは、広島・長崎での歴史的事実が証明している。ピカ・ドンであった。
これらの話題はスペクトル拡散電磁波としては余談であるが、何となくきな臭いニオイがただよっていることもあり、あえて記しておく。

無線通信は、真空管の発明とその普及に伴い電磁波の周波数帯域に制限をかけ広く普及する。日本でもラジオ放送が中波といわれる制限された周波数範囲で1925年(大正14年)に開始される。マルコーニが無線実験に成功してから30年ほどしか経過していない。
これより現在に至るまで、電磁波の周波数帯域は人類の貴重な資源として厳しく管理されている。この資源管理には万国の規約をもとに、日本でも電波法があり、かっては電波監理局といっていたが現在は総合通信局という官庁が電磁波の周波数利用を厳しく監視している。
スペクトル拡散通信方式は電波法の立場からすると、とんでもない通信方式である。重要な電磁波環境に障害を及ぼすことがあってはならない。また電磁波資源は公共のものである。屋内などごく限られた範囲で個人的に、しかも低い電力で利用する場合は、電波利用許可とか免許は必要としない。また免許を必要としない市販の無線機器は何らかの認可をうけて、そのことが機器に表示されている。応さんのコメントにあった家庭内の無線接続機器は、ケータイ電話からのインターネット接続を除き、この範囲にある。
コグニティブ・ラジオの規格化の動きは、より広範囲の空間で、しかもすでに利用されているテレビ放送の周波数帯にまで踏み込む態勢にある。さらに言えば、これまでの無線接続方式を取り込む方向もうかがえる。なんとなれば電磁波環境をコグニティブ、つまり「認識して」それに適応したラジオ、つまり「無線通信」を行うのがコグニティブ・ラジオの目的であることが公表されている資料から推察されるからである。
しかもスペクトル拡散の範囲も広いことが予想される。これは技術の進歩によってさらに高速の電子的な切換、スィッチングが可能になるからである。パルスという呼び方がある。本来パルスという英語に由来する単語は心臓の鼓動のことである。前述の雷は、いくつかの放電が列となっているからパルス列という。核爆発の場合は一発である。これをインパルスといってパルス列と区別している。しかしながらパルスの時間間隔が一定ではない場合のことをインパルス列と言うこともある。
ヒトの体は電気的なバルス列で動くといっても過言ではない。心臓は、起動電気パルスが心臓全体に行き渡ることで心筋が収縮する。心臓に限らずすべて体の筋肉は神経細胞を伝わってくる電気的なパルス列で動く。脳内の大脳、小脳などの中も電気的なパルス列が伝搬している。脳波は脳内の電気的なパルス列によって生じるものでヒトは生きている限り、たとえ熟睡していても存在している。脳波が検出されなければ脳死と診断される。どうして体内の電気信号はパルス列なのだろうか。疑問に思っているが、今のところ解答があるわけではない。神経細胞の周波数特性が偏っているとすれば、正確に情報を伝搬するためにはスペクトル拡散したほうがいいからパルス列になっていると想像している。
その想像を敷延すると、コグニティブ・ラジオの変調は高速のパルス列をアンテナに送り、そのアンテナの持っている周波数特性によって定まる周波数帯域で送信する方法が将来出現するかもしれない。そういえばコグニティブ・ラジオの記事の中に知的アンテナ(Intelligent Antenna)という用語も表れている。
様々な側面からコグニティブ・ラジオについて探らなければ全体像がはっきりしてこない。多くの可能性を秘めていることは確かである。
長くなってしまった。このあたりで一息つくことにする。
(納)

コグニティブ無線-すでに普及しつつあるのでは

2009-06-04 14:41:50 | Weblog
前記のCOGNITIVE RADIO(1), (2)で、納さんはコグニティブ無線のことを述べています。コグニティブ無線は静かながらすでに普及しつつあると思われます。次に述べるような無線接続、納さんによる話題提供とどのように関わるのでしょうか。

先般、ラッシュ・アワーの時間帯を過ぎた東京都内の電車の中での光景です。前には若者から中年までの男女が座っていました。なんと座っているほとんどの人がケータイ電話を開いています。静かに画面を眺めている人、忙しく指を動かしている人などと様々です。メールのやりとりとか、株の値動きを見るとか、ゲームをするとか、小説に読みふけっているとか、あるいはモバイル・テレビに見入っている等々でしょう。忙しく指を動かしている若い女性の指先、魅惑的な動きに見とれていたら、眠り込んでしまい、降りなければならない駅を通り過ごしました。魅惑的なしなやかな指先は、催眠術が仕掛けられていたのではないかと思いました。
スミマセン、話題がそれました。

数年前に数十人の外国各国から参加した会合があったときのことです。場所は芦ノ湖湖畔にあるホテルの会議室でした。ほとんどすべての参加者がケータイ・パソコンを持ち込み、会議の席上は、あたかもケータイ・パソコンの展示会のようでした。電源接続は、納さんのいうマングローブの根の様になりましたが、通信回線の接続はありませんでした。部屋の中には無線LANの端末がおかれていて、持ち込んだケータイ・パソコンから、この無線LANに接続されているのです。コグニティブ無線と思われます。

いま、無線によるデータ通信が急速に普及しています。
Bluetoothがその一つです。規格はIEEE802.15によるもので、使用する周波数はマイクロ波領域の2.4GHz、最大3Mビット秒、通信範囲は10-100メートルの能力があり、現在多くの業者がこれに参入しています。上記の会合に利用されたのも、このBluetoothであったと思われます。納さんの話題にでたニンテンドーのWii FitにもBluetoothの証明ラベルが貼られています。このBluetooth規格には英文字のBに角が出たような記号、あるいは認証ラベルが付いているのですぐにわかります。しかしこの識別記号があるからといって、すべて互換性ある接続ができるわけではありません。プロファイルとよぶ、目的に応じた側面から規格がありますから、プロファイルが一致しなければ接続できません。納さんの指摘するように情報伝送ケーブルが要らないので、マングローブ配線はなくなることから、家庭内の電子機器接続には、これから広く普及することは間違いなさそうです。
プロファイルを「認識して」無線接続しますから、コグニティブ無線といえます。

また最近ではインターネット接続として、電話回線とか光ケーブルなどによる有線接続の代わりにケータイ電話の無線接続が使われるようになっています。新しく参入したケータイ電話会社では、電話接続ばかりではなく、インターネット接続サービスを提供しており、急速に業績を上げつつあります。1.7GHz帯の電磁波を利用しており、最も高速なデータ転送速度は下り7.2Mビット秒、上り5.8Mビット秒の無線モデムが実現されています。

普及しつつある無線LANの現状を見てみますとすでにコグニティブ無線は展開しつつあるように思われます。納さんの話題提供から、今後どのような新しい発展があるのでしょうか。
(応)

COGNITIVE RADIO(2) コグニティブ無線接続はどうなる?

2009-06-01 10:58:49 | Weblog
ニンテンドーとコグニティブ無線とはどう結びつくのかよくわからないと前回のCOGNITIVE RADIO(1)では述べた。
そもそもコグニティブの意味も定かではない。その謎に迫ってみたい。
もとより様々な限界があるから、その正確さは保証しないことをあらかじめお断りする。さらに言えば企業機密とか特許に抵触するかもしれないので、あくまで想像の域である。

ニンテンドーのヒット商品Wii-Fitは、どうやらWi-Fiを意識しているようである。
これについては別に述べる機会があろう。
このヒット商品には、必ず「バランスWiiボード」が必要である。バランス・ボードを使って体重を測定するばかりではなく、その上に乗った人の動きなど、体重の移動をある時間単位で検知(推察すると)している。このバランス・ボードには何も接続しないから、無線通信をWii本体と行っている筈である。この無線通信は、現在の電波法規に抵触しないような微弱電力である。本体からもバランス・ボードに送信している筈である。なぜならば、バランス・ボードには電源スィッチらしいものがあるが、電源を入れるためのスィッチではなさそうである。本体との交信を促すためのもので、使用しないときには寝込んでいる(スリープ・モード)と想像する。本体も「起きて」いなければ活動しない。ここにコグニティブの一環が見出される。コグニティブとは環境「認識の」ことである。
個人的に携帯電話を持っているが、この携帯電話番号はあまり知らせていない。理由はほとんど場合電源を入れていないから不携帯と同じであるからである。電源をいれっぱなしにすると、いつの間にか電池の電圧が低下して、これまた不通話状態になる。携帯電話は必要な時に目を覚まし、必要でないときには眠り込み、電源のことは気にしないで済むようになったら電話番号を通知しようと考えている。
端末から電磁波が出ているかどうかを「認識」して、それに対応する。必要なときに、活動させる。コグニティブのすべてではないが、その一つの機能である。

さらにコグニティブのことに言及しよう。
かってのオーディオ本体機器は、多数の接続栓がある。オーディオの本体に入力としてCD、FMラジオ、カセットテープ、テレビなどを接続する。さらには出力としては、録音側の配線とか、スピーカを接続するからオーディオ本体機器からは、マングローブの根のように配線が這い出る。この装置の周辺はそのマングローブ配線のために掃除がゆきとどかず、ホコリのたまり場になる。コグニティブが発展するとこのマングローブ配線はなくなると期待できそうである。新しい電子機器には接続栓がない。あるのは電源線だけである。あるいはこの電源線もなくなる可能性もある。そうなれば単なるキュービック、箱である。ニンテンドーの「バランスWiiボード」は箱ではないから、必ずしも箱とは限らない。

さてこの想像は更にふくらむ。
自動車のボンネットを開けると至る所配線の束が這いずり廻っている。かっては接続栓が空中ブランコのように存在したが、さすがにこれは消えた。空中ブランコの接続栓は信頼性に欠けるからである。いま自動車の配線は、ボンネットのウラ、制御用コンピュータに集中する。これらの配線は、コグニティブ・ラジオの技術開発のもとにスッキリすることになろう。将来の自動車は、ボンネットを開けると情報交換のための電気配線は一切ないということになると想像できる。あるのは動力のための配線だけである。

そういえば新しい旅客機エァバスA380は1機あたり延べ約500kmにおよぶ配線の接続や収納に予想以上の時間を要したために開発が遅れたという。旅客機でもコグニティブ・ラジオの技術開発により情報交換のための配線は格段に少なくなることが考えられる。機体は軽くなる。その分、燃料も少なくできるから運航費用は軽減される。旅客機の場合は、安全のために複数の情報交換を装備することが必要であろうからバックアップのための情報交換の配線は残しておかなければならない。すべて情報配線がなくなるとまで極言することはできない。

さてこのようなオトギ話のようなコグニティブ・ラジオの展開がどうして想像できるのか。その根底には、記憶素子の大容量化、ディジタル素子の超小型化と高速化にある。しかしその技術的な細部にまで、踏み込まない。あくまでコグニティブに話題を集中しておきたいからである。
ここまで述べてくると電磁波のことを取り上げなければならない。
話が長くなるので、次の炉端での話題に残そう。
(納)