炉端での話題

折々に反応し揺れる思いを語りたい

スパコン、すでに遅れている -長老の談-

2009-11-22 11:00:19 | Weblog
「やあ、きたか。待っていたよ。今日は手ぶらだって。いいよ、いいよ」
「オーイ、ばあさん。おいしいお茶があったろう。それを入れてくれ」
「そう、“ネコの脳のシミュレータ”と“なぜスーパー・コンピュータが必要か”は読んだ。しかしなあ、スパコンの性能は米国が群を抜いて優れたものをすでに販売しているし、中国でさえ日本のスパコンより優れたものができているというから、手遅れだよ」
「貧乏国になりつつある日本でスパコンをいまから開発するとすれば、かなり無理をしなければならないだろう。トップどころか2番目、3番目さえおぼつかない」
「オヤ、しょげてきたね。オーイ、ばあさん、熱燗をつけて。景気をつけないといけない」
「何故って。そもそもコンピュータの基本素子の性能と製造能力がすでに遅れをとっており、民間では新規開発の体力もない。“民間活力を利用しよう”といった首相がいたが、民間活力は海外に製造拠点が移ってしまったから失せてしまった。半導体工業界はバブルの後に空白の10年があったそうだ。業界がスパコンの開発から撤退していることはよくわかる。いわば死に体だな」
「スパコンの開発は先送りして、基本素子の開発から国策としてテコ入れしなければ、起死回生はできそうもない」
「なに、これまでは業界がスパコンの開発・製造に参加したのはどうしてかって。それはなあ。活力がある業界がスパコンの開発にかかわって大きな負担を背負った。その負担があっても新たな知見と知識が得られ、それを基に自社で製造・販売して、背負った費用を回収できたからさ」
「そう。これまでの国策プロジェクトは、必ずしも成功ではなかったかも知れない。しかし、波及効果はあったのさ。これからは、プロジェクトが成功しなければ、これを行わないようになると日本は三流の貧乏技術国に転落する、そのことだけはこの老人にわかる」
「おっ、熱燗を飲まないのかい。なに、すぐに帰って金のかからない基礎から勉強するって。それもいいが、まだ残った話がある。つきあえ」
「えっ。ワインがいいのか。オーイ、ばあさん。ヌーボーがとどいていなかったかな。
なになに、ヌーボーもガラス瓶からプラスチック瓶に変わったので、今年は届けないといってきたのか」
(納)


なぜスーパー・コンビュータが必要か

2009-11-21 11:00:02 | Weblog
なぜスーパー・コンビュータ(以下スパコン)がいるのか? 答えは容易である。
スパコンがヒトの脳の機能に、未だに到達していないからである。確かに記憶機能はヒトの脳に近くなり、計算速度にいたっては遙かにヒトの能力を超しているが、コンピュータの持つ能力はヒトの脳に及ばない側面がある。前回の「ネコの脳のシミュレータ」で引用した記事の中に、「混雑時の自動車運転を行うヒトの脳をシミュレーションするとすれば、3000キロワットの電力を要する227トンの重量のスパコンが必要である」と書かれている。この規模のスパコンで、ラッシュアワー時の自動車運転が実時間処理できるかどうかについては、私は、いささか疑問に想う。
 いま一つ、30年前のスパコンとほぼ同じような能力を持つパソコン、記憶能力は遙かに大きくなって、いま庶民の手元にあるではないか。

 コンピュータの技術開発は未だに停止していない。
発展途上にあるといっていい。
ある世代のスパコンは、すぐにでも次世代のスパコンにとってかわる。いま毎日の天気予報に、スパコンが使われていると聞いているが、以前に比べると天気予報の的中率が向上している様に思うのは私だけではないであろう。天気予報専用の現在のスパコンも、やがて新しいスパコンに置き換わるであろう。

 それでは何台のスパコンが必要であろうか。
近い将来、図書館と同じくらいの数ほどのスパコンが必要になる、と私は考えている。個々のスパコンはそれぞれ特色があり、必ずしも同じとは限らない。あるスパコンは流体力学の課題を解くのに優れ、またあるスパコンはニューロンの動作を巧みにシミュレーションできるであろう。
 さらに時代が進むと大学の各学部ごと、さらには大学の各研究室ごとに、いまのパソコン同様にスパコンが普及するといえる。
 いまスパコンの開発にブレーキをかけていいのだろうか。
(脳)

ネコの脳のシミュレータ

2009-11-20 15:54:02 | Weblog
日本の新政権のもとに、事業仕分けがおこなわれており、スーパー・コンピュータの開発を事実上凍結することになったという。僅か1時間の討議で決定されたそうである。凍結を決定した諸氏はスーパー・コンピュータのことを熟知しているのだろうか。
およそ科学技術開発に無駄はない。もしそれが失敗したとしても、無駄ではない。失敗した理由を明らかにすることで科学は進歩する。仕分け人は、日本の科学技術の進歩を停止させたといってもよい。
その同じ日にアメリカではスーパー・コンピュータの上で動作する脳のシミュレータを学会発表している。10億個のニューロンと10兆個のシナップスを扱うことのできる脳のシミュレーションであるという。米国政府の出資するプロジェクトである。この規模の脳のシミュレーションでもネコの脳程度の能力らしい。生きているネコと同等にネコの脳のシミュレータが動作するとは、とうてい思われないが、そこに科学の進歩があることだけは理解できる。
スーパー・コンピュータの上でネコの脳のシミュレーションをするなどとは、とんでもない無駄として、仕分け人はたちどころに切り捨てるであろう。
日本の科学技術の進歩は、ここにいたって確実に停止する。
(脳)