炉端での話題

折々に反応し揺れる思いを語りたい

ホビーを語る

2012-01-24 11:28:39 | Weblog
 後悔をしたことがない人はだれもいないであろう。特に、人間関係が壊れたしくじりには身を刻まれるような苦渋が残る。しかし、後悔は、次に改める機会があるから意味があるのであって、将来がないシニアにとって、後悔は自己否定につながりやすく、生きる活力をしぼませかねない。この意味で、後悔はむしろ有害ですらある。
そこで、過去を振り返るのは止めて、これから先の新しい活力を生み出す楽しみを見つけなければならない。しかし、シニアがよく陥る、どこが具合悪いとか、若い世代に対する苦言や、他人の噂ばなしなどのお喋りを楽しもうとしても、人はあまり好まない。むしろ、自分なりに没頭できるホビーに見つけることになる。実際、周りを見回すといろいろなホビーを楽しんでいる人が多い。
 家のそばに大きな椹の木が3本生えているので「3本椹の」とニックネームをつけたSさん(家の回りにSさんは3人もいる)は草花の権威だ。庭に一面にいろいろな草花を植えて、楽しんいる。奥さんにそう呼ばれたという「石器人」のSさんはグルメだ。ただ食べるだけではなく、おいしいものを食べるとこれはどう料理したのか知りたくなり、自分でも試してみるのだそうだ。そうでなければ面白くないでしょうと、当たり前の顔で言う。
 縁戚に当たるGさんは釣りだ。釣りを楽しむために住居をわざわざ湘南の海岸に移したほどである。Hさんは木工に熱中している。ガレージの上を立派な工作室にしている。私の友人の中には、建築に凝っていたり(もう専門家の域に達している)、宗教に興味を抱いたりする人もいる。そのほか、ゴルフを楽しむもの、絵を描くのを楽しみにしているもの、いろいろだ。
 これら熱中人に共通するのは、その人のホビーに話を向けようものなら、話が止まらなくなる点だ。「3本椹の」Sさんは人を捕まえては、草花のところに案内し、これはどこそこに群生していたとか、外来種だとか、詳しく説明する。「石器人」のSさんは、お腹の中を取り除いた鯖を梅干と共に醤油に一晩漬けておき、それを焼くと油が落ちていて実にうまい、と薀蓄を傾ける。Gさんは、少しアルコールが入ると、釣りの成果の同じ話を何回もするので「もうその話はいいの」と娘さんにたしなめられる。Hさんは自分の作品を見せ、その製作過程や使う工具を熱心に説明してくれる。挙句の果てには、どうぞ工作室に来て一緒に何か作りませんか、と誘う。
 ところで、お前のホビーは何かと問われれば(待ってました)、私はマイクロソフト製のフライトシミュレータを楽しんでいる。なんだコンピュータゲームかと言わないでください。実に精密、かつ、リアルにできているのだ。まったく自由に楽しめることを分かってもらうために、少々、喋らせてください。
 飛ばす飛行機を選ぶことができる。一番安定して操縦できるのはボーイング737-400だ。小型機を試してみたければセスナS128 Skylaneがよい。次に飛行。電波航法機器を使って勝手に飛ぶこともできるが、飛行系路を自由に設定することもできる。たとえば、松本空港からニュー千歳空港まで飛ぶのに、まず、北に向けて安曇野のポイント、新潟空港、秋田空港などに立ち寄り(着陸し)、十和田湖を横に見ながら陸奥湾、津軽海峡、函館上空を超え、太平洋上の真南から千歳空港の1L滑走路に降りる。更に地上を走り(タクシーすると言う)3番ゲートに機体を寄せる、といった具合だ。ジョイスティックを使って上下左右、自由に機体を操れるが、自動操縦機能を使って、高度、速度、GPSによる進路などを定めることができる。目的地近くのたとえば40マイル手前で速度を330ノットから250ノットに落とし、30マイル手前で19,500フィート(6,000メートル)から3,000フィートに毎分1500フィートで降下する、10マイル手前で毎分700~800フィートの降下率で着陸態勢に入る、といった飛行計画を自分で立ててそのように実行できる。結構、頭を使う。
 それだけではない、飛行の日時、時間を設定できる。雲の状態、風の状態を選ぶことができる。雲を突き抜けたり、雨の中を飛ぶこともできる(雨の滴が窓の外に降りかかる)。夕方から夜に時間帯を設定すると、太陽が沈み、滑走路に誘導灯がともる。
 航空交通管制を使って、状況をやりとりすることができる。たとえば、駐機ゲートから飛行許可を(無線で)求めると、どこそこの誘導路を通ってどこの滑走路へ行けと指示される。滑走路について離陸許可を求め、OKが出たら動き出すという具合だ。途中で、飛行機が降りてくるから一時待機するようにという指示が来ることもある(シミュレータが自動的に他機の飛行を生成する)。着陸時には着陸許可を要請し、着陸滑走路、着陸の順番などの指示を受ける。
 飛行中の外の景色がまた楽しい。かなりの精度でビルの高さ、山や谷の高低が三次元で表示される(たとえばゴールデンゲートブリッジの下を潜り抜けることもできる)ので、今まで知らなかった地形を目にすることができる。先日、与那国島から石垣島まで飛ばしたが、台湾の山々が与那国島のかなたに見えるのに、驚いた。グランドキャニオンの割れ目の中を小型機(ヘリも可能だ)で飛ぶと、谷底に滝があるのを発見したりする。冬の季節を選ぶと雪をかぶった山々を見ることができる。
 飛べるのは日本国内に限らない。たとえば、ラスベガスからサンフランシスコへとか、ボストンからニューヨークのラガーディア空港へ飛べる。先に国際学会で訪れたLake Tahoeから仲間とLos Angelesに空路移動したが、同じコースをシミュレータでたどり、こんなコースかと感慨深かった。
 まだまだ、試せる設定は無数にある。それに較べ、私の飛行時間は100時間超でしかない。本物のパイロットの飛行時間はさすがにすごい。
 やや、止まらなくなった。このへんにしよう。(ロバート)


面白データ

2012-01-14 12:44:59 | Weblog

 参照した資料によって値がばらつくので、具体的な数値を示すのに少しためらいを感じますが、簡単な算術計算です。

日本の年間総エネルギー消費(2008年):
 5.5×10の18乗 cal = 5.5×10の18乗 ×4.184 J(ジュール) = 2.30×10の19乗 J
 実際には電力に変換して使うことが多くその変換損失があるので、
 実質 2.25×10の19乗 J。
1年間の総秒数:
 365×24×60×60 = 3.15×10の7乗 秒
日本の毎秒エネルギー消費の電力換算(2008年):
 2.25×10の19乗 J/3.15×10の7乗 秒 =
 7.14×10の11乗 J/秒 = 7.14×10の11乗 w = 7.14×10の8乗 kw
 = 7.14 億kw
実際の総発電量:2.92×10の8乗 kw
原発1機の発電量を100万(10の6乗)kw/機とすれば、上の総量をまかなう原発数:
 7.14×10の8乗 kw/10の6乗 kw/機 = 714機
 実際の稼働状況(2010年5月):54基、総発電量 4,880万(= 4.88×10の7乗)
 kw。
 総エネルギー消費の約7%
 総発電量に対しては16.7%
日本の緯度、晴天時のSolar Energy:1 kw/m2
 発電効率を27%とみて270 w/m2、更に1日8時間程度の日照時間を考慮
 し、
 270/3 w/m2 = 90 w/m2とする(mの2乗を見にくいのでm2と表す)。
原発1機発電量(100万kw)相当のSolar Panel面積:
 10の9乗 w/90 w/m2 = 1.11×10の7乗 m2 = 11.1 km2 (kmの2乗をkm2と表
 す)
東京ドームの面積は 13,000 m2 = 1.3×10の-2乗 km2なので、原発1機分(100万kw)のSolar Panel面積の東京ドーム換算数:
 11.1 km2/1.3×10の-2乗 km2/東京ドーム = 8.54×10の4乗 東京ドーム
佐久間ダムの湛水面積(満水時の水面面積)は715 ha = 7.15 km2 なので、全面にsolar panelを貼ったとしても原発1機分(100万kw)の64%しか発電しない。

感想:やはり原発は巨大だ。それを全部solar panelでまかなうという発想は荒唐無稽だが、その一部でよいなら、面積確保にダム表面を利用するのも一理あるのではないか(巨大なものを一箇所に作るよりいくつかに分散したほうがよい)。ダム水面に浮かせれば設置もしやすい。(青)

電力伝送方式(3) -空間送電について-

2012-01-06 17:50:10 | Weblog

 MITと呼ばれているマサチューセッツ工科大学において、2006年に空間電力伝送実験に成功したというニュースに接して以来、電力の空間伝送についても興味を寄せていた。
 2012年の初頭に届いた電子情報通信学会誌にいくつかの紹介記事が小特集として組まれている。この雑誌の内容から刺激を受けたので少しばかり私見を述べる。もとより実際に実験を行うような若さは筆者にはないから、単なる思考実験にとどまる。ここに述べる内容は、学会誌の紹介記事には明確ではないにしても行間に記述してあるとか、あるいは著者はすでにご存じかも知れない。

 空間電力伝送は、すでに実用の域にある。
昨年末に20年近く使った家庭内の電話機器を交換する羽目になった。20年前、当時のハイテクを駆使した家庭内電話機器システムであったが、強力なアマチュア無線電波、雷害による焼損があり、その都度内部部品を交換していたが、ついに保守部品がなくなり、総入れ替えを行った。そのなかの電話端末器の一つは充電式電池を内蔵したハンディな電話器であるが、この端末電話機の充電器には電極がない。100Vのコンセントにつないだ電話器台に乗せて置くことで充電できる。電力としては余り大きくないが空間電力伝送を行っている。
 最近、電池搭載の自動車がプラグイン方式として大手自動車メーカーから発売されている。プラグインであるため、自動車は停止しながら電極を差し込んで充電しなければならない。空間電力伝送によりプラグインをなくすという研究が自動車メーカーで開始されているということが紹介記事の中にある。MITの研究に関連した企業と提携して開発を始めているという。将来は、自動車を走らせながら空間電力伝送により充電できるようにしたいらしい。決して夢物語ではない。山梨で実施されている磁気浮上高速鉄道の実験においては、高速走行中に地上から電力を供給するという。
 静磁界を横切ることで電圧を発生させることができる。このブログにも書き留めたファラデーが長年コダワリ続けて発見した法則によるものである。原理的には道路に永久磁石を埋め込んでおき、その上を高速で自動車が通過すれば、車上のコイルに電力が供給できる。ただし必ずエネルギーのロスはあるから、車両走行に使った分の電力が回収できるわけではない。ハイブリッド車ならば、永久磁石埋め込み道路の上を走ることでガソリン消費量が少なくてすむことは期待できる。

 自動車メーカーの空間電力伝送の開発は、プラグインをなくすことにある。自動車を停止しながら、あたかも電話器を台の上に置いて充電するように、大電力を供給したいらしい。
どのくらいの電力量伝送であろうか。
トヨタ自動車が最近発売を開始したプラグイン・ハイブリッド車のカタログによると家庭配電の交流200Vによる給電で充電時間約90分により3キロ・ワット時を消費し、これで走行できる距離は約24キロと書かれている。推定の範囲ではあるが、これがトヨタのプラグイン・ハイブリッド車に搭載されている充電池の最大実用容量であろう。
乗用車の空間電力伝送には2-3キロ・ワット/秒、理想的にはそれ以上の空間電力伝送を必要とする。もしこの電力をマイクロ波で行うとすれば、はなはだ危険である。家庭用の電子レンジの電力は600ワット程度である。マイクロ波を用いた自動車充電装置の上に間違って近づくとすれば、たちどころに生命にかかわるような人体内蔵に達する大やけどにさらされる。従ってマイクロ波伝送給電は実用化が困難である。

 それであればMITで実証された空間電力伝送はどうか。
結論から先に述べるとハイブリッド自動車への空間電力伝送、しかも人体に影響を及ばさない方式は実用可能である。
 少しばかりMITの実証実験に関して、電気エネルギー伝送の見地から踏み込んでみる。
この空間伝送方式の特徴を表すキーワードは、共振あるいは共鳴現象である。
ここで共鳴現象のエピソードに立ち寄ることにする。読み飛ばしていただいてもいい。
オペラ歌手を招いて祝宴を開いていたパーティーの話題である。歌手が歌い出したところ、客人が手にしていたワイングラスが突然割れたという。この現象はオペラ歌手の歌声がワイングラスに共鳴した現象として説明される。すなわち、オペラ歌手の声のエネルギーは、手に持ったワイングラスに共鳴する。その声のエネルギーは小さくとも、そのエネルギーはワイングラスに共鳴して蓄えられ、ついには破壊する大きなエネルギーに成長する。

 ここでQという専門用語を用いることをお許しいただきたい。
Qとは、共振器に蓄えることのできるエネルギーと共振器自身が消費するエネルギーの比率である。例えばある共振器が10000の値を持つエネルギーを蓄え留ことができ、その内の1のみ共振器自身のエネルギーとして消耗すれば、この共振器のQは10000であるという。Qは比率であるから物理的な意味での次元(ディメンジョン)はない。
オペラグラスは共鳴現象としてのQが高いから破壊が起こったといえる。

 空間伝送上の電気エネルギーは人体に影響がないような電力でも、高いQを持つ共振器、あるいは共鳴器があればいいことはおわかりいただけるであろう。まさにMITの研究者はここに着目したに違いない。
しかし、着目しただけではダメであって、実証しなければならない。空間伝送に用いるための周波数はどのくらいにするか、高いQを持つ共振器はどのように実現すればよいだろうか。

 2007年6月に発表されたMITの研究内容を大まかに紹介する。
送電端と受電端の近くに高いQを持つコイル共振器をそれぞれおき、そのすぐ側に共振器に注入するドライバーと受電するレシバーの円形のコイルを置いた実験装置である。
前述のオペラ歌手の例に当てはめれば、歌手の声帯振動がドライバー・コイル、口腔と喉の形が送信側の共振器に相当する。ワイングラスは受電端に置かれた共振器であり、特にエネルギーの取り出しに相当するレシバー・コイルはないから、ワイングラスが破壊したわけである。
実験結果の資料によると、周波数は約10MHzで行い、約2メートルの距離で60ワットの白熱電球を点灯することができ、伝送効率はおよそ50パーセントであったと評価している。
MITの研究者による発表論文のタイトルには「磁気共鳴(Magnetic Resonances)」と表示されているが、筆者は電磁気共振現象と考えている。

 ここからは、筆者の思考実験を述べる。
高いQの共振器が受電端にあれば、それほど大きな電磁波伝送を行わなくともよい。しかしながら電力を受電するためにはエネルギーを取り出すとすれば、高いQの共振器にすることができない。
 全く相反する要求である。
この相反する要求を満たすためには、MITの研究者のように共振器の側にエネルギーを取り出す受電コイルを置いてもいい。しかし、よくよく考えてみると高いQの共振器の側に置かれたレシバー・コイルでエネルギーを頂戴するわけであるから、見かけ上、共振器のQは低くなる。MITの実験では、Qの推定値は約2500であったが、実測結果から950±50であったという。Qが低くなった理由についてコイルの表面が酸化していたためなどと書かれているが、電気エネルギーを横取りすることが原因ではないかと筆者は考えている。
 提案としては、受電共振器をある時間には受電に、そして別のある時間にはエネルギーを負荷に供給するというように時分割動作するコイルにすればいいのではないか。さらに受電側に多数個の時分割コイルを配置すれば受電側は連続して受電できる。
供給側にはドライバー・コイルの側に、必ずしも共振コイルは必要ない。MITの実験では、送電側にも共振器を置いているが、これは電磁波の指向性を高める効果のためと解釈できる。もしその目的であれば指向性を高める手法が他にもあるはずである。例えばドライバ-・コイルの送電方向とは逆の位置に電磁波エネルギーを反射するための装置を置くことも考えられる。

 これから自動車メーカーは真剣になって、自家用車のプラグインというキーワードを広告から排除するために、研究に没頭する人材を投入することになるであろう。韓国の自動車メーカーもこの空間電力伝送の研究に参入しているらしい。
(納)

成書と雑誌

2012-01-05 10:16:33 | Weblog
 青さんが成書の奥深い意義をこのブログで謳っておられる。筆者もこの御意見には、高らかな拍手を送りたい。いま少し成書のもたらす意義について考えてみる。

 成書は、静的なポテンシァルであり、それに対して雑誌は動的な情報を提供する媒体と見なすことができるのではないか。筆者は、エネルギーのことにも関心を持っており、このブログの中でも様々な観点から書きとどめつつある。

 書籍のもつ形態をエネルギーとして例えるならば、成書はポテンシァル・エネルギーであり、雑誌は運動エネルギーに相当する。書籍に内在する情報は、ヒトに作用するエネルギーとみなすのである。
 古くは寺院、旧家に所蔵された書誌、そして近代に至って図書館に保存されている成書は、静的な情報ポテンシァル・エネルギーを蓄えている。新聞・雑誌に掲載される情報は動的エネルギーとして作用し、その作用が消滅すると共に大半は消える。ただし、その中で歴史的価値のある動的な情報は、静的な情報としてとどめ置かれることはいうまでもないが。
 図書館は、満々と水を蓄えたダムである。その静的な水を有効に利用するための動的作用には別のエネルギーが必要になる。古人はこれを勉学といい、いまも本質は変わらない。
 新聞・雑誌などによる動的な情報は、それ自身、動くエネルギーを有する。従ってヒトは受け身であっても容易に作用する。興味という受け皿があれば直ちに情報は作用し、それなりの効果を発揮する。

 現代にいたり、動的な情報伝達は、書籍の文字や書画のみならず、ラジオとか録音媒体による音響、さらに映画とかテレビジョンによる画像が加わり、二十世紀に大きな進展をもたらした。しかしヒトにとってはどちらかといえば受動的であった。つまり二十世紀には報道にかかわっていた記者が情報を収集し、これを整理して大衆に配布する仕組みであった。

 しかしいまや、変わりしつつある。
二十世紀の末から普及し始めたインターネットによる動的な情報伝達は、広域にわたるばかりではなく、高速度で行われるようになっている。情報源も広範囲にわたり、個人レベルからでも情報発信が行われる。その様相を眺めると、情報伝送は動的ではあるが、クラウドと称する巨大な記憶空間のもとに静的な作用を持つ形態を現出している。
 学会レベルでも情報の爆発時代とまでいわれるようになっている。現代人は情報洪水の中に巻き込まれつつあるといえそうである。

 2011年3月11日の東日本大震災、その津波災害により福島第一原子力発電所の事故が発生したが、この事故に関して情報が不足したという声も聞こえてきたが、実際には、過剰といえるほどの情報がもたらされていた。
 適切に処理されていない多くの情報が氾濫したために、これを受け取る側にとって正確に伝わらないから、情報が不足するような実感となっていた。○○シーベルトとか△△ベクレルといった数値情報を示されても、その数値からいかなる形で、どのような障害をヒトに与えるのか、よくわからない。その数値が示されて、いかに対処すればよいのか、おわかりになった方はおられるであろうか。
 筆者の場合、「赤ん坊に与える水がいるから、なんとかしてほしい」という依頼の電話を受けて、水を求めてスーパーに駆け込んだ。しかしその時は、すでに遅く、売り場からは水はすべてなくなっていた。
 いまはスーパーに水は山積みされてある。その水を見ると、あのときの水騒動はなんだったのかという想いがする。
 情報過多の中で、噂が噂を呼び、いわゆる風評障害をもたらす。インターネットの中では、風評は高速度で広範囲に伝搬する。情報の動的エネルギーとして作用する現象である。

 インターネット上に存在する情報が報道による動的情報と異なるのは、ヒトが必要とする、あるいは興味がある情報にアクセスするという行為が伴うことである。そこには個人的な意志行動が伴う。別の見方をすれば「すぐれた成書を読む」というプロセスに似ているようにも思われる。しかしながら精神活動のレベルには大きな差がある。
 「すぐれた成書」を読解するにあたり、高度の精神活動として、当初に述べたように古人のいう勉学を伴う。インターネット上に存在する情報にも「すぐれた成書」に相当する情報も存在することは認める。

 そこで、「あなた方の書棚に、それが実在するか」と問いかけて、この話題は終わりにする。
(応)