後悔をしたことがない人はだれもいないであろう。特に、人間関係が壊れたしくじりには身を刻まれるような苦渋が残る。しかし、後悔は、次に改める機会があるから意味があるのであって、将来がないシニアにとって、後悔は自己否定につながりやすく、生きる活力をしぼませかねない。この意味で、後悔はむしろ有害ですらある。
そこで、過去を振り返るのは止めて、これから先の新しい活力を生み出す楽しみを見つけなければならない。しかし、シニアがよく陥る、どこが具合悪いとか、若い世代に対する苦言や、他人の噂ばなしなどのお喋りを楽しもうとしても、人はあまり好まない。むしろ、自分なりに没頭できるホビーに見つけることになる。実際、周りを見回すといろいろなホビーを楽しんでいる人が多い。
家のそばに大きな椹の木が3本生えているので「3本椹の」とニックネームをつけたSさん(家の回りにSさんは3人もいる)は草花の権威だ。庭に一面にいろいろな草花を植えて、楽しんいる。奥さんにそう呼ばれたという「石器人」のSさんはグルメだ。ただ食べるだけではなく、おいしいものを食べるとこれはどう料理したのか知りたくなり、自分でも試してみるのだそうだ。そうでなければ面白くないでしょうと、当たり前の顔で言う。
縁戚に当たるGさんは釣りだ。釣りを楽しむために住居をわざわざ湘南の海岸に移したほどである。Hさんは木工に熱中している。ガレージの上を立派な工作室にしている。私の友人の中には、建築に凝っていたり(もう専門家の域に達している)、宗教に興味を抱いたりする人もいる。そのほか、ゴルフを楽しむもの、絵を描くのを楽しみにしているもの、いろいろだ。
これら熱中人に共通するのは、その人のホビーに話を向けようものなら、話が止まらなくなる点だ。「3本椹の」Sさんは人を捕まえては、草花のところに案内し、これはどこそこに群生していたとか、外来種だとか、詳しく説明する。「石器人」のSさんは、お腹の中を取り除いた鯖を梅干と共に醤油に一晩漬けておき、それを焼くと油が落ちていて実にうまい、と薀蓄を傾ける。Gさんは、少しアルコールが入ると、釣りの成果の同じ話を何回もするので「もうその話はいいの」と娘さんにたしなめられる。Hさんは自分の作品を見せ、その製作過程や使う工具を熱心に説明してくれる。挙句の果てには、どうぞ工作室に来て一緒に何か作りませんか、と誘う。
ところで、お前のホビーは何かと問われれば(待ってました)、私はマイクロソフト製のフライトシミュレータを楽しんでいる。なんだコンピュータゲームかと言わないでください。実に精密、かつ、リアルにできているのだ。まったく自由に楽しめることを分かってもらうために、少々、喋らせてください。
飛ばす飛行機を選ぶことができる。一番安定して操縦できるのはボーイング737-400だ。小型機を試してみたければセスナS128 Skylaneがよい。次に飛行。電波航法機器を使って勝手に飛ぶこともできるが、飛行系路を自由に設定することもできる。たとえば、松本空港からニュー千歳空港まで飛ぶのに、まず、北に向けて安曇野のポイント、新潟空港、秋田空港などに立ち寄り(着陸し)、十和田湖を横に見ながら陸奥湾、津軽海峡、函館上空を超え、太平洋上の真南から千歳空港の1L滑走路に降りる。更に地上を走り(タクシーすると言う)3番ゲートに機体を寄せる、といった具合だ。ジョイスティックを使って上下左右、自由に機体を操れるが、自動操縦機能を使って、高度、速度、GPSによる進路などを定めることができる。目的地近くのたとえば40マイル手前で速度を330ノットから250ノットに落とし、30マイル手前で19,500フィート(6,000メートル)から3,000フィートに毎分1500フィートで降下する、10マイル手前で毎分700~800フィートの降下率で着陸態勢に入る、といった飛行計画を自分で立ててそのように実行できる。結構、頭を使う。
それだけではない、飛行の日時、時間を設定できる。雲の状態、風の状態を選ぶことができる。雲を突き抜けたり、雨の中を飛ぶこともできる(雨の滴が窓の外に降りかかる)。夕方から夜に時間帯を設定すると、太陽が沈み、滑走路に誘導灯がともる。
航空交通管制を使って、状況をやりとりすることができる。たとえば、駐機ゲートから飛行許可を(無線で)求めると、どこそこの誘導路を通ってどこの滑走路へ行けと指示される。滑走路について離陸許可を求め、OKが出たら動き出すという具合だ。途中で、飛行機が降りてくるから一時待機するようにという指示が来ることもある(シミュレータが自動的に他機の飛行を生成する)。着陸時には着陸許可を要請し、着陸滑走路、着陸の順番などの指示を受ける。
飛行中の外の景色がまた楽しい。かなりの精度でビルの高さ、山や谷の高低が三次元で表示される(たとえばゴールデンゲートブリッジの下を潜り抜けることもできる)ので、今まで知らなかった地形を目にすることができる。先日、与那国島から石垣島まで飛ばしたが、台湾の山々が与那国島のかなたに見えるのに、驚いた。グランドキャニオンの割れ目の中を小型機(ヘリも可能だ)で飛ぶと、谷底に滝があるのを発見したりする。冬の季節を選ぶと雪をかぶった山々を見ることができる。
飛べるのは日本国内に限らない。たとえば、ラスベガスからサンフランシスコへとか、ボストンからニューヨークのラガーディア空港へ飛べる。先に国際学会で訪れたLake Tahoeから仲間とLos Angelesに空路移動したが、同じコースをシミュレータでたどり、こんなコースかと感慨深かった。
まだまだ、試せる設定は無数にある。それに較べ、私の飛行時間は100時間超でしかない。本物のパイロットの飛行時間はさすがにすごい。
やや、止まらなくなった。このへんにしよう。(ロバート)
そこで、過去を振り返るのは止めて、これから先の新しい活力を生み出す楽しみを見つけなければならない。しかし、シニアがよく陥る、どこが具合悪いとか、若い世代に対する苦言や、他人の噂ばなしなどのお喋りを楽しもうとしても、人はあまり好まない。むしろ、自分なりに没頭できるホビーに見つけることになる。実際、周りを見回すといろいろなホビーを楽しんでいる人が多い。
家のそばに大きな椹の木が3本生えているので「3本椹の」とニックネームをつけたSさん(家の回りにSさんは3人もいる)は草花の権威だ。庭に一面にいろいろな草花を植えて、楽しんいる。奥さんにそう呼ばれたという「石器人」のSさんはグルメだ。ただ食べるだけではなく、おいしいものを食べるとこれはどう料理したのか知りたくなり、自分でも試してみるのだそうだ。そうでなければ面白くないでしょうと、当たり前の顔で言う。
縁戚に当たるGさんは釣りだ。釣りを楽しむために住居をわざわざ湘南の海岸に移したほどである。Hさんは木工に熱中している。ガレージの上を立派な工作室にしている。私の友人の中には、建築に凝っていたり(もう専門家の域に達している)、宗教に興味を抱いたりする人もいる。そのほか、ゴルフを楽しむもの、絵を描くのを楽しみにしているもの、いろいろだ。
これら熱中人に共通するのは、その人のホビーに話を向けようものなら、話が止まらなくなる点だ。「3本椹の」Sさんは人を捕まえては、草花のところに案内し、これはどこそこに群生していたとか、外来種だとか、詳しく説明する。「石器人」のSさんは、お腹の中を取り除いた鯖を梅干と共に醤油に一晩漬けておき、それを焼くと油が落ちていて実にうまい、と薀蓄を傾ける。Gさんは、少しアルコールが入ると、釣りの成果の同じ話を何回もするので「もうその話はいいの」と娘さんにたしなめられる。Hさんは自分の作品を見せ、その製作過程や使う工具を熱心に説明してくれる。挙句の果てには、どうぞ工作室に来て一緒に何か作りませんか、と誘う。
ところで、お前のホビーは何かと問われれば(待ってました)、私はマイクロソフト製のフライトシミュレータを楽しんでいる。なんだコンピュータゲームかと言わないでください。実に精密、かつ、リアルにできているのだ。まったく自由に楽しめることを分かってもらうために、少々、喋らせてください。
飛ばす飛行機を選ぶことができる。一番安定して操縦できるのはボーイング737-400だ。小型機を試してみたければセスナS128 Skylaneがよい。次に飛行。電波航法機器を使って勝手に飛ぶこともできるが、飛行系路を自由に設定することもできる。たとえば、松本空港からニュー千歳空港まで飛ぶのに、まず、北に向けて安曇野のポイント、新潟空港、秋田空港などに立ち寄り(着陸し)、十和田湖を横に見ながら陸奥湾、津軽海峡、函館上空を超え、太平洋上の真南から千歳空港の1L滑走路に降りる。更に地上を走り(タクシーすると言う)3番ゲートに機体を寄せる、といった具合だ。ジョイスティックを使って上下左右、自由に機体を操れるが、自動操縦機能を使って、高度、速度、GPSによる進路などを定めることができる。目的地近くのたとえば40マイル手前で速度を330ノットから250ノットに落とし、30マイル手前で19,500フィート(6,000メートル)から3,000フィートに毎分1500フィートで降下する、10マイル手前で毎分700~800フィートの降下率で着陸態勢に入る、といった飛行計画を自分で立ててそのように実行できる。結構、頭を使う。
それだけではない、飛行の日時、時間を設定できる。雲の状態、風の状態を選ぶことができる。雲を突き抜けたり、雨の中を飛ぶこともできる(雨の滴が窓の外に降りかかる)。夕方から夜に時間帯を設定すると、太陽が沈み、滑走路に誘導灯がともる。
航空交通管制を使って、状況をやりとりすることができる。たとえば、駐機ゲートから飛行許可を(無線で)求めると、どこそこの誘導路を通ってどこの滑走路へ行けと指示される。滑走路について離陸許可を求め、OKが出たら動き出すという具合だ。途中で、飛行機が降りてくるから一時待機するようにという指示が来ることもある(シミュレータが自動的に他機の飛行を生成する)。着陸時には着陸許可を要請し、着陸滑走路、着陸の順番などの指示を受ける。
飛行中の外の景色がまた楽しい。かなりの精度でビルの高さ、山や谷の高低が三次元で表示される(たとえばゴールデンゲートブリッジの下を潜り抜けることもできる)ので、今まで知らなかった地形を目にすることができる。先日、与那国島から石垣島まで飛ばしたが、台湾の山々が与那国島のかなたに見えるのに、驚いた。グランドキャニオンの割れ目の中を小型機(ヘリも可能だ)で飛ぶと、谷底に滝があるのを発見したりする。冬の季節を選ぶと雪をかぶった山々を見ることができる。
飛べるのは日本国内に限らない。たとえば、ラスベガスからサンフランシスコへとか、ボストンからニューヨークのラガーディア空港へ飛べる。先に国際学会で訪れたLake Tahoeから仲間とLos Angelesに空路移動したが、同じコースをシミュレータでたどり、こんなコースかと感慨深かった。
まだまだ、試せる設定は無数にある。それに較べ、私の飛行時間は100時間超でしかない。本物のパイロットの飛行時間はさすがにすごい。
やや、止まらなくなった。このへんにしよう。(ロバート)