体に悪いことが分かっていても目先の快楽を求めてつい手を出してしまうのが麻薬だ。それを続けているうちに麻薬なしではいられない中毒患者となり、最後は体がぼろぼろになる。健康な体を取り戻すには病院に入り、強制的な処方によって麻薬抜きの苦痛を克服しなければならない。
人間は豊富なエネルギーを手に入れる方法━原発━を見つけ、快適な生活を送るようになった。その快適さを維持したい、引き続きその恩恵に浴したいという欲望から、将来は地球全体が破滅的な困難に立ち至ることガ分かっていても、そのエネルギー獲得の手段につい手を出してしまう。いつかは使用済み核燃料の捨て場所で行き詰まり(原発が開発されてから何十年もたつのに、使用済み核燃料の廃棄処理技術は確立されていない)、地球がぼろぼろになってしまうのが分かっていることではないか。
二つの状況を並べてみると、原発と麻薬はよく似通っていると思えてしまう。麻薬抜きに戻るにはそれなりの苦痛を覚悟しなければならないように、将来的に行き詰る原発から脱却し、地球がぼろぼろになるのを救うためには、一定期間、それなりの苦痛を覚悟する必要があるのではないか。その覚悟を伴った将来への展望が必要なのではないか。
脱原発の閣議決定があいまいにされたときの経済界の代表の「ああ、これでよかった」という、ただそれだけの発言(それに続くコメントがあったのかどうかは、テレビでは放映されなかったので分からない)に、私は大いに失望した。エネルギーが確保され、産業界の目先の安泰が保てた(まさか大企業だけではないであろうが)だけで「ああ、よかった」という思考回路は、先行きを考えて自制することなくなんとしても麻薬を手に入れようとする中毒患者の性向と似てはいないか。経済界の代表の見識としては、失礼ながら、お粗末としか言いようがない。
現状を変え、新しいシステムを導入しようとするときに、抵抗勢力が必ず現れる。現状を変えないことでうまい汁を吸う連中がいるからである。目先のうまい汁を追うだけで、将来の禍根を増やし続けていてよいのであろうか。
雑駁な脅威論を振り回すだけではなく、苦痛がどの程度のものか、その対処法にどのようなものがあるのか、新しい技術革新の可能性はあるのか、それらについてデータに基づく冷静かつ公正な分析が必要である(もし、すでにどこかで行われているとすれば、それを詳しく、正確に、国民に知らしめなければいけない)。その上で、皆がどのように苦痛を負担したらよいか、苦痛の分配をどうすべきか、これは政治の重大なテーマの筈だが、お粗末な政治の現状では期待すべくもないか。(ボブ・ニールセン)
人間は豊富なエネルギーを手に入れる方法━原発━を見つけ、快適な生活を送るようになった。その快適さを維持したい、引き続きその恩恵に浴したいという欲望から、将来は地球全体が破滅的な困難に立ち至ることガ分かっていても、そのエネルギー獲得の手段につい手を出してしまう。いつかは使用済み核燃料の捨て場所で行き詰まり(原発が開発されてから何十年もたつのに、使用済み核燃料の廃棄処理技術は確立されていない)、地球がぼろぼろになってしまうのが分かっていることではないか。
二つの状況を並べてみると、原発と麻薬はよく似通っていると思えてしまう。麻薬抜きに戻るにはそれなりの苦痛を覚悟しなければならないように、将来的に行き詰る原発から脱却し、地球がぼろぼろになるのを救うためには、一定期間、それなりの苦痛を覚悟する必要があるのではないか。その覚悟を伴った将来への展望が必要なのではないか。
脱原発の閣議決定があいまいにされたときの経済界の代表の「ああ、これでよかった」という、ただそれだけの発言(それに続くコメントがあったのかどうかは、テレビでは放映されなかったので分からない)に、私は大いに失望した。エネルギーが確保され、産業界の目先の安泰が保てた(まさか大企業だけではないであろうが)だけで「ああ、よかった」という思考回路は、先行きを考えて自制することなくなんとしても麻薬を手に入れようとする中毒患者の性向と似てはいないか。経済界の代表の見識としては、失礼ながら、お粗末としか言いようがない。
現状を変え、新しいシステムを導入しようとするときに、抵抗勢力が必ず現れる。現状を変えないことでうまい汁を吸う連中がいるからである。目先のうまい汁を追うだけで、将来の禍根を増やし続けていてよいのであろうか。
雑駁な脅威論を振り回すだけではなく、苦痛がどの程度のものか、その対処法にどのようなものがあるのか、新しい技術革新の可能性はあるのか、それらについてデータに基づく冷静かつ公正な分析が必要である(もし、すでにどこかで行われているとすれば、それを詳しく、正確に、国民に知らしめなければいけない)。その上で、皆がどのように苦痛を負担したらよいか、苦痛の分配をどうすべきか、これは政治の重大なテーマの筈だが、お粗末な政治の現状では期待すべくもないか。(ボブ・ニールセン)