大まかな内容を述べておこう。最近になって子供の精神的な病気が増えていること、そのための医者が少なく手薄なことから、予約しても数ヶ月も待たされ、診察時間も数分程度しかないという。適切な診断を受けずに医薬品の処方が行われる。症状が改善しない場合、その量だけが増やされる。適合しない医薬品が過剰に処方され、そのために生じる副作用により、新たな症状に苦しむということであった。
ある心理学の専門家によると、精神障害の中でも子供の発達障害は、心理学の知識を持った福祉士によるカウンセリングで正常な生活に戻すことができるという。不登校児童の中には発達障害が原因となり、それが子供達の自殺にまで追い込むケースもあるようだと述べている。
大学の医学部は、病気を発見しその治療を行うことが主な目的として医者の育成教育が行われる。名医は、病気となった原因を正確に診断し、その原因を外科的に除去するとか、あるいは適切な投薬によって治療を施す。的確に診断をくだす名医にはまことに頭が下がる。
子供達の発達障害の発見と治療は医者の役割であるとして、心理学のカウンセラーとは一線を画している、とある心理学専門家は実情を吐露する。もとより精神障害にかかわる医学的診断は精神科の医者が下さなければならない。精神障害が顕在化する前に、いくつかの前兆があるという。幼児、児童、さらには思春期に至る子供達の精神的な発達障害は、幼稚園の先生とか小中学校の先生方もある程度の心理学での研究成果を元にした知識を備え、前兆をとらえて適切に対処できるようにしておくことが望ましい。現在もカウンセラーが小中学校に配置されている例も多いそうであるが、現場の教師によると必ずしも適切に機能していないという。
発達障害などによる精神的な障害、医者に訪れなくともよいような初期段階であれば、これを克服できる場合がある。精神障害が顕在化して、多くの患者の問診に多忙な医者に頼る前に善処する必要がある。様々なストレスによる精神的な苦痛を受けたとき、これまでも牧師とか僧侶が相談にのってこれを克服した。ある地方では、お坊さんが、ソロバンとか書道の私塾をお寺で開き、そこで子供達は手習いのかたわらカウンセリングも行っていた。いま、塾に通う子供も多いようだが、塾ではカウンセリングをおこなっているのだろうか。またテレビ・ゲームで過ごす子供達が多いという。先天的に発達障害の素質があれば、その障害の顕在化を促進することも危惧される。
幼児、児童の生活環境にあって、子供達の発達過程に適切な指導とカウンセリングが行われる地域社会の展開が、金銭による子供手当の支給などよりも重要な課題になっている。
(能)