先般、ある知人から、家庭内の蛍光灯に、それも直管型の、LED照明管をつけたという。蛍光灯器具には電圧安定器と称する鉄心に銅線巻線を施したトランスのような器具がついている。これを取り外したものかどうかという。理由を聞くと、インターネットで調べると電圧安定器は十数ワットの電力を消費するという実務家の意見があり、LED照明管に交換しても無駄な消費電力が存在する、ということであった。少しばかり電気工学を学んだ筆者の立場から言うと、蛍光灯器具内の電圧安定器はインダクタであるから内部巻線の持つ銅の抵抗分と鉄心の磁界に生じる損失分だから十数ワットとは考えられない、遙かに少ないはずである、と答えた。
そこでインターネットに掲げた実務家の説がどのような根拠によるものか、考察を試みた。電圧安定器はインダクタであるから、交流に対しては抵抗のような振る舞いをする。したがって電圧安定器の両端子を交流電圧計で測定すると電圧を生じているであろう。蛍光灯の消費電力を仮に20ワットと仮定するとそれに流れる交流電流は0.2アンペアと見なせるから、電圧安定器の両端電圧にこの電流を乗じると十数ワットになる、と言うのが根拠ではないだろうか、と推察した。
LED照明管が、すでに取り付けられている電圧安定器が存在するものとして製造・販売されているのならば、これを取り外すことは危険であり、いかなる電圧にも対処できるLED照明管ならば取り外しても差し支えない、としか返答ができなかった。
個人的にはLED照明器具は将来の照明設備として優れた存在であると考えている。そのために電気器具店を訪れる機会には、点灯している電球型LEDの根本部分をさわり、発熱状態を確かめている。この根本部分が熱く感じることが多い。機器によってはさわれないほどに熱いものもある。ここが熱いことは、電気エネルギーが熱として損失しているからであり、機器技術の未成熟を伝えるのである。
少しばかり解説を試みよう。
日本国内の家庭内の照明に供する電力配線は交流100ボルトである。一方LED単体に供給する電圧は、直流2ボルト以下である。LED単体の供給電圧とするためには、交流100ボルトから低圧直流に変換するための変換回路機器が必要である。これが電球型LED照明器の根本部分に組みこまれており、発熱の原因となっている。
一般家庭内に低電圧直流配電が存在すれば、このような発熱を伴う変換回路は必要なく電気エネルギーの節約になる。省エネに向け家屋全体にわたってLED照明とするためには有効な設備である。
低電圧直流配電はそれ以外にも多くの利点が生じる。およそ電子機器は全て低電圧直流給電でまかなうことができる。テレビジョン、パーソナルコンピュータは言うに及ばず、いま家庭電力コンセントと機器に繋がる電子装置との間に電圧変換器を挿入する機器は全て低電圧直流電源から供給できる。
それでは、どのくらいの電圧の低電圧直流配電がよいだろうか、と問われるであろう。
これに対する筆者の答えとして、プラス・マイナス6ボルトの三線式配線が適当ではないかと考えている。三線式配電の両端電圧は12ボルトとなる。
この低電圧配電に蓄電設備を付設することは容易でしかも安価であり、かつ耐震性の備えがあれば、かっての3.11大地震で電力供給が途絶えたような状態が再来したとしても照明に窮することはない。テレビなども使えることは言うまでもない。
現在は、やや後退気味と思える太陽光発電設備に関しても述べておこう。太陽光電池の端子電圧は数ボルト程度と低いこともあって、現在は電力会社への売電のために、高い交流電圧に変換しなければならないから、別の設備投資が必要である。この設備投資も高額である。低電圧配電との変換は必要になるかも知れないが、はるかに低額な投資設備で充分であろう。
将来、外部から電力を補うためのプラグを備えたプラグイン・ハイブリッド・カーが普及すれば、自家用の太陽光発電電力によりマイ・カーで地域活動ができることも想像できる。
いまから新築を考えておられる方は、将来低電圧直流配電が普及することを考えて配管ダクトなどを設置しておくことをお薦めしておきたい。
さらに言えば、ハウス・メーカーはLED照明器具の製造元とタイアップして低電圧専用の照明器具を開発・販売することも実施しながら、低電圧直流配電を設置し、将来の日本国の省エネに対して踏み込むことを考えるのはいかがであろう。
関係のある業界は、低電圧直流配電コンセントの形状などを含めた設備基準の設定も重要な課題であることをつけ加えておきたい。
(納)
そこでインターネットに掲げた実務家の説がどのような根拠によるものか、考察を試みた。電圧安定器はインダクタであるから、交流に対しては抵抗のような振る舞いをする。したがって電圧安定器の両端子を交流電圧計で測定すると電圧を生じているであろう。蛍光灯の消費電力を仮に20ワットと仮定するとそれに流れる交流電流は0.2アンペアと見なせるから、電圧安定器の両端電圧にこの電流を乗じると十数ワットになる、と言うのが根拠ではないだろうか、と推察した。
LED照明管が、すでに取り付けられている電圧安定器が存在するものとして製造・販売されているのならば、これを取り外すことは危険であり、いかなる電圧にも対処できるLED照明管ならば取り外しても差し支えない、としか返答ができなかった。
個人的にはLED照明器具は将来の照明設備として優れた存在であると考えている。そのために電気器具店を訪れる機会には、点灯している電球型LEDの根本部分をさわり、発熱状態を確かめている。この根本部分が熱く感じることが多い。機器によってはさわれないほどに熱いものもある。ここが熱いことは、電気エネルギーが熱として損失しているからであり、機器技術の未成熟を伝えるのである。
少しばかり解説を試みよう。
日本国内の家庭内の照明に供する電力配線は交流100ボルトである。一方LED単体に供給する電圧は、直流2ボルト以下である。LED単体の供給電圧とするためには、交流100ボルトから低圧直流に変換するための変換回路機器が必要である。これが電球型LED照明器の根本部分に組みこまれており、発熱の原因となっている。
一般家庭内に低電圧直流配電が存在すれば、このような発熱を伴う変換回路は必要なく電気エネルギーの節約になる。省エネに向け家屋全体にわたってLED照明とするためには有効な設備である。
低電圧直流配電はそれ以外にも多くの利点が生じる。およそ電子機器は全て低電圧直流給電でまかなうことができる。テレビジョン、パーソナルコンピュータは言うに及ばず、いま家庭電力コンセントと機器に繋がる電子装置との間に電圧変換器を挿入する機器は全て低電圧直流電源から供給できる。
それでは、どのくらいの電圧の低電圧直流配電がよいだろうか、と問われるであろう。
これに対する筆者の答えとして、プラス・マイナス6ボルトの三線式配線が適当ではないかと考えている。三線式配電の両端電圧は12ボルトとなる。
この低電圧配電に蓄電設備を付設することは容易でしかも安価であり、かつ耐震性の備えがあれば、かっての3.11大地震で電力供給が途絶えたような状態が再来したとしても照明に窮することはない。テレビなども使えることは言うまでもない。
現在は、やや後退気味と思える太陽光発電設備に関しても述べておこう。太陽光電池の端子電圧は数ボルト程度と低いこともあって、現在は電力会社への売電のために、高い交流電圧に変換しなければならないから、別の設備投資が必要である。この設備投資も高額である。低電圧配電との変換は必要になるかも知れないが、はるかに低額な投資設備で充分であろう。
将来、外部から電力を補うためのプラグを備えたプラグイン・ハイブリッド・カーが普及すれば、自家用の太陽光発電電力によりマイ・カーで地域活動ができることも想像できる。
いまから新築を考えておられる方は、将来低電圧直流配電が普及することを考えて配管ダクトなどを設置しておくことをお薦めしておきたい。
さらに言えば、ハウス・メーカーはLED照明器具の製造元とタイアップして低電圧専用の照明器具を開発・販売することも実施しながら、低電圧直流配電を設置し、将来の日本国の省エネに対して踏み込むことを考えるのはいかがであろう。
関係のある業界は、低電圧直流配電コンセントの形状などを含めた設備基準の設定も重要な課題であることをつけ加えておきたい。
(納)