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鈴木晶の「バレエ誕生」を読む

2017-05-17 10:23:50 | 読書
2002年に出た本だが、これまで暇がなかったので、読めなかった本だ。鈴木氏の本としては「踊る世紀」というのがロシア・バレエを書いた本だが、この「バレエ誕生」はいわゆるロマン派バレエについて書かれた本だった。本の中でも書かれているように、バレエの踊りの源はイタリアであり、そこからフランス宮廷の踊りとなり、パリのロマン派バレエとなるのが一般的だが、現在のクラシック・バレエで一般的なポアントで立つテクニックが登場したロマン派バレエの誕生をもって、「バレエ誕生」との書名としているとのこと。

日本で現在見る事ができるバレエの演目というのはかなり少なく、ロマン派バレエとして見る事ができるのは「ラ・シルフィード」と「ジゼル」が代表的で、それ以外はビデオでいくつか見る程度だ。しかも、そうしたロマン派バレエの演目という作品も、誕生以降に大きく作り変えられていることが多いので、19世紀のロマン派バレエというのは、実のところ僕はどういうものだったか想像するしかない。

そうした、観たこともないどんなものかわからないものを説明するのは、すごく大変だと思うが、鈴木氏はいろいろと手を尽くして説明しており、わからないまでも、まあ、そんなムードだったのかなあ、という気持ちにさせてくれる。それでも、ダンサーの特徴でマリー・タリオーニとファニー・エルスラーの違いについて、当時の批評を引用して「キリスト教的と異教的」という意味を解説してくれるのだが、僕は頭の中で想像ばかりが膨らんで、果たして正確な理解ができているのかどうか分からなかった。

まあ、そうした一般的に書かれている事項についての説明も詳しいが、この本にしか書かれていないことがあるので、大変貴重だと思った。ロマン派のバレエというとパリで盛り上がってロシアに伝わった、との説明が多いが、その時代、つまり19世紀中ごろから終わりごろにかけてのイギリスやイタリア、そしてデンマークなどのバレエの状況についても説明がされている。

参考にした新しい論文の紹介があるが、今までそうした状況は全く知らなかったのでありがたい。ただ、イタリアでの上演の内容からすると、ロマン派という分類には当てはまらない気もするが、当時のバレエ界の状況が立体的に見えてくるのだ大変助かる。

フランスやイタリアでの状況を読むと、オペラとバレエの関係が気になり始めた。現在ではオペラとバレエというのはかなり棲み分けているようにも見えるが、19世紀においては混然一体となっている部分もあったようで、そうした事情について誰か本格的に研究して本を書いてくれないかなあと、思った。

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