11月の始めでしたか、仕事で二人の方と「カラオケ」に行くことになりました。好きな曲がラジオから流れてくると一緒に歌ったりするくせに「カラオケ」には興味がなく、最近(90年代後半以降)の歌は洋楽&邦楽共に知らないせいか、同僚とカラオケに行くと「浮きまくる」のは必至なのですが、その日は楽しく過ごすことができました。二人から次々リクエストが出てリモコン操作に大忙し! 自分も好きな唄を二曲歌いました。
(最後は三人で『宇宙戦艦ヤマト』を熱唱)
『コバルトの季節の中で』をカラオケで歌うのは初めてだったのですが、今までどうして歌ったことがなかったのでしょう? とても好きな曲です。小谷夏さん(実は久世光彦さんのペンネーム)の歌詞も、ど派手になる前のジュリー(沢田研二)のしっとりした歌い方も、彼自身が作曲したメロディも全部好きでした。音楽配信どころかCDもなく、もしかしたら「カラオケ」という言葉もまだない時代だったけれど、ラジオやテレビや街角でよく流れていました。1976年の秋のことです。
そのころ自分は、正真正銘の「初恋」の真っ最中(それ以前も好きな人はいたけど、初恋と呼ぶほどではなかった)。想いをどうやって伝えたらいいのかわからず、ただ遠くから見つめていました。歌詞とはちょっと違って、彼女の髪形が変わったのは冬で、春が来て別々のクラスに別れてしまうまでの短い時間の間に、自分の気持ちを何とか伝えようと、道端で、電話で、手紙で長いこと話しました。結局、二人だけのデートには一度も行かれなかったけれど、幸福な時間だったと思います。
「恋」とは心に起きる一種の化学反応だと思うのですが、恋が生まれる瞬間は(最近FMラジオで、恋の記念日じゃなくて、『恋の誕生日』というなかなか素敵なJ・POPを聴きました)、地球上に最初の生命が生まれたときのように不思議な、そして永遠に解けない謎かもしれません。いつどこで人は恋におちるのだろう? なぜ他の人でないその人なのだろう? そもそもどうして人を好きになるのだろう? 恋が生まれる瞬間なんて、自覚できないのが普通かもしれません。でも、このときは・・・。
高校一年生のニワトリさんは、映画『色即ぜねれいしょん』な青春を送っていました。女の子に普通に声をかけることのできない男子でしたから、文化祭などの催しに「棚から牡丹餅」的な第三種接近遭遇(映画『未知との遭遇』のキャッチコピー参照)を期待したものです。
それなのに、学校側が主催してくれたフォークダンス大会では、「男女が大きな輪を描いて手をつないだりするフォークダンスなんて、ダサくて恥ずかしくてやってられないぜ~」と、全く関心のないふりをしながら、「各クラスに何人かいるマドンナたちが参加してくれないだろうか?」遠巻きに様子を窺い、確かにマドンナたちが来てくれて輪の中に入っていったのに、自分たちはそれを眺めながら「脚が太い」だの「性格最悪」とか、『イソップ物語』のキツネにも似た寸評(というか遠吠え)をしているだけ、というモテない男子の典型を演じておりました。
(その頃の自分はわりと可愛い顔をしていたと思うのだけど)
体育館では、お世辞にも上手いとはいえないバンドが、何をコピーしたのかもわからない曲を熱心に演奏していました。友達が【KISS】のジーン・シモンズの真似をして、ベースを弾きながら血の代わりに口に含んだケチャップを「どろり」と吐いてみせたのですが、誰一人パフォーマンスに気づかず、【KISS】の大ファンだった自分は天を仰ぎながらも、惜しみない拍手を送りました。学校側はおそらく禁止していたと思いますが、本番直前にメイクして演奏することができたら、気づいてもらえたかもしれません。ひとりの女の子が「あれ、○×クン、何か吐いたよ。大丈夫かな?」と呟いていったけ・・・。
出し物は次々かわり、合唱部の出番になりました。数年後には全国大会で入賞するほど成長していくのですが、そのときはまだ素人に毛が生えた程度だったと思います。それでも、バンド連中とは一線を画した合唱が始まり、ニワトリさんも姿勢を正しました。
今までの「ノイズ」とは違う「音楽」に聴き惚れているとき、ピアノを伴奏している女性にふと目がとまりました。「もしかして、同じクラスの∮∮じゃないか? 彼女、ピアノ弾けたんだ・・・」
昨日まで教室のどこに座っているのかも知らなかったのに、文化祭の数日後には立派な恋の病にかかっていました。処方箋はありません。彼女は、自分よりもバレーボール(合唱部のピアノ演奏より力を入れていた)の方が好きだったようです。「絶え間なく揺れていた」思春期の中で、もう少し彼女を見つめていることができたら、もう少し優しい気持ちになれたら、彼女が今も隣にいたかもしれません。『コバルトの季節の中で』は、少しの後悔と、今も変わらない想いを呼び覚ましてくれました。隠れた名曲と言われていますが、個人的にもこんな思い出があったなんて・・・ちょっとした驚きです。
そして、それとは全く別に、今現在の自分もまた「コバルトの季節の中」にいることに気づきました。
「髪形がかわりましたね 秋風によく似合いますね」「誰だって 秋は独りです」「だけど人はきっと 愛しあえるでしょう」「だから明日のこと 話してみませんか」
一つひとつの言葉が胸に沁みていきます。特に、「しあわせの手ざわりが いまとても懐かしく」と、「ひとりぼっちだったから やさしさが好きでした」というフレーズは、今の気持ちとシンクロしていて、とても心地良く響いてきます。かといって、薔薇色の日々を迎えているわけでは全くないのですが、絶え間なく気持ちが揺れているこの秋の中で、大事な人を見失う愚だけはしないつもりです~♪
美しすぎるジュリーの奇蹟的な動画は、 → ここをクリック
奇蹟の動画は削除されてしまいました・・・ → ここをクリック(曲は聴けます)
髪形がかわりましたね 秋風によく似合いますね
何か悲しいこと あったのでしょうか
コバルトが目にしみますね 誰だって秋は独りですね
だから今朝はなにも 話しかけません
しあわせの手ざわりが いまとても懐かしく
足早に過ぎて行く この秋の中で
あなたを 見失いたくないのです
風の日はきらいでしたね 忘れたい何かあるのですね
だけど人はきっと 愛しあえるでしょう
コバルトが目にしみますね 誰だって過去はつらいですね
だから明日のこと 話してみませんか
ひとりぼっちだったから やさしさが好きでした
絶え間なく揺れている この秋の中で
あなたを 見失いたくないのです
あなたを 見失いたくないのです
それにしても、ジュリーは名曲が多い! ポリドール時代の『沢田研二 A面コレクション』を買ってしまいました。実を言うと、今一番凝っているのは「MAYA」なのですが、彼女については別項で!
大好きです!!ジュリーの声にうっとりします!! カラオケで歌ってみたいなあ。
職場で、忘年会があるんですよ。歌の練習、しなくては!!もちろん、ジュリーの曲ですよ!!