江戸の水を旅する ~ 早稲田からお茶の水へ、神田上水を巡る

2007-06-09 21:39:30 | 日常&時間の旅


稲田・花菖蒲田・藤棚・森と重なる風景。ここはどこ?


 予定通り工事が終わったので(早く上がりたいから7時に現場に行ったのだ)、9時半には会社を後にすることができた。
 本日初日のオムニバス映画(七人の侍ならぬ七人の監督による七作品)それでも生きる子供たちへ』の初回上映に間に合う時間帯だったが、前売券を家に忘れてきており、次善の策を通勤途中で考えた結果、浅草から道中〈長命寺の桜餅〉でも頬張りながら、江戸時代から花の名所として有名だった〈堀切菖蒲園〉まで歩くことにした。
 だが、雲行きが怪しい。局地的集中豪雨の恐れがあると、天気予報で何度も注意を促している。花菖蒲に雨とは粋な演出だが、バケツの水をひっくり返したような雨はさすがに歓迎しない。くわえて、これは偏見なんだけど、京成線と相性が合わず殆ど乗る機会がなかったせいか、どこをどう走っているのかさっぱりわからない。堀切菖蒲園駅から帰り道を考えるのも面倒だと、上野で地下鉄銀座線に乗り換えるために一旦下車したのに、再び山手線に飛び乗ってしまった。
 駒込から旧古河庭園の薔薇でも眺めて、都電荒川線を横目に(レトロ車両も通るかもしれない)飛鳥山公園を散策しても良かったが、このコースは日曜日の「路面電車の日」用に考えていたプランだった。そこで思いついたのが、江戸川公園から神田川に沿って神田上水跡を歩いて御茶ノ水から帰宅するコース。ホームグラウンドといってもいい場所だけど、まだ歩いたことがない。
 題して、「江戸の水を旅する」。小石川後楽園に寄り道すれば、堀切には敵わないけど花菖蒲も見ることができる。なかなか魅力的な散歩コースを発見したかもしれない・・・空はどんより曇っているが、気分は爽快である。


答えは小石川後楽園。花菖蒲が盛りを迎えている。


 出発点を地下鉄=江戸川橋ではなく、都電荒川線の早稲田に定めた。内回りの山手線に乗って、大塚で都電荒川線に乗り換える。いつの間にか、荒川線沿線を彩る薔薇の花に紫陽花が混じるようになっていた。5分ほど待ったのち、早稲田行きの路面電車がやって来た。通勤電車並みに混雑しているのに、それでも乗客減少に歯止めがかからない状況は改善されていないのだろうか? 
 二週間前にも荒川線に乗車したが、大塚から早稲田方面に向かうのは、ほぼ一ヶ月ぶりだ。この区間の車窓風景も魅力的で、特に雑司が谷から学習院下間の下り坂に風情があるから、できることなら運転士の隣に立って、正面を眺めたい。幸い車内が混んでいたため、その位置しか残されていなかった。チンチン~♪


                  

 早稲田から神田川に沿って、〈水とみどりの散歩道〉を歩き出すと、すぐに〈新江戸川公園〉前に出た。細川家の下屋敷がそのまま公園化された。目白台地の斜面と豊富な湧き水を利用して、池と深山の景観に仕立てている。回遊式庭園には、四季折々の花が咲く。なんて解説してるけど、実は全くノーマークの公園でした!
 ところで、江戸川からはかなり離れた場所にあるのに、なぜ江戸川公園と呼ばれているのかというと、このあたりの神田川がその昔「江戸川」と呼ばれていたからだった。昭和40年の河川法改正により神田川に統一されたが、公園の名前はそのまま残されたというわけ。江戸川のルーツはここにあり?


     

 新江戸川公園と関口芭蕉庵(昭和13年焼失。再建されたが戦災で再度焼失・・・)の間に、〈胸突坂〉という坂道好きには上らずにはいられない坂があったので、用はないけど往復した。見た目よりかなりの急坂だ。〈水とみどりの散歩道〉は桜並木の下を歩く。水がより浄化されれば素晴らしい。来年の春は、この道を歩きたくなった。


江戸川公園はウナギの寝床のように細長い・・・

 
 都市計画で最も大事なのが交通(道)や上下水道などのインフラだ。普段は当たり前のこととして使っているが、整備するまでに払われた労力と、今後の維持管理を考えると、自然と頭が下がる思いになる。江戸幕府が開かれ、それまで関東の片田舎だった土地が首都になったが、百万都市にふくれあがった江戸の市民に飲料水を供給するのは大変なことであり、上水敷設の歴史がそのまま江戸と東京の歴史といっても過言ではない。現在、水道に携わる仕事をしていながら、今までそのことを一度も考えたことがなかった。
 江戸川公園のある小石川には、かつて井の頭池を水源とする神田上水をせき止める大洗堰があった。ここで水位を上げて、小石川の水戸屋敷と神田・日本橋方面に給水していたのである。江戸川公園内の遊歩道に、堰の取水口に設けられた角柱が残されている。神田上水は、水質悪化のため昭和8年に取水口が閉鎖された。


                   



 公園内にある神田上水大洗堰の取水口跡と、今でも関口台地から湧き出てくる湧き水。飲んでは駄目と書かれていたが、意外ときれいな水だった。水温はそれほど低くない。江戸川公園は空中庭園とも呼ばれる中空の橋が張り巡らされていて、その一部が滑り台につながっているなど、子供も喜びそうなところだ。藤棚の下のベンチで、鳥の声を聴きながら思い思いのひとときを過ごすのもいいし、遊歩道を散策するのもいいだろう。


      

 鬱蒼とした森と幾重に重なる石垣。近くには高速環状線が走り、大気汚染も懸念されている場所だとはとても信じられないが、江戸川公園の入り口は、高速道路の真下にあった・・・
 井の頭池と、善福寺池・妙心寺池から引いてきた水が大洗堰でせき止められ、水位を上げたところで勢いよく江戸の町中に流れていったように、これから歩いていく。のども渇いてきたので水分補給しようと、公園入口隣りの八百屋で林檎(ふじ)を買った。音羽通りを渡り、巻石通りの入口にあった神田上水の標識(ここで小石川の水戸屋敷に暗渠で分岐)で休憩しながら、林檎をかじった。お腹も空いてきたところだったので、林檎の果肉は一石二鳥の結果をもたらしてくれた。

 いきなりパソコンが落ちて、記事も落ちちゃった。ショックです。ここまで書いたところで、続きは明日・・・