済南市にもあった日本人スナック。
今は、いろんな企業が進出していて、それなりに日本人向けのお店もできているんだろうけれど、当時はほぼ皆無に近かった。寿司なんて話をしても朝鮮の巻き寿司がそうで、日本の寿司なんてのは全然お呼びでない。
さてさて、ちょっとした期待を胸に寒空の中をテクテク歩いていくことに。
夜の風景は、昼と違うこともままあるので、昨日の帰り道を逆に辿っていくと、やっぱりあるもんですね。真っ暗な中にピンクの蛍光灯。昨日明るいうちには全く気づかなかったけれど、ちょっと年のいった元小姐がケバイ化粧をして座っています。済南はこういった商売は市内からちょっと離れたとおりに集中していると聞いたけど、もしかすると、闇営業?
やっと、着きました。スナック東京。
カラオケの音もしないし、あれ?やってないのかな?
ドアを開けても、いらっしゃいませの声もしない。どんどんおくに入っていくと、長髪のお兄ちゃんが一人。
あやや、お嬢さんがいないのかな?
「あ、いらしゃいまし。」ましに聞こえたんだ、ましに。
まるで、文化祭の喫茶店のような造作に一瞬たじろいだが、魅惑のチャイナカラオケの誘いを蹴ってまで、来たのだから手ぶらでは帰れないでしょう。
ママを呼んでもらって、システムの説明を受けます。なになに、ボトルが480元にセット150元?あれえ、上海の普通のところとそんなに変わらないじゃないの。
まあ、いいでしょう。既に次の訪問は日本から数人連れてくることがきまっていたので、彼らのためにも単独で飲みにいけるところを確保しておかなければ。
ボトルが来て、水割りが出来る頃には、女の子が数人顔を出していた。どこにいたんだろ?
女の子の質は・・・・・まあ、済南ですから。どこにでもいる普通の女の子と言って置きましょうかね。
歌を唄えと薦められるのだが、生ならともかく、カラオケで唄うのはあまり好きではないので、丁重にお断りする。
しかし、しつこく唄えといわれるので、普通の歌は聞き飽きたから、誰か民歌を歌えないか聞いてみたところ、
なかでもましな、お嬢さんが、
「あ、私うたえます。何でもいいですか?」というので、
「何でもいいさ。久しぶりに聞いてみたい。」
上海では、カラオケはできないが民歌を歌いますという、友人がいて、物悲しくていい歌が多かった。
「では。」
「カラオケはないの?」
「そんなの、要りません。マイクもいらないわ。」どんな歌だろう?
彼女が歌い始めてぶっ飛んだ。
シンセン辺りで、オペラのような声でうたう歌手のような、朗々とした声で民歌を歌ってくれた。
確かにマイクもいらないし、とうてい素人芸どころの騒ぎではない。玄人はだしの美声。
「上手だねえ。」
「お母さんが昔歌手志望で、小さい頃から歌い方を教えてもらってました。」と彼女。
話をしていても、快活で面白く、すっかり仲良しになってしまった。
これなら、カラオケを蹴飛ばしてきた甲斐があるというもの。たいへんよくできました。
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