鬼才井上ひさし氏が昭和53年(1978年)にリリースした書簡体によるミステリー短編集。
書簡体の作品では、ドストエフスキーの「貧しき人々」や宮本輝の「錦繍」などを思い出すが、この作品の場合、その物語性においても、また、ドラマチックな展開においても鬼才の名に恥じない作品に仕上がっている。
また、当時の時代背景として、特に農村部の暮らしの貧しさが通底していることも見逃せない。
加えて、作家とはどうあるべきかを再認識させられる。それほど説得力に満ちた作品である。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★★)
蛇足:この本は、この記事で知りました。