2021年上半期第165回直木賞受賞作。角川書店、553頁の大作。
目を覆うばかりの凄惨な暴力と殺戮の物語。
物語~メキシコの麻薬マヒアが、対抗するマヒアのドローン攻撃を受け全滅する。生き残った4兄弟の内の3男は、潜伏先のインドネシアで臓器売買ビジネスを立ち上げ、ドナーの供給を日本に求める・・・。
筆者は、この物語の下敷きとなる資料の収集、読み込みと整理にどれだけの時間を費やしただろうか。
その裏付けあっての精緻さなのだが、読んでいて楽しい物語ではなかった。まして、闘病中の小生には刺激が強すぎた。
選者寸評:角田光代氏
「私にとってまったくはじめて読む小説だった。何より膨大な資料を作者がかみ砕いて血肉として小説に与えている。いっさいの感情描写のなされないコシモという青年の、この魅力はなんだろう。この凄惨な小説にちりばめられたうつくしさも、私には見たことのない、触れたことのない種類のものだった。」