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誰も悪くない!スポーツクライミング女子複合課題!

2024-08-14 | スポーツの話題

インターネット上に誹謗中傷が、特にこの夏はパリ五輪絡みで溢れている。それだけ日常に不満が溢れているから、多くの人がその「はけ口」として、他人を攻撃しているのかも知れない。誹謗中傷と一言で済まされるけれど、五輪について言えば、スポーツに対する知識や経験が無い人々からの意見や不満が多いように思えいます。

僕は長年スポーツに携わって来たし、今はボルダリング・ジムに週3~4回足を運ぶ者として、今日はパリ五輪スポーツクライミング女子複合の決勝課題について、少し私見を記そうと思います。この記事はいつも僕のブログを読んで頂いている方に向けてのもので、冷静さをお持ちの方に読んで欲しいものです。クライミング競技に興味を持って、この機会にこの楽しい競技をスタートする人が増えれば嬉しく思います。

僕は柔道4段ですが、格闘技は極論すれば体重の重い人に有利です。だから、格闘技は体重によって階級が分けられています。その対極にある1つがスポーツクライミングで、この競技は体重が軽い人ほど有利です。お近くにクライミングジムがあれば、ぜひ見学してみるといい。運動神経の良さそうな体格の良い若者よりも、女性や子供の方が上級者であることが珍しくないし、170センチを超える大人がスタートさえ切れない課題を、150センチも無い小学生が完登していることが珍しくない。老若男女が等しく楽しめる競技がスポーツクライミングで、だからこそ僕は60を超えても、今後身体が動く限り楽しみ続けようと決めています。

楽しいとは言っても、時には難しい課題に直面します。自分が全くスタートを切れない課題を、子供や小さな女性がクリアするのを見て「体重の軽い人はいいな~」と思うこともあります。逆に彼らは僕を見て、「腕力がある人はいいなとか、身長があるから有利だな」と思うこともあるでしょう。課題によって、それに向いている向いていないがあり、全ての人に有利不利が無い課題などは存在しないと考えます。

五輪で森選手が最初のホールドに手が届かなかった課題があり、それが物議を醸していますが、あの課題が悪かったとは僕には思えません。もし修正する必要があるならば、この競技を身長別・体重別にするべきとなります。課題が適切というなら、154cmの森選手でも攻略可能な登り方を示せという書き込みも散見しますが、その必要はないと思います。あの五輪の場でどうすべきという話ではなく、五輪までに対策すべきだったのです。

森選手の1番の武器は何かといえば、それは彼女の体重の軽さです。そして、あの軽い身体にも関わらず、パワーのある筋肉を持っていることです。五輪で彼女と競った選手たちは、身長がある分有利でしたが、体重をいかに軽くするかに苦労しているはずです。軽い体重・身長が低いことで不利になる課題があることは予想出来ますので、ジャンプ力を鍛えることを、少なくともコーチは助言すべきだったでしょう。森選手のジャンプ力、余りにも弱弱しかった。(どこを鍛えるかは選手の自由。)

上の写真、森選手の左はアメリカのブルック・ラバトゥ選手で、彼女は今回の五輪決勝前に放送で157センチとアナウンスされていました。彼女も小兵ですが、彼女は森選手が得点ゼロに終わった課題を、一撃(1回目のトライ)で完登しましたし、総合で2位の銀メダルに輝いています。写真を見ても分かりますが、競技においても森選手だけが足を出していません。僕は彼女は細い足を見せたくないので、こういう服装で競技を行っているのだと思います。五輪で問題になっている課題は、背の低い森選手に対するいじめでも差別でもなく、体重の軽さを優先して脚力不足で五輪に臨んだ森選手が、こういうこともあると予め予想していた結果ではなかったでしょうか?

正直に言えば、森選手はボルダー競技においては成績が振るいませんでしたが、リードではパリ五輪において世界一だったのです。世界一のリード選手である森選手に対し、ボルダー課題1つが無得点だったことで、その課題が悪いというのは余りにも感情的で、森選手に失礼だと思うのです。問題は今回の五輪スポーツクライミング女子複合が、文字通りボルダーとリードの2つの競技の合計点で争うことだったと考えます。この2つの競技は同じ「登る」という競技ですが、全く違う競技だと考えないといけない。例えて言えば、100メートル走とマラソンくらいの差があるのです。こちらも走るという点では共通していますが、全く別です。

森選手が余りにも凄いリードを見せつけるから、あの森選手が得点出来なかったボルダーの課題を見て、多くの人々がインターネット上にいろんな書き込みを感情的に書き込んでしまったのだと思います。マラソンを圧倒的強さで勝った選手に、100メートルでも勝ってねとは誰も言いません。自分の国の選手に有利に・・・と感情的になるのでは、過去に間違った行いを五輪で行った国や人々と何ら変わりません。

そう考えると、金メダルに輝いた絶対女王と呼ばれるヤンヤ・ガンブレット選手が、それほど身長も高くない(写真1番左)のに、ボルダー1位、リード2位(森選手と予選は同点、決勝は僅差)だったのは驚異的です。彼女なら男子と争っても上位に食い込むことが出来るでしょう。

こういう、それなりの経験者であれば分かっていることでも、敢えて自分が炎上することを望まないが故に、SNSで正しい知識を怒れる人々に向けて発信する人が少ない。人それぞれいろんな考えがあるので、経験者にとっては当たり前でも、一般の人にとっては非常識に思えることがあっても当然です。でも、今は怒っているSNS利用者たちが熱が冷めた時にでも、「言われてみれば一理あるかも・・」と思ってくれることを信じ、スポーツ関係者はSNSで発信すべきだと思います。

日本のお家芸である柔道だって、柔道着に1度でも袖を通した日本人がどれだけいるのか、スポーツクライミングという競技を1度でも経験したことがある人がどれだけいるのか?何事もやってみないと分からないこと、知らなければ分からないことはあり、やってみたり知ることで、意見が変わることもあると思います。

岸田総理が退陣表明をしましたが、自由民主党は本当に変化し、我々一般大衆に寄り添う政治を行ってもらいたい。今のでたらめな政治が続けば、日本においても暴動が起きかねない。昔の日本人と今の若者は違う。政府は国民感情を読み違えないでもらいたい。日本の政治家が襟を正し、正しい政治を行い、日本の社会を改革して行けば、ネット上での誹謗中傷行為も少なくなると僕は考えます。

人は全員が平等な訳が無い。生まれた瞬間、生まれた家の経済状態も違う。身長の違う人、肌の色が違う人、いろんな人がいる。でも、努力が必ずしも報われなくても、ある程度日本に住む我々が許容できる社会にしてもらわないと、リアル社会で虐げられて発言力も無い人ほど、ネットで他人を貶める発言をしてしまうのでは無いでしょうか。人はまず努力して自分が頑張ろうとします。しかし、それが叶わないとなれば、他人を引きずり落そうと考える人も出て来ます。自分が上に上がるよりも、他人を落とす方が簡単だからです。恐ろしいことです。