青春タイムトラベル ~ 昭和の街角

昭和・平成 ~良き時代の「街の景色」がここにあります。

エリック・クラプトン ~2009. 2.15 日本武道館

2009-02-21 | 素晴らしかった興行・イベント

武道館のレポートなのですが、21日、22日のさいたまスーパーアリーナがどういうものになるのか?それが今の僕の最大の関心です。

今回のエリック・クラプトンの来日コンサート。僕は結構がっかりしました。従って熱烈なファンの方は、この先を読まずに、今日はスルーして下さい。どんなクレームも受け付けませんので。本当かな?と思った方は、2月25日の日本武道館公演が、WOWOWで独占放送(3月15日夜6時)されますので、それを見ればなるほどと思われるのではないでしょうか?自分の目で確認することが大切だと思います。

本当に読後に不快になられても、苦情はサクッと削除させて頂きますので、クラプトン命的な盲目的ファンの方は読まないで下さいね。

1974年秋に実現した記念すべき初来日公演(僕は大阪で観ました!)から数えるとちょうど35年!そして、ヤードバーズ、ジョン・メイオール・ブルースブレイカーズ、クリーム、ブラインド・フェイス、デレク・アンド・ザ・ドミノス、そしてソロ活動と、ブルース、ロックシーンの最前線で活動してきて45年!「偉大な歴史の全てを見せるレジェンド・ライブ」と銘打たれた(あ~長っ)今回の来日公演。果たしてそれだけのキャリアの集大成と言えるのでしょうか?

例えば悪いですが、どんな曲を発売しようが1位になるジャニーズの歌手のレコード。それと同じようにクラプトンをアイドル化して見ている方は、行かれてご満足かも知れません。しかしこれまでの何度も行われて来た彼のコンサートを見て来たファン方、初めて彼のコンサートに行かれた方には、「これがクラプトン?」という初来日時にも似た感想を持たれたのではないでしょうか?年齢からの衰えか、かつてのように全曲を弾くことがない。小さなミスもやってしまう。彼の往年のギターを知る者には、寂しいステージでは無かったか?クラプトンだからこそ、勿論私の期待するハードルが、他のミュージシャンと違って高いことは言うまでもありません。

S席-11,000円/A席-10,000円/B席-9,000円というコンサート料金はハッキリ言って高い!クラプトンの知名度と、動員を見込むファンの所得層を考えれば売れると見込んだ値段です。これだけ円高が進んでいるのに、毎回の値上げ。一体どうなっているんだと言わざるを得ない。円高差益の還元も何もあったものではない。コンサート途中の雰囲気も、若い女性ファンは退屈そうにしている。ブルースを演奏しているからではない。歴史の全てを見せるレジェンド・ライブという宣伝文句に、偽りがあるからだ。初来日、彼はファンを無視するようなコンサートをやってのけたが、35年目は、ファン不在の演奏曲を並べて聴かせたと言っても過言ではないと思う。



待ち合わせのホテルのカフェ。彼を待つことはほとんどない。アメリカ人は時間にルーズなところがあるが、僕の友人は時間にはうるさい。僕もそうだけど、時間に遅れたら待っていないということもある。彼はイギリス人なので、時間にキッチリしているので助かる。待ち合わせの30分前くらいには姿を現してくれるので、緊張することもなく自然とそこにいたのかという感じで話に入っていける。いつものことだけど、カプチーノを注文して話始める。彼も63歳。

武道館初日15日は、午後4時開場、午後5時開演。2年ぶり18回目の来日公演。74年10月に武道館で初来日公演を行って以来、同所でのライブは今回の28日までの7公演を加えると計77回になる。しかし今回は、日本武道館の前の人の群れが少なくなったと感じました。逆に販売されるグッズは昔に比べたら増えました。

演奏が始まれば、クラプトン・ワールドに浸れるかと思ったのですが・・・。白いシャツにスカイブルーのストラトで登場した後は彼の独壇場。しかし無難な曲目だ。演奏は当然のように全体的にまとまっていて、どの曲も及第点以上の出来でした。途中PAが、バリバリとノイズを発したのはあくまでもアクシデント。アコースティック・ギターでの「Running On Faith」は素晴らしい演奏でした。曲ごとにギターを変えていく演奏。武道館がギターの博物館に。

しかし大阪で2日目から外した「Motherless Child」を復活させる意味が分からない。「Before You Accuse Me」を入れて来たのは良かったと思いますが。2日目に消えた、ジョージ・ハリスンの「Isn't It A Pity」も嬉しかった。気に入った点はドラマーのエイブ・レボリアル・ジュニア(ポールのバンドの巨体のミュージシャンと言えばお分かりかと思います。)です。昨年の夏からクラプトンのバンドに参加していますが、ポールのバックにいる時とは違った、繊細かつパワフルなドラミングは文句のつけようがありません。クラプトンが敬愛するジミー・ロジャーズの渋いブルース「That's All Right」も悪いとはいいません。

つまり1曲1曲には歴史もあれば、それなりなのですが、それはあくまでもコアなファンから見た風景。クラプトンの特にファンでもない、このブログの読者がこの日のセットリストを見て行こうと言う気になるかどうかが問題なのです。恐らくコンサートに行かれた方々は大抵、良かったというコメントをブログに書くでしょう。無難でしたという人は結構なファンです。悪かったと書くのは勇気が要りますから。

「White Room」「Sunshine of your Love」「River of Tears」「Tears in Heaven」「Change the World」「Circus」「Badge」「Let It Rain」「Just like a Prisoner」「Holly Mother」「After Midnight」も無い。意表を突く様な「Home Boy」「Danny Boy」「I've Got a Rock 'n' Roll Heart」「I Can't Stand It」「Hold On」「Forever Man」も演奏は無し。エイブ・レボリアル・ジュニアがいるのに、「Hold On」「Forever Man」を叩かせないのはもったいない。アップテンポな曲での彼のドラミングを聴いてみたかった。武道館での今回の演奏曲なら、イントロを聴けばすぐに分かる、ブートでもお馴染みの無難な曲を並べているだけなので、眠たくなりました。

この日の会場には、既に大阪のブートが出回っている。恐ろしや・・・商魂。

友人の行った大阪では、レイラ演奏ミスというまさかがあったとか。

いくらブルースがクラプトンの真骨頂だと言っても、では武道館のお客様はこの日のセットリストの曲の意味を全曲言えるのか?そこなんです!日本人は英語が苦手。でもクラプトンのサウンドは好き。アンプラグドで好きになった。そういう大多数のファンが占めるというマーケティングは出来ているのですから、大枚をはたいて呼ぶなら、日本仕様の曲を並べてこそのプロモーターなのではないでしょうか?そういうコンサートから「あの曲は何だったのだろう。聴いてみたい。」と、ブルースファンを開拓していくのがミュージシャンではないでしょうか。

「英語が分からなくても、River of Tearsを聴いて、眼が涙に溢れたというファンもいる。でもKey To The Highwayを聴いて涙する人は見たことが無いんだ。大勢のファンが毎日詰めかけているけど、ほとんどの人が歌詞を分かっていない。その場にいる嬉しさと、めったに無い生の音楽に触れることに感動するんだ。だったら、もう少し誰もが口ずさめるメロディの曲。ヒット曲の数を増やしてもいいと思う。少なくとも日本では。」

「そうだろうか?日本のファンは音楽も格闘技も、言葉がなくてもいろんなことを理解していると思う。」

「それではどうして、もっと英語でMCをしないのですか?Thank youだけじゃないですか?コミュニケーションが難しいと思っているの?ポール・マッカートニーは同じ日本でも東京と大阪では言葉を使い分けたんですよ。“こんにちは“と“儲かりまっか”に。意味は同じでも全く違う言葉。それで彼は一瞬で観客を、掌に乗せることに成功したのです。」

だから今回のツアーは、チケットがSOLD OUTになっていないという事実があるのです。当日券を求めた人に、「プラスいくらでこの席になります」なんてことが起きる。「会場を前から埋めたい。見栄えを良くしたい」と言う行動を主催者が取ったりするのです。これでは今回が最後の来日となり、来日コンサートは、最初の年と最後の年が、お粗末だったとなりかねません。2006年末に来日した時と構成はほぼ同じ。何曲か入れ替わったといった感じのセットリストは、決して主催者の宣伝文句にあったようなヒストリーコンサートではなかったのです。ここが1番ひっかかる所です。「ヒストリーコンサート」を求めた人はサイレント・カスタマーになり、帰って来ないかも知れません。S席でも2階のスタンド席もあるし、もし家族4人でファンが来たとして、44000円を取れる内容だったとは私は思いませんでした。

事実、今回のクラプトンのコンサートに行きたい!と熱望していた、一般的な女性ファンに今回の大阪のセットリストを見せたところ、彼女が知っていたのは「Running On Faith」「Wonderful Tonight」「Layla」の3曲だけ。他のブルースを聴かせたら退屈・・・と。(苦笑)3曲で11000円はもったいないから、行くのは止めた方がいいよとアドバイスしたものです。普通の人にこの金額は高価過ぎます。

プロモーターに対して要望するなら、ジェフ・ベックのコンサートの日程をずらせば、ロッド・スチュワートとベックの共演も実現し、「People Get Leady」を日本のファンにプレゼントすることも出来た。ベックとクラプトンの共演も、それぞれのコンサートのチケットを発売した後に発表している。全てのチケットを捌くには有効だが、ファンにすれば「それなら、武道館を止めて埼玉を買ったよ!」という気持ちにもなる。ファン全てが富裕層ではないし、そういう人にだけ来てくれればいいと言う姿勢なら、クラプトン初来日のコンサートで「金返せ」コールを我慢した大阪のファンは怒りますよ!(何せ大阪のファンは熱いのですから。プロレスなんて暴動寸前の金返せコールが当たり前。警察が出動する騒ぎまで起きているのですから。)

もっとフェアな発表、適切な価格のチケット、もしくはクラプトン、ベック、ロッドを上手く使うプロモーション、交渉が行えなかったのかということ。これだけの円高で、外タレの興業は思い切り黒字のハズなのです。高い年齢層ばかり狙ってプロモーションしていたら、若い人にCDは売れない(年寄りは持っている)し、コンサート離れが起きます。チケットの価格をいい加減に内容相応のものにするべきでしょう。来日したバンドのメンバーは少ないし移動費も掛からないし。いくらでもファンに夢を与える材料は整っていたはずなのです。クラプトンによると、日本の音楽事務所の社長は「サムライと言える人物」だそうですが・・・。「こんなとてつもない仕掛けを日本でやったぞ!」と、世界にアピールしようというくらいの意欲がプロモーターに無いのが残念です。

1987年や93年のコンサートが懐かしい。あの時は私も楽しんだし、初めて行く友人も興奮して翌日には数枚のCDを購入していた。今のように眠そうにしている観客はいなかったと私は思う。

クラプトンは、いつも秋から冬に日本に来日する。それは実は彼が暑いのを嫌っているからだ。日本特有の梅雨のシーズンを好きな外国人はいないだろうが、彼は暑い季節には日本に来ない。それは汗だくでギターを弾く姿を見せたくないからです。人生の秋から冬に入って行くクラプトンが、再び来日し、彼のヒストリーを聴かせてくれるチャンスは、まだ残っているのだろうか?そうあることを願って止みません。

 

武道館ライヴ・セットリスト / 15th February 2009

01. Tell The Truth
02. Key To The Highway
03. Hoochie Coochie Man
04. I Shot The Sheriff
05. Isn't It A Pity
06. Why Does Love Got To Be So Sad
07. Driftin' (EC Solo Blues)
08. Travelin' Alone
09. That's Alright
10. Motherless Child
11. Running On Faith
12. Motherless Children
13. Little Queen of Spades
14. Before You Accuse Me
15. Wonderful Tonight
16. Layla
17. Cocaine
Encore:
18. Crossroads