しげる牧師のブログ

聖書のことばから、エッセイを書いています。
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朝の露 Ⅱサムエル22章 <生涯の歌>

2020-06-23 | Ⅱサムエル記

「私は苦しみの中で主を呼び求め、わが神に叫んだ。主はその宮で私の声を聞かれ、私の叫びは御耳に届いた。」(Ⅱサムエル22:7新改訳)

これはダビデの生涯を総括した歌ともいうべき詩篇である。しかも「サウルの手から救い出された日に歌った」とあるのが印象的だ(1)。▼サウルはダビデに対し、ねたみ深く、冷酷、卑劣であり、生涯、不倶戴天の敵であり続けた。いったいダビデは何度、彼によって絶体絶命の立場に追い込まれたことであろう。しかし同時に、サウルがいたからこそ、珠玉のようなダビデ詩篇が生まれたともいえる。悪魔のような憎しみをもってサウルは彼を追い回し、ユダの荒野に、砂漠の洞窟に、水無き岩場や死の陰の谷に、最強の部下を引き連れて追い迫ったが、ダビデは天の聖所に向かって涙の叫びをささげた。ただ、自分を王として選んだ神に訴えること、それができるすべてであった。ダビデ詩篇はかくして産み出されたのだ。▼彼の子孫、キリストもそうであられた。ご自分を死から救い得る方に涙と叫びをもって祈り、その敬虔さのゆえに聴かれたのである。