酒のさかな

平凡な笑市民が日ごろの暮らしの中で出会ったこと
【縦横無尽探険隊別館】

親父の入院 4

2006-06-15 22:18:55 | のほほん日記系
【8日目】朝、ベッドに拘束衣とベルトでくくりつけられていた。
私に気づくなり、「ハサミ持って来い!」と興奮して叫び暴れる。
縛られているのが苦痛らしく手のベルトを切ろうと思っているようだ。
本人には入院している認識がないので、苦痛は当然かもしれない。なんとかなだめて仕事に行く。その後、母にも「カミソリ持って来い」と暴れたらしい。
今朝は私や母のことを認識しているようだ。
夕方様子を見に行った。
ベッド横の床にマットを敷き、親父が寝転んでいた。
『どうね、具合は?』
「ちょっときついが、まあいい。明日は帰る」
『帰られんさぁ、まだ。ちゃんと怪我治さんと』
「ちょっと便所・・・」
『おいおい、立ったらいかん。ちょっと座らんね』
「自分で行ききる!」
突然立ち上がり、便所に行こうとする。Drと2人で支えてなんとか床に座らせる。
看護師が飛んできて、尿容器で排尿させることになる。
「もう救急状態ではないので転院等を考えてください」とDr
『一般病棟でもこの状態ならずっと付いて見ておかないといけないですよね』
「そうですね。せっかく良くなってきたのに転倒でもしたら元も子もないですから」
『病院の都合もわかりますが、この状態での付き添いはとても困難です。本人が病院に入院している認識がでればいいのですが』
「まぁ、今日明日のことではないので様子を見ましょう」
この状態で歩き回ろうとする親父を、高齢の母の付き添いで抑えきれるとは思えない。
・・・ストレスで吐き気がしてきた。

【9日目】朝は眠っているとの連絡があったので、夕方のみ。
「まだ、雨ふりよるね?」
『うん、まだ降ってる。具合どうね?』
「今日はちょっときつい。病気して申し訳なか」
『病気はちゃんとおとなしくしてると治る。寝とかんばよ』
「はいはい、寝とく。」
今日は病気で寝ていることは認識しているようだ。暴れない分、進歩。
(入院や場所はわかっていない様子)
ちなみに私の嫁さんを小4の孫と誤認して話しかけていたという。
・・・夜、トイレに行った私は急に貧血になりはいずって動けなくなった。
ここにきて疲れがたまっているのだろうか。

【10日目】朝、目を覚ましていた。
『起きとった?どうね調子は?』
「ちょっときつか。病気のひどかとやろぅ」
『病気じゃなく、怪我しとると。それで入院してるからおとなしくしてたら治る』
「怪我?なんの怪我か?怪我はしとらんぞ」
『まぁいい、あと少しで普通の病室に行ったらテレビでも雑誌でも見れるから』
「うん、わかった。もう行っていいぞ」
入院してるのはなんとなくわかったのだろうか。
本人の兄が見舞いに来たことも認識していた。(その時はおそらくわかっていなかったはずである)
不思議なことに、その時は認識できていなかったことを今ちゃんと覚えているらしい。
夕方、会話の中では記憶の混乱が目についた。
「どこに住んどったっけ?」と私の住所はわからない様だったし、中1の娘のことを「どこに勤めよったかね。まだ大学生やったっけ」と聞く。
あげくに、小4の娘は「だれ?」と存在しないことになっていた。
嫁さんが見舞いに来たことを口にしたが、HCUに入ることのできない娘のことを「一緒に見舞いに来てくれた」と言い張っていた。
夜、妹から「初めて私をわかったよ」と電話がかかってきた。