【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「チェ 39歳別れの手紙」:品川車庫前バス停付近の会話

2009-02-04 | ★品97系統(品川駅~新宿駅)

ずいぶんピントのぼけた光景ね。
チェ・ゲバラが殺されるときの視覚ってこんな感じだったのかもしれないぜ。
意識が遠のいていくときのチェの目線ね。でも、「五十三次」なんて見えてなかったと思うけど。
あのねえ、俺が言いたいのは、死の間際の眼の感覚だよ。視覚がどんどんぼけていく。
でも、「チェ 39歳別れの手紙」を観ると、彼は小屋の中で殺されたみたいけど。
そう、虫けらみたいにな。
革命のカリスマなのに、まったくいいところがないまま、あっけなく殺されちゃった。
チェ 28歳の革命」はキューバ革命が成功するまでのチェを描き、「チェ 39歳別れの手紙」はその後ボリビアでの革命が失敗するまでのチェを描いた映画だから、明暗が分かれるのは予想していたけど、二本の映画でここまではっきりと光の部分と影の部分を描き分けるとは思わなかった。
乱暴に言えば、「28歳の革命」は光の部分だけ、「39歳別れの手紙」は影の部分だけ。
ボリビアへ行った当初は新たな希望と興奮に満ちていたはずなのに、そんな描写もなく、「39歳別れの手紙」は最初から最後まで負け戦を戦っているような悲壮感だ。
アメリカン・ニュー・シネマの名作「明日に向って撃て!」では、ボリビアはブッチとサンダンスの最後の憧れの大地としてあったのにね。
見よ、「28歳の革命」のハツラツとしたチェと「39歳別れの手紙」の疲労こんばいしたチェの落差!
二本で一本の映画だと考えれば、革命の英雄の栄光と悲惨でわかるんだけど、「39歳別れの手紙」だけ観ると、なに、この人?と思っちゃうんじゃない?
哀れな落人。リアリズムで押そうという姿勢はわかるけど、もうちょっと話に起伏があってもよかったな。
実際、いろいろなエピソードがあったはずだしね。
「別れの手紙」という日本題名がセンチメンタリズムを誘うんだけど、実際の映画にはそういう側面がほとんど描かれない。
そのストイックさは、「28歳の革命」も同じで一環しているけど、ここまで徹底するとは思わなかった。
映画の中のチェは「薬を持ってこなかったのが最大の失敗だった」とか淡々と語っているけど、実際はそれ以上の感慨がいろいろあったはずだ。
ゲバラの実像を知っている人には興味深い映画だったかもしれないけど、私たちにはちょっとストイックすぎたわね。
比べちゃいけないかもしれないが、日本の「連合赤軍 あさま山荘への道程」とか観ると、革命が変節して挫折していく過程が手に取るようにわかる。
あそこまで丁寧でなくてもいいけど、映画としてはもうちょっと見せ場がほしかった。
彼が何を感じ、どう挫折していったか。俺たち、ノンポリにもわかるような見せ場がな。
ノンポリ?これはまた、カビの生えたことば。あなた、何歳?
お前こそ、さっき「明日に向って撃て!」なんて話題にして、何歳だよ。
この映画は「39歳別れの手紙」よ。
はぐらかすな!



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