【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「クライマーズ・ハイ」:門前仲町バス停付近の会話

2008-07-05 | ★門33系統(豊海水産埠頭~亀戸駅)

俺って、こういう赤い成田山の門とか見ると、なんかこう心がウキウキしてきてハイな気分になってくるんだよなあ。
どうして?
成田山だけに、クライマーズ・ハイになるのかな?
うーん、それは“山”ちがいだと思うけど。
映画の「クライマーズ・ハイ」に出てくる新聞記者たちだって、みんなが山に登るわけでもないのに、ハイになってたぜ。
日航機墜落事故っていう世紀の大事件に遭遇すれば、新聞記者なら誰だってハイになるわよ。それに堕ちたのが御巣鷹山だし。
日航機事故そのものをテーマにした映画というより、日航機事故を取材する地元新聞社の社員たちの有様をテーマにした映画だったな。
「突入せよ!」があさま山荘事件そのものをテーマにした映画ではなく、あさま山荘事件に遭遇した警官たちの有様をテーマにした映画だったのと同じ構図ね。
監督がどちらも同じ原田眞人だからな。
「突入せよ!」は、「どうだ、警官たちの生態、おもしろいだろう!」という監督のしたり顔ばかりチラチラして、なんか事件に対する謙虚な姿勢が感じられなくていまひとつ乗れなかったんだけど、「クライマーズ・ハイ」はおもしろさを狙ったというより、事件に対する姿勢も含めて人間ドラマをじっくり描いていて堪能したわ。
ほぼ、新聞社の内部が舞台だからな。ベテラン幹部と若い記者の対立、販売と編集の対立、社長と社員の対立、様々な対立が事件を契機に噴出する。
その中心にいるのが、日航機事故の全権デスクに指名される堤真一。中央紙に対する地元紙の意地を見せようとするんだけど、社内で様々な障害に遭う。
新聞ができあがるまでの裏側のドラマを見せられているようで見いっちゃったな。
新聞記者って、ほんとにあんなに年中怒鳴りあっているのかどうか知らないけど、あそこまでやられると、ことばの格闘技を見ているような興奮に陥っちゃうわよね。
アドレナリン出っぱなし。映画の編集も、スポーツシーンを撮るように、やたらシャープだった。
だけど、1985年の話でしょ。80年代って、あんなに通信手段がなかったっけ?
御巣鷹山に登ったはいいけど、記事を社に送る手段がなくて、山を降りて電話をさがしてようやく送ったけど、締切に間に合わなかったなんてエピソード、いまじゃ考えられないもんな。
もう一昔も二昔も前のできごとになっちゃったってことね。
歴史上のできごとになるのを嫌ってか、ところどころいまのエピソードも出てきて、現在との間をつなげようとしている。
堤真一が親友の息子と谷川岳に登るエピソードでしょ。親子の関係につなげようとしているんだけど、なんか中途半端。あれ、必要なのかな。当時のできごとだけで、じゅうぶん映画は成立しているんじゃないの?
映画にちょっと文学的な雰囲気を与えたかったんじゃないのか。
たしかに、横山秀夫の原作は、題名通り、山登りが結構な要素を占めていたけど、映画も踏襲する必要ないんじゃないの?
どっちがいいのか、DVDになったら現在のエピソードをカットした版も特典で入れてもらって比較してみたいな。
あ、それ、いいかも。なんか2倍楽しめそうで、気持ちがワクワクしてきたわ。
おっ。おまえもなったな、クライマーズ・ハイ。



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ふたりが乗ったのは、都バス<門33系統>
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