Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ラザレフ/日本フィル

2018年05月19日 | 音楽
 日本フィルの第700回定期。わたしが定期会員になったのは1974年の春季からだが、それは第何回だったのだろうと、同フィルのホームページを見てみたら、第259回だった。それから400回以上も聴いてきたわけだ。

 第700回定期はラザレフの指揮。この記念すべき定期は、やはりラザレフでなければならないと、そう思う。日本フィルの中興の祖。日本フィルを建て直した恩人だ。

 1曲目はプロコフィエフの「交響的協奏曲」。チェロ独奏は日本フィルのソロ・チェロ奏者の辻本玲。堂々たる演奏だった。日本フィルの一員としてラザレフの薫陶を受けた(そして今も薫陶を受けている)身ではあるが、御大ラザレフを向こうに回して、少しも臆することなく、自己の主張を展開した。

 日本フィルとしても、記念すべき定期を、楽員をソリストに据えたプログラムで飾ることができたことは、オーケストラとして成長したという意味で、喜ばしいにちがいない。

 2曲目はストラヴィンスキーのメロドラマ「ペルセフォーヌ」。そんな曲があったのか、というのが正直なところ。ナクソス・ミュージック・ライブラリーを覗いたら、アンドレ・クリュイタンス指揮パリ音楽院管弦楽団のCDとケント・ナガノ指揮ロンドン・フィルのCDが所収されていたので、事前に聴いてみた。

 両者の比較では、クリュイタンス盤のほうに惹かれたが、ラザレフ指揮日本フィルの演奏は、録音と実演という決定的な違いを考慮しても、音のニュアンスの豊かさ、ドラマの進行に伴う音色の変化、そして全体のメリハリのある構築感という点で、クリュイタンス盤を凌駕していたと思う。

 晋友会合唱団のハーモニーの透明感とフランス語のディクションの柔らかさは特筆もので、この演奏に華を添えた。東京少年少女合唱隊も健闘。テノールのポール・グローヴズは高音が頻出する(困難であろう)歌唱パートを情熱的に歌った。ナレーションのドルニオク綾乃は、自然な語りが好ましかった。前述の2つのCDでは、フランス語の詩の朗読で時おり耳にするような、物々しい、身振りの大きい語りが、今となっては古めかしく感じられたので、今回はどうかと、内心、戦々恐々としていた。自然な語りにホッとした。ただ、PAのエコーが過剰だったような気がするが。

 この隠れた名曲の、後世に語り伝えられるような名演は、ラザレフからの贈り物だったように感じる。
(2018.5.18.サントリーホール)

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