Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

MUSIC TOMORROW 2022

2022年07月02日 | 音楽
 N響恒例のMUSIC TOMORROW 2022。今年は直前になって外国人演奏家の来日中止が相次いだ。そのため、後述するように、曲目の一部が中止され、またソリストが変更された。それでもよく開催にこぎつけたものだ。

 1曲目はドイツ在住の作曲家・岸野末利加(きしのまりか)の「What the Thunder Said/雷神の言葉」(2021)。独奏チェロをともなう曲だ。独奏チェロはケルンWDR交響楽団(旧ケルン放送交響楽団)のソロ・チェロ奏者のオーレン・シェヴリン。

 題名の「What the Thunder Said」はT.S.エリオットの詩「荒地」からとられている。岸野末利加は「スペイン風邪と第1次世界大戦で荒廃した当時のヨーロッパで書かれた美しい詩は、100年後の今、パンデミック、気候災害、人種、宗教、経済の様々な問題を抱える現在の世界の状況を映しています」と書いている。

 チェロとオーケストラが激しく疾走する曲だ。題名のゆえだろうか、閃光がひらめき、雷鳴がとどろくような音型が頻出する。それがおさまったところで終わる。本作は今後書かれる予定のチェロ協奏曲の第1楽章になるという。とすれば、第2楽章以下はどんな展開になるのだろう。

 2曲目はシェヴリンのチェロ独奏でフランコ・ドナトーニの「Lame」(1982)。当初はプログラムになかった曲だ。ピアニストのフランソワ・フレデリック・ギイが来日直前のPCR検査で陽性になり、来日中止になった。それにともないトリスタン・ミュライユの「嵐の目」(2021)が演奏中止になった。その代わりか。曲目解説の紙片もなかった。急場のあわただしさが察しられる。

 3曲目は細川俊夫のヴァイオリン協奏曲「ゲネシス(生成)」(2020)。独奏予定のヴェロニカ・エーベルレが4日前に体調不良で来日中止になった。そこで3日前に独奏者をN響のゲスト・アシスタントコンサートマスターの郷古廉に代えた。固唾をのんで演奏を見守った。集中力のある立派な演奏だった。本作品は雄弁な傑作だ。語り口のうまさは大家の風格だ。途中で独奏ヴァイオリンとフルート、そして次にチェロとの掛け合いがある。そこから先は音楽が一層深まり、神秘的ですらある。

 4曲目は西村朗の「華開世界」(かかいせかい)(2020)。細川俊夫のモノトーンで北方的な音楽にたいして、本作品はカラフルで南方的だ。西村朗がオペラ「紫苑物語」の後に書いた意欲作だ。本作品は昨年のMUSIC TOMORROW 2021でも演奏された。今年は指揮者が杉山洋一からイラン・ヴォルコフに変わったせいか、演奏が一段とシャープになった。
(2022.7.1.東京オペラシティ)

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