Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

旅行日記1:ストリート・シーン

2014年02月13日 | 音楽
 クルト・ワイルの「ストリート・シーン」。このオペラはナチスを逃れてアメリカに渡ったワイルが、「アメリカのオペラを作る」といって書いたオペラだ。

 もっとも、アメリカのオペラというなら、すでにガーシュインの「ポーギーとベス」があるわけで、なにもこれが初めてではない。でも、こういうことはいえると思う、「アメリカのオペラは『ポーギーとベス』だけではない。もう一つ、『ストリート・シーン』がある」と。

 もっとも、これがワイルによって書かれたことには戸惑いを感じる。ジャズやブルースを取り入れたこのオペラと、ベルリン時代の「三文オペラ」や「マハゴニー市の興亡」とは、どのようにつながるのだろう。

 でも、ベルリン時代のワイルは――少なくともわたしのイメージは――ブレヒトの‘色’で塗り固められているのかもしれない。一旦その‘色’を脱色すれば、そこには高度に職人的なワイル――その場に合わせてどんな語法でも書けるワイル――という‘実像’が浮かんでくるのかもしれない。

 そういうことを考えながら、このオペラを観た。これは「ポーギーとベス」よりは薄味かもしれないが、感動的で、かつ楽しいオペラだ。場所はニューヨークの貧民街。といってもハーレムではない。ドイツ人やイタリア人やスウェーデン人がいる人種の坩堝だ。もっとも、黒人はいなかった。ひょっとすると「ポーギーとベス」を意識してその向こうを張ったのかもしれない。

 そんな街の安アパートの住民たちが登場人物だ。物語はすべて路上で起きる。「ストリート・シーン」という題名のゆえんだ。

 今回の演出では場所を体育館のなかに置き換えていた。体育館で寝起きする人々。その情景は、我われ日本人の目から見ると、どうしても東日本大震災後の避難所生活を連想してしまう。でも、ドイツ人にはその心配は無用だ。

 舞台がシャボン玉でいっぱいになるシーンや、バスケットボールのチアリーダーが舞台を飛び回るシーンなど、楽しいシーンが続出する演出だった。

 演出はBernd Mottl。オペラだけでなく、オペレッタやミュージカルも演出する人のようだ。指揮はBenjamin Reiners。この劇場の第1カペルマイスター。歌手は専属歌手が主体だが、一部はゲスト歌手、そしてまた歌って踊れるミュージカル歌手も招いて、この珍しいオペラを元気いっぱいに上演した。
(2014.2.5.ハノーファー歌劇場)

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