Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ルーヴル‐DNPミュージアムラボ

2009年08月01日 | 美術
 ルーヴル美術館と大日本印刷(DNP)の共同開発プロジェクト「ルーヴル‐DNPミュージアムラボ」の第6回展が始まった。題名は「1800年前、エジプトに生きた女性たちの肖像」。
 展示作品は紀元2世紀のローマ帝国支配下の古代エジプトの肖像画3枚。当時は生前に肖像画を描き、没後、ミイラにした遺体に取り付ける習慣があったとのこと。

 構成は、今回も最初に「展示室」で作品を鑑賞し、次に「シアター」で映像による解説をみて、最後に「情報スペース・ホワイエ」でIT技術を駆使したさまざまなシミュレーションを体験する仕組み。映像もシミュレーションも、前回より突っ込んだ内容になっていて、スタッフの意気込みが伝わってくる。ざっと一回りしただけで、今まであまり馴染みのなかったエジプト美術がすこしわかったような気になるのは、さすがのテクニック。

 入場は無料。完全予約制なので、ホームページか電話で予約する。場所はJR目黒駅または五反田駅から徒歩10分くらい。会期は12月19日まで。

 http://museumlab.jp

 さて、あとは余談。実は私は、展示作品3枚のうちの1枚(頭を右に傾けた、あごのとがった女性の肖像画)を以前みたことがある。そのときの話を――。

 2008年5月の連休中にドイツに行って、オペラをみるためにケルンにいたら、地下鉄の構内で「パウラ・モーダーゾーン=ベッカーとエジプト・ミイラの肖像画」という展覧会のポスターをみかけた。
 パウラ・モーダーゾーン=ベッカー(1876~1907)はドイツの女性画家で、表現主義の先駆けとされている。以前からひじょうに気になっていた画家なので、日中の空き時間を利用して、会場のルートヴィッヒ美術館を訪れた。
 会場に入って、アッと驚いた。パウラの絵とエジプトの肖像画(そのうちの1枚が上記のもの)が交互に並べて展示されていた。両者の共通性は明らかだった。

 上に貼り付けた図像↑はそのときのもの。左がパウラの自画像、右がエジプトの肖像画。大きく見開かれた目は、よく似てはいないだろうか。

 また、余談の余談になってしまうが、パウラ・モーダーゾーン=ベッカーと精神的に深く結びついていた男友だちが、詩人のリルケ。パウラが31歳の若さで亡くなったときに、パウラを悼んだリルケは、長編詩「ある女友だちのためのレクイエム」をかいた。
 堀辰雄の小説「風立ちぬ」の最後には、リルケのその詩が引用されている。パウラと日本の意外な結びつき――。
(2009.07.30.ルーヴル‐DNPミュージアムラボ)

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