Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

高関健/東京シティ・フィル

2023年09月02日 | 音楽
 高関健指揮東京シティ・フィルの定期演奏会。冒頭に先日亡くなった飯守泰次郎さんの追悼のためにワーグナーの「ローエングリン」から第1幕への前奏曲が演奏された。月並みではない選曲に指揮者とオーケストラの気持ちがこもる。

 追悼演奏終了後、1曲目はリゲティの「ルーマニア協奏曲」。何度か聴いた曲だが、久しぶりのせいか、おもしろく聴けた。第1楽章冒頭の弦楽器の厚みのある音から東欧情緒が広がる。第3楽章の舞台上のホルンと舞台裏のホルンとの応答は、ベルリオーズの幻想交響曲の第3楽章のイングリッシュホルンと舞台裏のオーボエとの応答を思わせる。リゲティの場合は茫漠とした草原の広がりを感じさせる。第4楽章にもホルンと舞台裏のホルンとの応答がある。それを忘れていた。そうだったのかと。

 2曲目はリゲティのヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏は特別客演コンサートマスターの荒井英治。当夜の呼び物のひとつだ。高関健のツイッター(エックス)ではリハーサルの初日から荒井英治が参加し、入念な譜読みを進めたことが記されている。聴衆はそれを読みながら本番にむけての気持ちが高まる。

 高関健のプレトークで想像を絶するリズムの細かさが語られた。わたしにそれが聴きとれるわけではないが、独奏ヴァイオリンだけではなく、オーケストラの各パートを聴くうちに、奏者は平気な顔で演奏しているが(そう見えるが)、神経をすり減らして演奏しているのではないかと(少なくともわたしだったら胃が痛むだろうと)思われた。

 ともかく独奏ヴァイオリンともども、正確な譜読みの演奏だ。多くの方々がそうであるように、わたしも今年3月のコパチンスカヤ独奏、大野和士指揮都響の演奏を聴いた。あのときはコパチンスカヤのおもしろさに舌を巻いた。今回は曲そのものの正確な姿を聴いたという実感がある。演奏者の達成感も大きかったのではないか。

 それにしてもこの曲の不思議な音響はなんだろう。例のオカリナとリコーダーの弱々しい音(とくにオカリナの不安定な音)、ヴァイオリンとヴィオラ各1本の低めの調弦。西洋オーケストラの、音がピタッと合った音響とは別物だ。先日のサントリーホール・サマーフェスティバルで聴いたオルガ・ノイヴィルトの変則的な音響を思い出した。案外、起源はこのへんにあるのかもしれない。

 3曲目のバルトークの「管弦楽のための協奏曲」は隅々まで目配りのきいた名演だ。高関健はプレトークで「新しい校訂版を使う。音が異なるところがある」という趣旨のことを話した。そういわれると聴衆も耳を澄まして演奏を聴く。思わぬ効果だ。
(2023.9.1.サントリーホール)

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