Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ヴェンツァーゴのCD

2020年04月16日 | 音楽
 3月に引き続き4月も演奏会は軒並み中止だが、その中で心残りなのは、読響に客演するはずだった指揮者のマリオ・ヴェンツァーゴMario Venzagoだ。ヴェンツァーゴという名前はどこかで見かけたことがあるが、実演を聴いたことがないので、興味を持っていた。ヴェンツァーゴは1948年チューリヒ生まれ。いまはベルン交響楽団の芸術監督兼首席指揮者を務めている。年齢からいってもベテラン指揮者だ。今回実演を聴けなかったので、CDをいくつか聴いてみた。

 一番感心したのは、ベルン交響楽団を振ったオネゲルの交響曲第3番「典礼風」だ。鮮烈な演奏といったらいいか。色彩感があり、リズムの切れもいい。同曲にはカラヤンやデュトワの名盤があるが、ヴェンツァーゴの演奏には新鮮さがある。同CDには他にオネゲルの交響曲第5番「3つのレ」と交響的運動第2番「ラグビー」が入っている。それらの曲も好演だ。

 もう一つ感心したのはベルクの「ルル」組曲だ(オーケストラはエーテボリ交響楽団)。透明かつ明るい音色で、「ヴォツェック」とは異なる平明さのある音楽を必要かつ十分に表現している。ソプラノ独唱のジェラルディン・マグリーヴィという歌手もいい。高音が出るのはもちろんだが、(一部の歌手で見かける)凄みをきかせた歌唱ではなく、素直な歌い方に好感が持てる。

 興味深かったCDはブルックナーの交響曲第5番だ。オーケストラは室内オーケストラのタピオラ・シンフォニエッタ。わたしは思わず膝を打った。第5番は、管楽器は2管編成だが、実演では(CDでもそうだが)弦は大編成で演奏される場合が多い。曲想がそうさせるのだろうが、木管・金管と弦とのバランスには疑問を感じることがある。弦の音が必要以上に分厚くないかと。

 このCDでは従来型の演奏とは異なり、木管・金管を分厚い弦が支えるのではなく、木管、金管そして弦がそれぞれの線を描く。透明感と流れのよさでしっくりくる。言い換えると、第5番が第7番以降の大交響曲の前触れの曲ではなく、第4番から第6番までの流れの中に納まる。

 一方、少々引っかかるCDもあった。一つは今回読響と共演するはずだったブルックナーの交響曲第3番(ベルン交響楽団)。第1楽章の第1主題が、前半はテヌートをかけ、後半は短く切り詰めて演奏されている。独特なアーティキュレーションだ。もう一つはシューマンの交響曲第3番「ライン」(デュッセルドルフ交響楽団)。第1楽章と第2楽章で大きくルバートをかける。一方、第5楽章の弱拍でのアクセントは弱い。2曲とも実演のライブ録音。スタジオ録音は別にして、実演だと個性派指揮者かもしれない。
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