Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

イル・カンピエッロ

2018年03月10日 | 音楽
 新国立劇場オペラ研修所の修了公演では、時々、同劇場の本公演では取り上げられそうもない演目が上演される。記憶に鮮明なのは、2007年のブリテン作曲「アルバート・へリング」と2009年のプーランク作曲「カルメル会修道女の対話」だ。「カルメル会‥」は、大野和士新監督の下では上演されるかもしれないが、「アルバート・へリング」は当分先ではないか。

 今回上演されたヴォルフ=フェッラーリ作曲「イル・カンピエッロ」も、本公演ではいつ上演されることか。そんな観客の渇きをオペラ研修所修了公演が癒してくれるという図式は、喜ぶべきことか、それとも悲しむべきか。

 周知のように、「イル・カンピエッロ」は日本オペラ振興会(藤原歌劇団)が何度か上演している。わたしは2004年の公演を観た。ニェーゼ役の砂川涼子の生き生きとした好演ぶりが今でも目に浮かぶ。楽しい公演だった。そのときの演出は、今回の修了公演と同じ粟國淳。

 そのときの演出がどうだったか、もう記憶が薄れているので、今回初めてのような気分で観たが、それにしてもこのオペラはいいオペラだ、というのが第一印象。3組の恋人たちの、それぞれの性格づけが鮮明に色分けされている。ゴルドーニの原作が与って力があるのだろう。

 本作は1936年にミラノのスカラ座で初演された。当時のイタリアではファシズムの嵐が吹き荒れていた。そういう時代にこの珠玉のような抒情的喜劇が初演されたことに、わたしは、そこだけぽっかり空いた小春日和のような一日を想像する。

 さて、今回の公演だが、今回も何人かの有望な人材がいた。なかでも注目したのは、ルシエータ役の砂田愛梨とアンゾレート役の氷見健一郎。お二人にはプロとしてやっていくためのパワーと切れ味があるようだ。ともに今月で3年満了。もう一人あげると、まだ1年目だが、ドナ・パスクア役の濵松孝行。そのコミカルな演技に注目した。

 また、すでにプロとして活躍している人だが、ファブリーツィオ役の清水那由太(賛助出演)の、太くて深い声にも注目した。今後ますます活躍する人だろう。

 指揮は柴田真郁。わたしは初めて聴いたが、オーケストラを抒情的に歌わせる箇所に聴きどころがあった。オーケストラは新国立アカデミーアンサンブルと銘打つ団体。エレクトーンが1台入っていて、時々、あれっ、と思うような音が聴こえた。
(2018.3.8.新国立劇場中劇場)
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