Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

秋山和慶/東京シティ・フィル

2016年02月22日 | 音楽
 秋山和慶が客演指揮した東京シティ・フィルの定期。プログラムはブラームス2曲。円熟の極みにあるこの指揮者がブラームスをどう聴かせるか。また普段あまり振っていない東京シティ・フィルをどう振るか。そんな興味を持って聴きに行った。

 1曲目はブラームスの交響曲第3番。慎重な演奏。感興の乏しさは否めない。アンサンブルを整えることに主眼を置いた感がある。その成果は出ていたと思う。でも、それでよいのか。それだけでよいのか、という想いは拭えなかった。

 だが、それにしても、秋山和慶の棒は見やすい。オーケストラのメンバーも演奏しやすいだろう。職人的といったらよいのか。高度な職人芸。むしろ芸術的な指揮だ。聴いている(見ている)これら側までその指揮に惹き込まれる。

 だが(と2度までも「だが」というのはよくないが)、この交響曲第3番の演奏は理路整然としすぎて、ブラームスらしくなかった。内面に燃える熱いものがなかった。

 2曲目はブラームスのピアノ協奏曲第2番。ピアノ独奏は江口玲。演奏には一転して感興が乗ってきた。音楽がよく流れ、――流れに淀みはないのだが――そこに熱いものが生まれてきた。聴衆に訴えかけようとする積極性があった。後述するピアノ独奏とオーケストラとが互角に組んで、力が拮抗していた。この曲はこうでないと面白くない。久しぶりにこの曲の納得できる演奏に出会った。

 江口玲のピアノは大変優秀だった。プロフィールによると「現在もニューヨークと日本を行き来して演奏活動を行っている」そうだが、それだけの実力を持った人だ。

 使用楽器は1912年製のスタインウェイ。東京シティ・フィルのツィッターによると「ホロヴィッツが最も愛した伝説の楽器として有名。晩年の全米ツァー他、1982年のロンドン公演、1983年の初来日NHKホールでも使用された楽器」。日本のタカギクラヴィア所蔵とのこと。

 えっ、と思って見に行った。年代物のその楽器は、2015年9月にピーター・ゼルキンがオリヴァー・ナッセン指揮の都響とブラームスのピアノ協奏曲第2番(奇しくも同じ曲だ)を弾いた楽器とよく似ていた。同じもの? 都響のときは詳しい説明はなかったので、分からないが。音は、ピーター・ゼルキンの特殊調律のせいもあるのだろうが、今回の方が澄んで聴こえた。演奏も今回の方がピアノを自然に鳴らしていたと思う。
(2016.2.19.東京オペラシティ)
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