Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

福島県立美術館

2014年09月04日 | 美術
 福島県の飯坂温泉に行ってきた。仕事で行ったのだが、2泊3日の最終日は仕事が早めに終わったので、帰京の途中で福島県立美術館に寄ってきた。

 時間の関係で常設展しか見ることができなかったが、それでも十分満足した。なんといっても、福島県出身の画家、関根正二(1899‐1919)の作品が目を引く。20歳で亡くなった天才画家だ。

 関根正二といえば、大原美術館に収蔵されている「信仰の悲しみ」(1918)(※1)を思い出す。この画家と出会った最初の作品だ。ハッとした。これはどういう作品だろうと思った。古代の衣装のような長衣を着た5人の女性が歩いている。手になにか持っている。死者に捧げるのか。古代の儀式のようだ。

 それ以来この画家の名前がインプットされた。他の作品もいくつか見た。でも、作品数そのものが少ないので、見る機会は限られていた。ところがこの福島県立美術館では、5点もの作品が並んでいる。地元の強みだろう。得難い機会だった。

 上記の「信仰の悲しみ」は第5回二科展(1918)に出品された。そのとき「姉弟」と「自画像」も出品された。その中の「姉弟」(※2)が展示されていた。意外に大きかった。80.5×60.5㎝のサイズ。画集で見ると、「信仰の悲しみ」とくらべてインパクトが弱かった。でも、実物を見ると、そうではなかった。夕空(のように見える)の多彩な色調が美しかった。胸にしみるようなノスタルジーがあった。記憶では、弟をおぶった姉は、ひまわり畑の上に浮いているように思っていた。実際には下方に足が伸びていた。

 「神の祈り」(1918)は明らかに「信仰の悲しみ」の姉妹作だ。「信仰の悲しみ」と同じく長衣を着た女性が2人立っている。一人は地を指さし、もう一人は手に捧げもの(果物?)を持っている。関根正二があと1年存命だったら、同じテーマの作品群が生まれたかもしれない。

 関根正二以外では、ベン・シャーン(1898‐1969)の「ラッキー・ドラゴン」(1960)が、やはり衝撃的だった。1954年にマーシャル諸島近海で操業中だったマグロ漁船、第五福竜丸が、アメリカの水爆実験に遭遇し、大量の放射性物質を被ばくした。その事件を描いた絵本「ここが家だ」(※3)でお馴染みの作品だ。

 この作品は、いつ、どういう経緯でこの美術館に収蔵されたのか――。原発事故が起きた今になってみると、運命的なものを感じてしまう。
(2014.9.3.福島県立美術館)

(※1)「信仰の悲しみ」
http://www.ohara.or.jp/201001/jp/C/C3b09.html

(※2)「姉弟」
http://www.art-museum.fks.ed.jp/collection/sekine.html

(※3)「ラッキー・ドラゴン」の画像が見つからないので、絵本「ここが家だ」の画像を。
http://www.amazon.co.jp/%E3%81%93%E3%81%93%E3%81%8C%E5%AE%B6%E3%81%A0%E2%80%95%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%81%AE%E7%AC%AC%E4%BA%94%E7%A6%8F%E7%AB%9C%E4%B8%B8-%E3%83%99%E3%83%B3-%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%B3/dp/4082990151
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする