Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ラファエル前派展

2014年03月10日 | 美術
 「ラファエル前派展」はすごい内容だ。ラファエル前派の画集に必ずといっていいほど載っている作品が、ずらっと並んでいる。生きた画集、というのも変だが、日本にいながらにしてラファエル前派の代表作を目にする、またとない機会だ。いずれもロンドンのテート美術館から来た作品。

 テート美術館には昔一度だけ行ったことがある。あのときはターナーが目当てだった。ターナーは満喫したが、ラファエル前派は素通りだった。その雪辱というか、そのとき見落としたものを、じっくり見る機会になった。

 なんといっても一番感銘を受けたのは、ロセッティの「ベアタ・ベアトリクス」↓。この世ならぬ光が射している。その光は画集ではわからない――実物でなければわからない――性質のものだ。亡き妻を悼むロセッティの、唯一無二の作品。ロセッティとしても二度と描くことのできない作品。

 同じくロセッティの「プロセルピナ」↓は凄みのある美しさ。これには圧倒された。「ベアタ・ベアトリクス」もこの作品も、‘ラファエル前派’としての活動が終わった後の作品だ――グループとしての活動は短命だった――。ロセッティの力量はこの頃、最高潮に達したと思う。

 一方、ラファエル前派の綱領に忠実な作品として、ハントの「クローディオとイザベラ」↓と「良心の目覚め」↓がある。どちらも有名な作品だが、実物を見ると、想像以上に面白かった。とくに「良心の目覚め」に惹かれた。画集で見ると平板な感じがするが、実物では、びっしり描き込まれた家具や小物の一つひとつが、たしかな存在感をもって浮き上がってくる。

 もう一人、ミレイの「オフィーリア」↓はいつ見ても新たな発見があり、今回もまたあった。「マリアナ」↓↓も画集で馴染みの作品だ。この美しさは「オフィーリア」と双璧だ。

 以上のロセッティ、ハント、ミレイの3人が中心となってラファエル前派を結成したのが1848年。パリで2月革命が起きた年だ。その激震はヨーロッパ中に波及した。ドレスデンでの革命運動が失敗し、ワーグナーが指名手配されたのもこの頃だ。そんな時代を背景とする反アカデミズム運動がラファエル前派。当時3人は20歳前後の若者だった。その出発点から各人の軌跡、そしてバーン=ジョーンズの登場までを俯瞰する展観が本展だ。
(2014.3.7.森アーツセンターギャラリー)

↓「マリアナ」以外の作品の画像(本展HP)
http://prb2014.jp/archives/artworks/

↓↓「マリアナ」の画像(Wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/File:John_Everett_Millais_-_Mariana_-_Google_Art_Project.jpg
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