Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ミラノフ/東京シティ・フィル

2014年02月17日 | 音楽
 14日(金)は大雪の予報のなか(すでに雪が降り始めていた)東京シティ・フィルの定期へ。ロッセン・ミラノフという指揮者は初めてだ。すでに日本のオーケストラをいくつか振っているそうだ。ブルガリア人。年齢はわからない。

 1曲目はモーツァルトの歌劇「イドメネオ」のためのバレエ音楽。と、いわれても、ピンとこないが、聴いてみると、モーツァルトらしくていい曲だ。「イドメネオ」そのものが若き日のモーツァルトの力作だが、それにふさわしい曲だ。この日は「シャコンヌ」と「パ・スール」が演奏された。ほかにどんな曲があるのか――。

 ミラノフの指揮は、溌剌とした、歯切れのいいもの。選曲といい、演奏といい、一気に注目した。

 2曲目はパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番。独奏は成田達輝(なりた・たつき)。1992年生まれの若者だ。2010年ロン=ティボー国際コンクール第2位、2012年エリザベート国際コンクール第2位。今、話題の人かもしれない。ともかくすごい才能だ。アグレッシヴにぐいぐい弾く。テクニックはもちろん、音楽性もものすごい。

 第1楽章が終わったところで拍手が起きた。最初は控えめに、そして徐々に広がった。皆さん、まちがえたのではない。演奏がすばらしいので、おずおずとではあるが、拍手をしたのだ。こういうことが自然発生的に起きるのがいい。わたしも加わった。指揮者もタクトで譜面台を叩いていた。

 成田達輝は、将来、大家になるかもしれない。でも、今この場での演奏には、今にしかないものがあるはずだ。それは若さとか、並外れた素質とか、なにかそういったもの、前途洋々たる未来が待っているだろうが、それに向かって一歩を踏み出すご本人には一抹の緊張感がある、そんな今を共有する喜びが、わたしたち聴衆にはあった。

 3曲目はシューマンの交響曲第2番。ロッセン・ミラノフは東京シティ・フィルを振るのは初めてだと思うが(少なくとも定期は初めてだ)、デビューにこの曲を選んだことに、指揮者としての姿勢を感じた。もっと派手な曲、成功する確率が高い曲は、ほかにいくつもあるが、このように地味な、だが音楽的な内実のつまった曲を選んだことに、この指揮者の歩む道が感じられた。

 演奏は第3楽章の熱い表現にひきこまれた。そこにはオーケストラの指揮者にたいする共感も込められていたと思う。
(2014.2.14.東京オペラシティ)
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