Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ルイ・シュポーア

2011年02月26日 | 音楽
 読売日響の桂冠指揮者ゲルト・アルブレヒトがシュポーア・プログラムを組んだ。音楽史のなかで名前くらいは目にしたことがあるが、さてどういう音楽なのか、あるいは正確にはいつごろの作曲家なのか、さっぱりイメージが湧かない。そういう作曲家を取り上げるあたりは、アルブレヒトまだ健在だ。

 一応、事前にWikipediaには目を通した。ルイ・シュポーア、1784~1859。ベートーヴェンが1770~1827、シューベルトが1797~1828だから、世代的にはちょうど中間だ。パガニーニ(1782~1840)やウェーバー(1786~1826)と同世代。

 演奏会の1曲目は、シュポーアではなくて、シューマンだった。「『ファウスト』からの情景」序曲。曲想のせいだけではなく、どこか散漫で、音の中身の薄い、アルブレヒトらしからぬ演奏だった。さすがにすこし年を召されたかと思った。

 2曲目はシュポーアの歌劇「ファウスト」序曲。アルブレヒトは続けて演奏しようと思っていたのかもしれない。拍手が入ったので、軽く答礼。すぐに演奏に入った。みちがえるように生気がこもった演奏。

 このあとアルブレヒトのトークがあった。「演奏会はベートーヴェンばかり。ベートーヴェン、ベートーヴェン、ベートーヴェン、たまにチャイコフスキーが入って、またベートーヴェン。すばらしい音楽はほかにもある。自分はみなさんにもっといろいろな音楽を聴いてもらいたい」という趣旨だった。

 3曲目はシュポーアのヴァイオリン協奏曲第8番「劇唱の形式で」。ヴァイオリン独奏は神尾真由子さん。2007年のチャイコフスキー・コンクールに優勝した人だ。国内のオーケストラには10代のときからたびたび出ていて、いつも感心していた。けれども昨日はなぜか音が神経質だった。後半はもちなおしたが、前半はハラハラした。アンコールにパガニーニの「24のカプリース」から第20番が演奏された。これはのびのびとしていた。

 休憩後はシュポーアの交響曲第3番が演奏された。1828年の作曲とのこと。ざっくりいうなら、第1楽章と第3楽章はメンデルスゾーン的、第2楽章はシューマン的(この曲には第4楽章もあるが、とくになにも感じなかった)。当時はメンデルスゾーンもシューマンもまだ10代だ。それぞれが苦労して作風を究めていくときに、こういう曲が時代的な下地にあったかもしれない。演奏はしっかり構成されて、中身が詰まった、往年のアルブレヒトを彷彿とさせるものだった。
(2011.2.25.サントリーホール)
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