Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ウィーン世紀末展

2009年10月05日 | 美術
 日本橋高島屋で開かれている「ウィーン世紀末展」に作曲家シェーンベルクの絵(シェーンベルクは絵も描いていた)が来ていることを知り、行ってみた。

 作品は3点あったが、インパクトが強かったのは自画像。大きく見開かれた眼が、なにか得体の知れないものを見たときの不安を感じさせた。何を見たのか。この絵の制作年は不明とのことだが、会場の説明によれば、シェーンベルクの絵は1908~1911年に集中しているそうだから、ちょうど作曲が完全な無調に入っていった時期だ。あの眼は未知の世界に踏み入るときの孤独と不安を表しているのだろうか。

 もう1点は妻のマティルデを描いたもの。ボサボサに乱れた髪と、疲れきったような表情は、なにを意味するのだろう。マティルデは作曲家ツェムリンスキーの妹で、1901年にシェーンベルクと結婚したが、シェーンベルクの若い友人である画家のゲルストルと恋愛関係になったとのこと。恋愛関係が破局を迎えた1908年にゲルストルは自殺したそうだが、その頃の妻を描いたのだとしたら――。

 残りの1点はマティルデの母を描いたもの。堂々としていて、3点の中ではいちばん肖像画らしい。画中にシェーンベルクの署名と1910年という制作年の記入がある。
 3点とも、背景はほとんど描かれていず、衣服の描き方も大雑把。シェーンベルクの関心はもっぱらモデルの顔(つまり内面)にあるようだ。

 展示作品はすべてウィーン・ミュージアムから来たもの。ウィーンという土地柄か、シェーンベルク以外にも音楽関係の絵が数点あって面白い。中でもマーラーの銅版画はよく見なれたもの(エミル・オルリク作)。真横から見たマーラーの顔で、平べったい額が異様だ。これを実物で見ると、まるで写真のように鮮明なので驚いた。

 ペーター・アルテンベルクの肖像があった(グスタフ・ヤーガーシュバッハー作)。アルテンベルクはウィーンの詩人で、アルバン・ベルクの作曲した「アルテンベルク歌曲集」でその名を知ってはいたが、肖像を見るのは初めて。こういう人だったのか。禿げ上がった頭と大きな口髭が、一癖ありそうな風情だった。
 そのほかにも、やたらと美男子に描かれているヨーゼフ・ランナーとヨハン・シュトラウス1世の演奏する舞踏会の絵や、フーゴー・ヴォルフの書斎という絵もあった。

 展覧会の目玉はグスタフ・クリムトとエゴン・シーレで、クリムトは「愛」や「パラス・アテナ」、シーレは「自画像」や「アルトゥール・レスラー」など。マーラーの妻のアルマの愛人だったオスカー・ココシュカの作品もあった。
(2009.10.03.日本橋高島屋)
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