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後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔807〕クラウス・スリューテルを「新発見」と思いきや、裏切られたり、新たな興味をかき立てられたり…。

2025年05月21日 | 図書案内

   妻のリーメンシュナイダー追跡に同行し、後期ゴシック同時代の彫刻家の群雄割拠に圧倒され続けてきて、妻と『結・祈りの彫刻-リーメンシュナイダーからシュトース』(丸善プラネット)を出版したのが2022年7月のことでした。同年、同書を10冊ほど携えてドイツの研究者や友人に手渡ししたついでに、ドイツからフランスに越境し、南仏のトゥールーズやモワサック、さらには中部のディジョンを訪ね、フランス中世美術を一部堪能しました。その中で気になった彫刻家がクラウス・スリューテルでした。
  今夏、そのスリューテルを初め、フランス中世美術を総なめにする旅行を実行します。南仏のロマネスクはドイツ人夫婦、北仏のゴシックはフランス人家族に車で同行してもらいます。我々で回るまだ見ぬドイツ後期ゴシック彫刻も含めて、わくわくが止まらない渡欧になることは間違いありません。

  一番気になる彫刻家がスリューテルです。ところが日本語文献では『世界美術大全集 ゴシック1』(小学館)でしかお目にかかれませんでした。
 次に手に入れたのが『フランスの歓び』(芸術新潮2002年8月号)で、少し前にブログで詳述したとおりです。
 ネットでスリューテル追跡をしたところ見つかったのが次の文献です。ただこの本はフランス彫刻がメインで、あとはリーメンシュナイダーについてわずかに触れている程度のようです。

■『中世彫刻の世界』越宏一著、岩波書店 2009.6 
…第5章 ロマネスクのモニュメンタル彫刻—その誕生;第6章 ロマネスクのモニュメンタル彫刻—その造形原理;第7章 ゴシックのモニュメンタル彫刻—その誕生;第8章 ゴシックのモニュメンタル彫刻—その造形原理;第9章 後期ゴシック彫刻;終章 ブルゴーニュの後期ゴシックの大彫刻家クラウス・スリューテル

  さて、もうひとつ発見したのが『フランス : ゴシックを仰ぐ旅』でした。

■『フランス : ゴシックを仰ぐ旅 = France, les cathédrales et sculptures gothiques』
    都築響一, 木俣元一著
    新潮社 2005.1 とんぼの本

〔内容〕アミアン—ようこそ、ゴシックへ;サン=ドニ—ゴシック生誕の地は王家の墓所;シャルトル—800年前の巨大タイムカプセル;ランス—聖処女ジャンヌは大聖堂を目指す;ストラスブール—アルザスに咲いた哀しのバラ;ボーヌ—施療院に秘められしファン・デル・ウェイデン;ディジョン—中世屈指の彫刻家スリューテルに会いに;ブールジュ—三層式の聖なる空間;ヴァンドーム—燃えあがるゴシック最後の炎

  早速アマゾンで綺麗な本を安価で購入し熟読玩味したところ、あれあれ残念な結果に終わってしまいました。『フランスの歓び』の焼き直しだったのです。スリューテルに関する記述はまったく同じでした。『フランスの歓び』からゴシックを抽出し手を加えたのが『フランス : ゴシックを仰ぐ旅』だったのです。雑誌掲載を単行本に収録するということはよくあることです。しかもどちらも新潮社でしたので移行は容易だったでしょう。
  しかし残念だったことばかりではなく、旅の参考になることも書かれていました。
  「アミアン—ようこそ、ゴシックへ」の「聖フィルマンの彫刻芸場」は『フランスの歓び』にはない新稿で、魅力的な彫刻を紹介しているのでした。

  旅行後にはその長い旅の報告をしたいと思いますが、その頃には残念ながらこのグーブログは終了になってしまいますが、他に移行したブログでお目にかかりたいと思います。


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