現在、娘・福田奈々子は青梅市二俣尾で「漆工房 皎月(こうげつ)」を開設しています。パートナーは蒔絵師の十亀英也さんです。
先日、彼らの金継ぎの仕事が奥多摩町公式タブロイド「BLUE+GREEN JOURNAL」(2021年3月発行)に紹介されました。「器のお手入れ」(器を大切に扱うことは、自分を大切に扱うこと)という記事と金継ぎの前に行う「煮洗い」の作業が紹介されています。ここでは「器のお手入れ」を載録しておきます。
■日々の暮らしに彩りを添える、お気に入りの食
器。でも、ちょっとした不注意で欠けたり割れたり
すると、自己嫌悪と喪失感でしばらく立ち直れなく
なることも……。そんな負の感情をなかったことに
するどころか、プラスにまで転じてくれるのが「金
継ぎ」だ。金継ぎとは、割れや欠け、ヒビが入った
陶磁器を漆で接着し、継いだ部分を金などで装
飾する修復技法のこと。壊れた箇所を装飾として
あえて見せることで、唯一無二のデザインになり、
さらに愛着も増す。日本ならではの美意識と技術
の結晶だ。
「金継ぎを施すようになれば、割ってしまった時の
感じ方が180度変わります。罪悪感がなくなりま
すし、『お、いい割れだなぁ』と思うときも(笑)。そ
れに、割れても繕えばいいと思えたら、食器棚の
奥の方にしまいがちな大事な器だって、普段使い
することができます。その場しのぎの器にさよなら
して、日々、お気に入りの器を使えたら、自己肯定
感も高まると思います」
そう語るのは、奥多摩町のお隣、青梅市二俣
尾にある「漆工房 皎月(うるしこうぼう こうげ
つ)」の福田奈々子さん。「漆工房 皎月」では、日
本産漆を用いる伝統的な継ぎ方による金継ぎ教
室を開催。初心者でも一歩ずつ技術の習得がで
きるように丁寧な指導を心がけている。金継ぎの
魅力について福田さんに尋ねると、「万人に当て
はまることではないかもしれないけれど」と前置き
をしつつ、言葉を紡いだ。
「小さい頃からジグソーパズルが好きで、単純に
形が元に戻るのが楽しい。作業そのものが癒やさ
れるし、幸せな時間なんです。物質世界で器を繕
うことで、心の傷も癒す感覚というか。掃除をする
と、心の中も掃除されてスッキリしますよね、それ
と同じ。作業中は、瞑想状態に近い」
接着、研ぎ、塗り、乾燥など多岐に渡る工程を、
器の状態や気候なども踏まえながら、繊細に重ね
ていく金継ぎの技術は、一朝一夕に習得できるも
のではない。教室では、割れたもので7~8回、
ほつれで4~5回をかけて、同時に4~5点を
金継ぎするという。今回は、初回の教室で開催し
ている「器の煮洗い」の手順について教えても
らった。
「漆で全継ぎをする場合は、器の中に入ってる
汚れ、塩分、油が漆の乾きを悪くしてしまうので、
まず煮洗いをします。気持ちいいほどきれいにな
るので、ビフォーアフターを体験すると、みなさん
驚いて喜んでくださって。教室の後、自宅で金継
ぎする予定のない器も煮洗いしました、という方
も多いです」
まさしく、茶道や花道と同じように。突き詰めれ
ば、金継ぎも“道"になると思っている、と福田さん
はにこやかに語る。まずは煮洗いから、その道の
入口に立つてみたい。
食器棚の整理もちょっとした工夫で、器に
とってもやさしい空間に。福田さんのオス
スメは、漆器、陶器、磁器など素材別に並
べること。「食器は、柔らかいものに硬いも
のが当たったときに割れやすい。ざっくりと
素材別に置くだけでも割れにくくなります
し、見た目にもしっくり来ますよ」。
●PROFILE
漆工房較月
金継ぎ教室「つぎつぎ」を主催。蒔絵師の
十亀英也さん、漆塗り籠など暮らしの道具
をつくる福田奈々子さんからなるユニット。
生活に根ざした古き良き物にひかりを当て
アレンジし、制作している。
青梅市二俣尾2-585
先日、彼らの金継ぎの仕事が奥多摩町公式タブロイド「BLUE+GREEN JOURNAL」(2021年3月発行)に紹介されました。「器のお手入れ」(器を大切に扱うことは、自分を大切に扱うこと)という記事と金継ぎの前に行う「煮洗い」の作業が紹介されています。ここでは「器のお手入れ」を載録しておきます。
■日々の暮らしに彩りを添える、お気に入りの食
器。でも、ちょっとした不注意で欠けたり割れたり
すると、自己嫌悪と喪失感でしばらく立ち直れなく
なることも……。そんな負の感情をなかったことに
するどころか、プラスにまで転じてくれるのが「金
継ぎ」だ。金継ぎとは、割れや欠け、ヒビが入った
陶磁器を漆で接着し、継いだ部分を金などで装
飾する修復技法のこと。壊れた箇所を装飾として
あえて見せることで、唯一無二のデザインになり、
さらに愛着も増す。日本ならではの美意識と技術
の結晶だ。
「金継ぎを施すようになれば、割ってしまった時の
感じ方が180度変わります。罪悪感がなくなりま
すし、『お、いい割れだなぁ』と思うときも(笑)。そ
れに、割れても繕えばいいと思えたら、食器棚の
奥の方にしまいがちな大事な器だって、普段使い
することができます。その場しのぎの器にさよなら
して、日々、お気に入りの器を使えたら、自己肯定
感も高まると思います」
そう語るのは、奥多摩町のお隣、青梅市二俣
尾にある「漆工房 皎月(うるしこうぼう こうげ
つ)」の福田奈々子さん。「漆工房 皎月」では、日
本産漆を用いる伝統的な継ぎ方による金継ぎ教
室を開催。初心者でも一歩ずつ技術の習得がで
きるように丁寧な指導を心がけている。金継ぎの
魅力について福田さんに尋ねると、「万人に当て
はまることではないかもしれないけれど」と前置き
をしつつ、言葉を紡いだ。
「小さい頃からジグソーパズルが好きで、単純に
形が元に戻るのが楽しい。作業そのものが癒やさ
れるし、幸せな時間なんです。物質世界で器を繕
うことで、心の傷も癒す感覚というか。掃除をする
と、心の中も掃除されてスッキリしますよね、それ
と同じ。作業中は、瞑想状態に近い」
接着、研ぎ、塗り、乾燥など多岐に渡る工程を、
器の状態や気候なども踏まえながら、繊細に重ね
ていく金継ぎの技術は、一朝一夕に習得できるも
のではない。教室では、割れたもので7~8回、
ほつれで4~5回をかけて、同時に4~5点を
金継ぎするという。今回は、初回の教室で開催し
ている「器の煮洗い」の手順について教えても
らった。
「漆で全継ぎをする場合は、器の中に入ってる
汚れ、塩分、油が漆の乾きを悪くしてしまうので、
まず煮洗いをします。気持ちいいほどきれいにな
るので、ビフォーアフターを体験すると、みなさん
驚いて喜んでくださって。教室の後、自宅で金継
ぎする予定のない器も煮洗いしました、という方
も多いです」
まさしく、茶道や花道と同じように。突き詰めれ
ば、金継ぎも“道"になると思っている、と福田さん
はにこやかに語る。まずは煮洗いから、その道の
入口に立つてみたい。
食器棚の整理もちょっとした工夫で、器に
とってもやさしい空間に。福田さんのオス
スメは、漆器、陶器、磁器など素材別に並
べること。「食器は、柔らかいものに硬いも
のが当たったときに割れやすい。ざっくりと
素材別に置くだけでも割れにくくなります
し、見た目にもしっくり来ますよ」。
●PROFILE
漆工房較月
金継ぎ教室「つぎつぎ」を主催。蒔絵師の
十亀英也さん、漆塗り籠など暮らしの道具
をつくる福田奈々子さんからなるユニット。
生活に根ざした古き良き物にひかりを当て
アレンジし、制作している。
青梅市二俣尾2-585