後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔130〕イケダ自然体操の池田潤子さんが逝去されてもう1年が経ってしまったのですね。

2017年02月20日 | 追悼文
 池田潤子さんが逝去されたのは2016年2月1日のことでしたから、もう1周忌ということになりました。様々な想い出のある池田さんとのことを振り返ってみたいと思います。
1972年に教師をスタートさせて、最も刺激をもらったのが遠山啓編集代表の雑誌「ひと」(太郎次郎社)でした。1973年冬に発行されたのでした。この雑誌の記事と、すぐにスタートした「ひと塾」が私の教育実践に多大な刺激を与えてくれました。「ひと塾」の申し込みの1番はこの年の秋に結婚した連れ合い、2番が私でした。会場は八王子のセミナーハウスでした。
 遠山啓さんだけでなく遠藤豊吉、白井春男、板倉聖宣、つるまきさちこ、竹内敏晴、奥地圭子、鳥山敏子さんなどの名前がすらすらと出てきます。ここで出会った人たちのワークショップなどに頻繁に出入りするのが新卒教師の私でした。
 つるまきさちこさん主宰の「からだとこころの会」で、初めて、野口三千三さんのワークショップを受けることになります。あの野口体操の考案者で、東京藝術大学の教授、劇団などにも多大の影響を与えていた伝説の人でした。本物の日本刀や骨だけの人体模型などを持参しての畳部屋での講習会が印象に残っています。
 池田潤子さんは野口さんの薫陶を得た、鹿児島生まれの元体育の高校教師でした。弟子をとらない野口さんが唯一人弟子と認めた人でした。彼女は日本演劇教育連盟主催の全国演劇教育研究集会や演劇教育セミナーなどの講師を長く続けられました。1980年代の終わりに、「イケダ自然体操」と名乗り始めた頃だったでしょうか、私もワークショップの世話人に志願しました。
 1990年代、やはり妻が池田潤子さんのワークショップの世話人になるということがあって交流の輪がさらに広がりました。
 21世紀に入ってから、2年に一度、手作りの、その年の干支が送られてくるようになりました。特殊な堅い紙で実に器用に折られた、日本的な柄の精巧な置物です。同時にご夫妻の素敵な栞が必ず添えられていました。その1つを紹介しましょう。

 皆様のご健康とご多幸を心から祈念し
2004年が《良くないことが去る年》
でありますように、との願いを籠めて
母子猿を折りました。
 地球上のすべての人類が
字源にありますように
両手を合わせ
良い心と
優しく愛情ある善い行いを
輝く未来に向かって
真っ直ぐに引き伸ばして行ってほしい!と
心から願いつつ
ここに母子一組と栞文をお届けし
新年のご挨拶に代えさせて頂きました。
      平成16年 元旦
        古田俊彦
        潤子(池田)

 この栞には漢和辞典からの引用で「申」の語源が記されていたのです。
 池田さんはその後教室を開かれ、国内外に講習の場が広がりました。とりわけデンマークには何回か呼ばれて行かれたという話を伺っていました。
 雑誌「ひと」に池田さんの実践が掲載されたのは私としても嬉しいことでした。この連載が元になって『くつろいで、くつろいで、とことんくつろいで―イケダ自然体操』(樹心社、2006年)が出版されます。「こんな本が出来ました。お読みくださると嬉しいです。」という文が添えられた御著書が送られてきました。当時私は埼玉大学で授業を始めたばかりでした。早速、授業の課題図書にこの本をノミネートしたのです。
 この本は野口さんとの出会いや教室の発展の様子にも触れられています。

■『くつろいで、くつろいで、とことんくつろいで―イケダ自然体操』樹心社、2006年
 著者の池田さんは、とても優しく、すっとした意志の力が感じられる方です。また、向上心の塊のような方で、常に勉強を続けられています。
 この本を書かれるにあたっても、書いているうちに、どんどんご自身のやり方も変わっていくし、考え方も少しずつ変化していくことで、なかなか本の形にして出版するということに納得してくださらなかったのですが、お願いして5年少々、やっと形にすることができました。
 池田さんの40年以上の体操人生から得られた、素晴らしいものがつまった本です。人間のあり方の根源に迫るイケダ体操の真髄、そして池田さんの感性の素晴らしさを少しで感じていただければと思います。
 どうか、何か素敵なものを1つでも、この本から得ていただければ幸いです。

 野口体操やイケダ自然体操から頂いたものは様々あります。こころとからだの関係性、からだそのものについての認識、聴くということ…教育の根本のところを示唆されたのでした。
 なお、市橋久生さんが池田さんの仕事について簡潔にまとめた心温かい追悼文を書かれています。(「演劇と教育」2016.6月号)

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