後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔516〕後期ゴシック彫刻を歩く② 「彫刻と絵画の両刀遣い」の3巨頭はムルチャー、パッハー、シュトースです。

2022年11月01日 | 美術鑑賞
 十数回ドイツ・オーストリアを訪ねるうちに、私は、緑が愛して止まないリーメンシュナイダーだけではなくて、後期ゴシック彫刻の作家たちに新たに魅力を感じるようになっていきました。私の刺激を受けながら緑もそうなっていったようです。現代芸術にも通じるような個性的な彫刻との出合いによって私たちの鑑賞の視野がどんどん広がっていったのでした。
 後期ゴシック彫刻の作家たちの作品とあまた向き合うなかで、興味深い事実がいろいろ見えてきました。その1つは「彫刻と絵画の両刀遣い」の作家が存在することでした。まさに彼らは「彫刻界の大谷翔平」でした。
 マルティン・ショーンガウアやアルブレヒト・デューラーのような版画と絵画両方で抜きんでている絵描きは多いのではないでしょうか。日本で言えば葛飾北斎もそうでしょうか。絵を描く作業は版画と絵画では大きな違いはないのでしょうか。
 でも素人目には「彫刻と絵画の両刀遣い」は大谷の打者と投手と同様に難しいことのように思います。その難しいことやってのけた3巨頭を発見しました。ハンス・ムルチャー、ミヒャエル・パッハー、ファイト・シュトースと後期ゴシック初期の作家たちが多いようです。

 彼らの仕事をなんとか日本に紹介できないかと考えて、写真集第Ⅳ巻『結・祈りの彫刻-リーメンシュナイダーからシュトース』ではミヒャエル・パッハーとファイト・シュトースの絵を特別掲載しました。
 ミヒャエル・パッハーはアルテ・ピナコテークの「教父祭壇(祭壇画)」の8枚で、しっかり美術館に掲載料を払いました。写真も館のものです。ファイト・シュトースはマティアス・ヴェニガーさんのご尽力で彼撮影の「リーメンシュナイダー祭壇の祭壇画」を掲載することができました。
 パッハーの作品は2,3回見ているのですが、このシュトースの絵は未見でした。リーメンシュナイダーの初期の代表作、ミュンナーシュタットの祭壇の脇に飾られているのですが、私たちは迂闊にもこの作品を見逃していたのです。
 ミュンナーシュタットのマグダレーナ教会を訪ねたのは9月22日(木)のことでした。ところがなんとそこにはありませんでした。以前ミュンヘンに貸し出されていたのがまだ戻っていなかったようなのです。さらに、「リーメンシュナイダー祭壇」も修復中でシートが被されていたのです。この時は2人とも踏んだり蹴ったりで深く落ち込んでしまいました。
 この後バンベルクに移動していつものようにドームのリーメンシュナイダーやシュトースの作品を見るのですが、ドーム博物館でシュトースの初見の作品に出合って溜飲を下げたのでした。そのことは「後期ゴシック彫刻を歩く①」に書きましたので読んでください。

 もうひとりの「彫刻と絵画の両刀遣い」はハンス・ムルチャーです。ベルリンの絵画館に「ヴルツアッハー祭壇の翼」に描いた8枚の祭壇画が代表作です。ここにも2,3回訪れているのですが、その時は私たちの関心が高くなく、易々と見逃してきたのでした。9月10日(土)、絵画館に入って早速大きなこの8枚を見つけることができました。焦がれていた恋人に会ったときのように、いろいろな角度から撮影し、佇んで眺めたのでした。今の私のパソコンの待ち受け画面はこの祭壇画です。
 実はこの絵も新刊に掲載すべく美術館に申し出たのですが、何の反応もありませんでした。当然掲載料を払うことも覚悟していたのですが、残念なことでした。

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