寒ブリ

寒い。
洗濯物を干そうとベランダへ出る扉を開けたとたん、その冷気の冷たさに気が怯み、洗濯物を持ったまま、また扉を閉めてしまいました。
お風呂場に干して浴室乾燥機で乾かそうかな、と思いましたが空は晴れている。
やっぱりお日さまに当てないとダメよねぇ、と洗濯物を一旦置いて丹前を着込み、心の準備をしてからベランダへ出ました。

十数年ぶりの寒波で、日本列島は厳寒の真っ只中ですが、この寒さで良いこともある。
こんな寒さの厳しい時期は、魚が美味しくなる季節。
その名も「寒」の字がついた、寒ブリです。
海水温が低くなると、体温を保とうと餌を多く食べて脂肪のついた魚は、よく太って脂がのり美味しくなります。
ヨシ、今夜はブリしゃぶ鍋と洒落こもうと、買い物へ出かけました。
スーパーへ行くと、お味もきっととびきりの、脂ののったピカピカの寒ブリが並んでいました。
しかし。
お値段もなかなかです。
８切入りのお造りがひとパック税抜き398円。
ふたりで食べてひとり４切れ。
しゃぶしゃぶとひと切れ食べて、ひとり４しゃぶしゃぶしかできません。
もうひとパック購入するには、エンゲル係数が上昇し財政的にも厳しい。
どうしたものかとフト目をやると、寒ブリの横に鮭のアラがグラム98円で売っています。
これなら大丈夫。
寒ブリを諦めて、鮭のアラと大根、人参、薄揚げ、こんにゃく、そして酒粕を購入し、今夜のメニューは粕汁に変更。
スーパーを出ると、強い風の中、雪が舞っていました。
急いで家へ戻り洗濯物を取り込もうとベランダへ出ると、強風で洗濯物を干していない方の竿竹が外れて落ちていました。
干している方だったら大惨事でした。
かくして大鍋にたっぷりの粕汁が出来上がり、身も心も財布もあったまりました。