私的美遊空間

美しく愛しいものたちへのつぶやき

光のどけき万葉の岬 *ツバキと瀬戸内海の景* &万葉集で詠まれた縄の浦の今昔

2019年04月03日 | ある風景

~ 兵庫県相生市金ヶ崎の椿園より瀬戸内海を望む ~

暖かな日差しに誘われてツバキと海を見に行って来ました。

こちらは兵庫県の西に位置する造船の町相生市
相生湾の東南の端にある金ヶ崎の椿園です。
左上は「家島諸島」右上に見えているのは「小豆島」です。
程よくかすんで素敵な春の景色でした。




中央のお椀のような小さな島は「君島」といい
万葉集巻十二に収められている歌に出てくる島ですが、
万葉集では「鳴島」と詠まれています。

「室の津の 湍門の崎なる鳴島の
磯越す浪に 濡れにけるかも」 詠み人知らず

(室の津の、潮流が早い海峡にある鳴島の磯を
越す波に濡れてしまったことよ)
前途のはるけさを思って詠んだ舟行旅愁の歌

※湍門 (たんもん)= 海峡の狭く流れの速いところ




「縄の浦ゆ 背向に見ゆる奥つ島
漕ぎ廻る舟は 釣しすらしも」 山部赤人

(縄の浦にたどりついて振り返ると、はるか沖合いに見える島、
あのあたりを漕いでいる舟はまだ釣りの真っ最中らしい)

※ 写真の島は「家島諸島」です。
文中の島ではありません。




「玉藻刈る 唐荷の島に島廻する
鵜にしもあれや 家思はざらむ」 山部赤人

(この私は、玉藻を刈る唐荷の島で、えさを求めてつたっていく
鵜であろうか、いや私は鵜なんかではないのだから、
どうして家を思わないでおられよう)

※ 「唐荷の島」は沖合の島で、地(じ)の唐荷(からに)、
中の唐荷、沖の唐荷の三つの島があります。

これらの歌は標識にある通り、それぞれ石碑が建てられています。




このように、この地で詠まれた和歌が多いことから
「万葉の岬」と呼ばれるようになりました。




~ 相生湾 石川島播磨重工業のドック ~

和歌に詠まれた「縄の浦」です。
今日は大型船がドック入りしていました。




~ 万葉岬から見る相生湾 (縄の浦) ~

大型船が2隻並んでいる様子は圧巻でした。
「海賊と呼ばれた男」に出てくる日昇丸二世は
こちら播磨造船所(後の石川島播磨重工業➡IHI)で建造され、
この相生湾で進水式を済ませ、イラン石油の輸入に成功しました。


山部赤人がこの光景を見たらなんと詠むでしょう。
万葉の香りと現代が同居する「縄の浦」でした。

※ 参考
相生市HP、清川妙の万葉集(私の古典2・集英社)

コメント (19)
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