夜間飛行

2005年11月25日 | 
夜の飛行機はとても幻想的。
窓の外に広がる漆黒の世界は、
しかし本当は漆黒ではなく、
海上を行く船の灯りや街の灯り、
満天の星空に包まれながら、
一筋の光跡を残して思い出を運ぶ。

JTA58便那覇発東京羽田行き
那覇空港から東京へ向かう最終便の1本前の便。
私の席は9A。翼よりも前方の、つまり
ジェットの噴気で景色が歪むことの無い、
絶好の席であった。

緑や青の灯りを滲ませながら、
雨にぬれる誘導路を滑走路に向かう。
21:05、ブレーキをかけることなく、
そのままスロットルを全開にしてローリングエアボーン。
那覇空港を離陸すると、すぐに米軍の管制区域に入るため、
通常の空港からの離陸よりも上昇率は低い。
こんなところにも、沖縄の悲しい歴史が残されている。

雲を抜けると、そこはどこまでも澄み渡った夜の空。
月が輝き、星が瞬く。
太平洋の上空33,000フィート。
コクピットでは、たくさんの機器の灯りの中で
2人のパイロットが、ゆりかごを操ってくれている。
私はそのゆりかごに身を委ね、
瞳を閉じる。

偏西風に乗った飛行機は、対地速度を上げ
気がつくとすでにはるか遠くに街の灯りが見える。
予定到着時刻は23:00。
時刻から判断すれば、あれは名古屋だろうか。
機体は徐々に高度を下げる。
これから先、大島上空を通過してから左へ旋回し、
房総半島木更津上空から羽田空港のRW34Rへのコースをたどる。

相模湾、東京湾の独特の地形を包むかのように広がる
オレンジ色の街の灯りを眺めながら、
いよいよフラップを下げ、着陸のための降下に入る。

やがてギアダウンした飛行機は、
大きな入江の上空をすべるように
着陸の最終段階へ向かう。

旅の終わりは、輝く光の海へ、
優しく愛撫するようなランディング。

夜間飛行は、ファーストクラスやグリーン車の旅よりも
贅沢な旅かもしれない。
コメント (4)
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