かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

渡辺松男の一首鑑賞 308

2016年04月29日 | 短歌一首鑑賞

 渡辺松男研究37(16年4月)
    【垂直の金】『寒気氾濫』(1997年)127頁
     参加者:石井彩子、泉真帆、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆
     司会と記録:鹿取 未放

308 いたずらにからだを張りてしまいたる柘榴が口をあけて実れり

      (レポート)
(解釈)無用に体を張って頑張ってしまった柘榴なのだろう。ぱっくりと口をあけて、実っている。
(鑑賞)上の句は、職場で精魂つかい尽くした作者とも、治療で苦しむ作者ともとれる。口を開けた放心状態でいながら、木に実っているのが切ない。(真帆)


      (当日発言)
★童話で腹が裂けてしまった蛙の話がありましたが、それを思い出しました。いたずらに体を張ったりしない方がよいと。(慧子)
★私には柘榴って非常にグロテスクなイメージがあります。それが実っている状態。人間でしょうか?(石井)
★無様ながら、それが世界に適応している形という。(慧子)
★仕事で成功しているんだと思います。(M・S)
★ふつう柘榴って口開けてはらわたを出してとか悲惨な感じですよね。それを体を張るという。それは成功したかしないかではなく
 て、ただ口を開けて実がなっているよという。(鈴木)
★ユーモラスに歌っていますよね。この歌は社会的な成功とか失敗とかは関係なくて、おまえ頑張っちゃたねって。滑稽だけど一
 生懸命で楽しい姿。(鹿取)
★私は、おいしい実りを得る為には体を張らないとダメだよと教えている歌と思います。(M・S)
★歌の解釈は個人の自由ですけど、歌は倫理とか教訓ではないので。まあ、そう思って歌作ってい る人も希にいるかもしれませ
 んが、松男さんの歌は倫理とか教訓とは無関係です。(鹿取)


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