渡辺松男研究37(16年4月)
【垂直の金】『寒気氾濫』(1997年)126頁
参加者:石井彩子、泉真帆、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:泉 真帆
司会と記録:鹿取 未放
306 点滴の間にうかびたる銀漢の遠くに杉は凍裂をしぬ
(レポート)
(解釈)点滴をうたれている間に作者は天の川を見た。そのずっと先に、一本の凍裂してしまった杉が見えるという。
(鑑賞)あまりの高熱にチカチカしてしまうのかもしれない。冬の木が凍り、内側の水分が凍り、膨張し、身体を裂いてしまう。作者の心身の辛い場面をおもう。(真帆)
(当日発言)
★点滴の間って時が過ぎているような過ぎていないような微妙な時間の移りですよね。自分は点滴を受けているけれど、厳しい現
実が彼方にはある。宇宙のようなことを暗示しているのかなあ。(慧子)
★「うかびたる」だからたぶん天の川は現実に見えているのではない。そしてもっと彼方に杉が凍裂していく姿がくっきりと見え
ている。それは苦しい心身が脳にそういう像を結ばせているんですね、というかそういうふうに解釈できるように作られている。
凍裂する杉の像がとても清冽で、この像の出し方が上手だなって思います。(鹿取)
★幻覚を見てそれを表現していらっしゃるのかなと。すごいなあと思います。普通の状態じゃこんな歌できませんから。(石井)
★自分が杉とは思われませんか?(真帆)
★それは自分自身を投影しているんでしょう。(石井)
★私は宇宙にはあれもこれもあるって、この人は思っているんじゃないかなあ。自分はこうしてうつらうつらと点滴を受けている
けれど向こうでは杉が凍裂している、そんな厳しさもある。(慧子)
★私は麻薬とかそういうものを飲みながら書いた人の詩を読んだことがありますが、それに通じるところがあります。(石井)
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