かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠367(中欧)

2017年12月18日 | 短歌一首鑑賞
 馬場あき子の外国詠51(2012年4月実施)
  【中欧を行く ドナウ川のほとり】『世紀』(2001年刊)P96~
   参加者:N・K、崎尾廣子、鈴木良明、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:渡部慧子
   司会と記録:鹿取未放

367 影響力少なきゆゑ伝承は安らけし漁夫の砦に菩提樹は散る

     (レポート)
 後世の歴史に、そのことはあまり「影響力」をのこしてはいないらしい。先に書き記した内容から考えても「漁夫の砦」の「伝承」は慟哭や怒りを伴って思い起こされるものではないらしい。そんな漁夫の砦に「菩提樹は散る」のだが、葉ではなく細かな黄の花であろう。それが散って土に還ってゆく。「伝承は安らけし」とは、樹木の時間のようななりゆきであろう。(慧子)


     (当日発言)
★何の影響だろうか、分からない。(藤本)
★現代への影響。(慧子)
★同じようなことがいつの世も繰り返されていることを言っているのか。(崎尾)
★「漁夫の砦」に残されている伝承は、それほど大事件では無かったので、いまは静かな風景の
  中にあって安らかに菩提樹が散っているということだろうか。(鹿取)


      (まとめ)
 「伝承は安らけし」は、遙か昔だから安らかなのか、もともとそれほど残虐なことがらではなかったのか。十三世紀、モンゴル軍は残虐を極めたというからどうだろうか。もっともナチスやソ連軍のこともまだ近い過去であるから、とても「安らけし」とは振り返れないだろう。何か漠然としているが、レポーターの言うように「樹木の時間のようななりゆき」と受け取っておきたい。(鹿取)