かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠360(中欧)

2017年12月09日 | 短歌一首鑑賞
 馬場あき子の外国詠50(2012年3月実施)
  【中欧を行く 秋天】『世紀』(2001年刊)91頁~
   参加者:N・I、K・I、崎尾廣子、曽我亮子、藤本満須子、
       T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:崎尾廣子
   司会とまとめ:鹿取未放
   
360 つばさ大きく傾けてドナウ越えたれば楽音に似たり秋天の藍

     (まとめ)
 躍動感に満ちた歌である。美しい藍色の秋空に翼を大きく傾けてドナウの上を越えてゆく飛行機のダイナミックな感じに、いよいよ目的地が近づいた心躍りが感じられる、「楽音」とひっくり返した感覚も気分良く響く。(鹿取)


      (レポート)
 この初句は歌の調べを静かに雄大に奏で始めている。その調べは2句へと続き大河ドナウ越えを楽しく奏でる。初句の「大きく」と相俟って飛行機ならではの優雅な姿が見えるようだ。開放感に浸っている様子が伝わってくる。3句でこの調べに休止符を打つがその余韻は4句、5句へと残り、空中にあっても手の届かない天の藍の色を深めている。「楽音に似たり」とあるがどんなリズム、メロディであろうか。横笛の澄んだ高い音をこの藍に聞くようである。 (崎尾)
  ドナウ川:ヨーロッパの東南部を流れる川。ヨーロッパ第二の国際河川。ドイツの南西部のシ
       ュワルツワルトを水源とし、オーストリア、チェコスロバキア、ハンガリー、ユー
       ゴスラビア、ルーマニア、ブルガリアを流れて黒海に注ぐ。英語名ダニューブ。
  国際河川:数カ国の国境となり、また数カ国にまたがって流れる河川で国際条約により、全て
       の国の船舶の自由航行を認めたもの。(言泉 小学館)
    
 ※レポーター引用の辞典は古いもので、「ユーゴスラビア」は現在「セルビア共和国」と「モン
  テネグロ」となっています。(鹿取)


     (当日発言)
★シベリアからハンガリーに至ると全く違う世界になる。波がきらきらしている。(曽我)
★「楽音」は藍色の秋空に音楽的なイメージを感じているので、どの楽器のどの音かなど限定しな
 い方が雄大な感覚が出るだろう。(鹿取)