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『国土学再考』、紛争史観と自然災害史観(1)

2010年12月09日 | 侵略を免れた日本
「かわいい」文化と、古来からの日本の平和との関係を考えるうえでとても参考になる本を最近読んだ。日本を「自然災害史観」の国ととらえ、それ比較して大陸の歴史を「紛争史観」からとらえている。大石久和氏の次の本だ。

◆『国土学再考 「公」と新・日本人論

著者によれば西洋文明は、国土的な条件と歴史の違いから、日本社会のルールや思考法とは大きな隔たりがあるという。西洋文明は、シュメール文明という源流の時代から、都市に城壁を築いて暮らしていた。その城壁造りや見張りや守りの分担などで厳しいルール伴う社会を守ってきた。周辺の自然環境は厳しく、他民族との死ぬか生きるかの戦いの中で、常に備えを万全にしておく必要があった。「皆殺し」への恐怖を前提にした思考法が、現在の世界文明の礎になっているというのだ。

これに対して基本的に温暖湿潤な日本列島は、乏しい食糧を集団どうしが常に争い合う必要があまりなかった。その代わりに自然災害による定期的な打撃を受けてきたのだが、これは守りを固めてもどうしようもなく、ただあきらめ、受け入れるほかなかった。

こうした歴史を持つ国はまれだ。たいていの民族は歴史上、紛争によって皆殺しに近いことをされたり、その恐怖に直面したりしている。日本のように「皆殺し」が天災によるものしかない国は、世界中にほとんど見当たらない。

こうした日本の特異な環境は、独特の無常観を植え付けた。さらに日本人の優しい語り口や控えめな言語表現、あいまいな言い回しは、人間どうしの悲惨な紛争を経験せず、天災のみが脅威だったからこそ育まれたのだという。

以上の事実と現代日本の「かわいい」文化とがどのように関係するのか。もちろんこの本はそのような話題に触れているわけではない。しかし私には、こうした日本の独特な環境と歴史が、これだけ「かわいい」が強調される現代のポップカルチャーにも、何かしら深く関係しているように思えてならない。次回このテーマをもう少し掘り下げてみたい。

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《関連図書》
★『ユニークな日本人 (講談社現代新書 560)』(G.クラーク)
★『日本の文化力が世界を幸せにする』(日下公人、呉善花)

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