BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBO世界フェザー級タイトルマッチ

2010-11-08 22:46:36 | Boxing
王者 ファン・マヌエル・ロペス VS 挑戦者 ラファエル・マルケス

ロペス 8ラウンド終了TKO勝利

考察 ~ロペス~

ワン・ツーからの返しの右フックと接近戦でのボディ連打とショートアッパーだけで
ボクシングを構築しているが、それが長所にも短所にもなっている。
Sフェザーまでの三階級を目指すと公言しているだけあって、
リング上でマルケスと相対した時の体の厚みが違った。
若さ、体力、スタミナなどのフィジカル面での総合力で最後は押し切ったが、
呼び込ませての左スト>右フックの黄金パターンが最近崩れており、
前に出ようとする気持ちが強すぎるように思う。
あれでは被弾がモロにカウンターとなり、もともと強くないアゴの弱さを
さらにさらけ出すことになるだろう(回復力はあるが)。
軸をしっかり作り、キャンバスを踏みしめての連打はバネが効いているが、
体に一本筋を入れ過ぎているせいで逆に顔面と体幹の柔軟さが失われ、
乱戦時の打たれ弱さを倍加させているようにも思える。
スリリングな展開を常に提供しつつ相手を捻じ伏せるのか、
それともどこかで壮絶な失神KO負けを喫するか。
ガンボア戦が実現すれば後者になりそうな気がしていたが、
そのガンボアも前戦では出来は良くなかった。
ポンセ・デ・レオン戦を間に挟めれば自らの理想型を取り戻せそうだが、さて。


考察 ~マルケス~

サウスポーに、というよりもロペスに対する位置取りを誤っていたようだ。
左フックを相手の右フックに合わせるのは危険すぎる選択で、
4ラウンドのように左に対して左を合わせればかち合うのだ。
対バスケスⅡで自身がもらったパンチだ。
左足を相手の右足のアウトサイドに置くのは自身の左を鋭角に打ちたいからだろうが、
5ラウンド以降は相手がそれに付き合ってくれず、右をフックではなくジャブ主体に
切り替えたことでピンチに陥り、チャンスも訪れた。
ワン・ツー、スリーと飛んでくる右フックはカウンターのチャンスではあったが、
最初の2発で体を寄せられ、体重差で押し切られた。
一番の敗因は実はウェート(計量後の戻しの大きさ)だったように思われる。
右ストレートで相手の前進を止める手段を最初から放棄し、
乱戦でのカウンターの右も単発でしかなかった時点で体力勝負にならざるを得ず、
残念ながら若さとスタミナに屈することとなった。

それにしても初回ゴングから腰が軽く、地に足がついていない感じがありあり。
歴戦のダメージが完全に体に染み込んでいて、D・ディアス戦のモラレスのようだった。
西岡戦が観たかった……と思っていいのだろうか。

Sミドル級12回戦 SUPER SIX GROUP STAGE 3

2010-11-08 21:45:12 | Boxing
アラン・グリーン VS グレン・ジョンソン

ジョンソン 8ラウンドKO勝ち

考察 ~ジョンソン~

アゴとテンプルのガードを忘れず、ジャブ、ストレート系に対しては
1ラウンド半ばにはスリップで対応するようになった。
攻撃においては泥臭さを体現する打たせて打つを実行。
自身の距離を作るのに相手に先手を取らせるという逆説的なファイターは
A・アブラハム、B・ミントらがいるが、ジョンソンの間合い作りは
目による誘導とロープ際での足捌きによるところも大きい。
年齢的に峠を越えようが、戦績に黒星が刻まれようが、
愚直さを失わないところはアメリカに居を構える黒人らしからぬらしさと言える。
老いを感じさせるならばヒロイズムやセンチメンタリズムを見る者に与えるだろうが、
ホプキンス同様、ジョンソンにもそれがない。
勝負所でのパンチの選択と当て勘は歴戦の猛者にして持ちうるもの。
ダメージを最小限に収め、メンタルの波もまったくと言っていいほどない。
前戦の敗北などなんのその、勝負師としての勘は冴えわたるばかりだ。

考察 ~グリーン~

スピードを武器に上回ろうという目論見がそもそも間違いだったような気がしてならない。

理由その一
グリーンは体のスピードに特に恵まれておらず、
ハンドスピードもトップ戦線では並みレベルだから。
理由その二
ジョンソンは自分よりも速い選手を全く苦にしないから。

ジャブで距離をとりながらあれこれと考える様子を露骨に見せていたが、
ファーストコンタクトで自身のボクシングがこの相手に通用しないことを
肌で感じてしまったのではなかろうか。
ジャブ、ストレートをスリップあるいはブロックされ、
左フックがダッキングされたことでどんどん持ち駒を減らされた感がある。
両フックのボディへの連打も合間により鋭角的なショートパンチをねじ込まれ、
まさに接近戦では格の違いを見せつけられた。
スイング気味(こちらから見て右に流れる)のワン・ツーで再三捉えられたが、
斜に構えすぎるとジャブが打てなくなるのを見透かされた瞬間のKOだった。
ダウン時も即座にラビットパンチをアピールしていたが、
アンダー・ジ・イヤーだと思うけどな。

素材としては悪くないが調理の仕方が悪いのか。
それとも単に相手のレベルの高さゆえに見栄えが悪くなるのか。
その両方かな。
褒められるのは厳つい顔だけか。