BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

Sフライ級10回戦 亀田大毅VSブンブン東栄

2009-05-14 20:44:44 | Boxing
亀田大毅 ユナニマスで勝利

考察 ~大毅~

嗚呼、大毅よ、なぜに以前のボクシングに戻ってしまったのか。
ワンディ戦のあのジャブからのコンビネーションは何だったのだ。
アゴを引き、テンプルまでを高くガードし、異様な猫背で歩み寄る亀田スタイルが
どれだけ醜悪で、どれだけ滑稽に映るのか、想像したことはあるのか?
ボクシングは端的に言えば美学の勝負なのだ。
見栄えの良し悪しは二の次で、問題はその姿から意志を感じさせるかどうかなのだ。
自身と同階級の日本/世界ランカー相手に亀田スタイルを採用すれば、
それはそれで一つの美を形作るだろう(内藤戦では自爆したが)。
だが、小松の時ならぬ死があったためとはいえ、
ミニマム級を引っ張りだしてきて、「なんで倒れへんねん?」という
そんな当惑と苛立ちを発散させる(そう見えた)ようでは、
せっかく上がりつつあった評価もすぐに堕ちてしまう。
なにもジャブから組み立てるボクシングをしろと強制しているわけではない。
単発で試合を組み立てるのもありだ。
だが、それならしっかりとKOしてみせろと言いたい。
ノーモーションの右(実況うるさすぎ・・・)を自身に課していたのかもしれないが、
なぜそこから得意の左フックにつなげられない?
突き刺した右ストレートを肩を軸に引きながら、反動を左半身に伝え左フックで
相手のボディもしくは顔面を捉える。
これはマルガリートがシントロンとのリマッチでKOを呼び込んだパターンで、
これの左右逆バージョンはドネアが時折見せるコンビネーション。
ボディメカニクスの基本だが、使い手によっては奥義ともなる。
今のレベルでで自身をチャンピオンであるかのごとく語るのは笑止千万だった。

考察 ~ブンブン東栄~

元ヤクルト・スワローズの池山、あるいは往年の名テニス選手ボリス・ベッカーなど、
ブンブンをニックネームにする選手は競技を問わず現れるが、
彼らに共通しているのは破天荒っぷりだ。
体がねじ切れるかというぐらいバットを振った池山に
長身から当時としては破格のスピードサーブを打ち込んだベッカー。
管理人と同世代か上でボクシング以外のスポーツも観るボクシングファンなら
良く知っていることと思う。
ではこのボクサー、ブンブン東栄はどうか。
フィリピン人らしく体に柔軟性があり、コンビネーションも打てる。
呼び込む姿勢からアッパーを一閃するなど、負け役でもない。
おそらく相手との体の厚みの差から下がらざるを得なかっただけで、
ミニマムまたはLフライなら、痩せ型で手長足長な体形を活かした
ボクシングができるはず。
ジャブを多用しないあたりフィリピン人だが、左右フックの連打はリズミカルで、
左構えからの大きな右フックはそれによって体が流れることもなく、
柔軟性だけでなく下半身の土台も併せ持つことを証明していた。
戦績は勝ったり負けたりだが、これはジャーニーマンの宿命か。
噛ませ犬が噛みついたのではなく、不利を承知で雄々しく抗ったということ。
日本で得た知名度を武器に、後楽園ホールを庭とすることができるか。

WBA世界フェザー級暫定王座決定戦 ユリオルキス・ガンボアVSホセ・ロハス

2009-05-11 21:47:38 | Boxing
ガンボア 10ラウンドTKO勝利

考察 ~ガンボア~

フェザーでこの体格ではどうしでも見劣りするが、
athleticismが群を抜いているため、ステップイン&アウトと
スウェーだけでディフェンスになってしまう。
この階級ではリーチにも恵まれていないが、
だからこそ回転の速い連打も可能となる。
右ストレートも左フックも急所をとらえれば
一撃で相手を眠らせるだけの威力を有している。
腰の高さが常に一定で、左右どちらの体側を軸にしても
バランスのとれたスタンスからパンチを繰り出せる。
素晴らしいアスリートだと言える。
7ラウンドからはかなり遊んだ感じだったが、
この男もまだ真の意味では試されてはいない。
粟生との統一戦(実現するのかWBAさんよ・・・)はアマ上がりの
エリートプロ同士の対決ということで大いに楽しめそうだ。
ただ、ガンボアのような自身の勢いとスピードに酔うタイプは
クリス・ジョンのような淡々とプランを展開、実行してくるタイプに
為すすべもなく敗れるような気がしてならない。

考察 ~ロハス~

身長とリーチのアドバンテージを有していたが、
相手のスピードと振りの鋭さに惑わされたか煽られたか、
自分のパンチも強く速く打つことを意識し過ぎた。
結果、打ち下ろしの右、振り回す左ともに普段よりも大きな軌跡を通り、
ガードへの移行がその分だけ遅れてしまった。
相手はそのわずかな時間差につけこめるだけのagilityとquicknessがあった。
ボディワークも上手く、ジャブも長く、カウンターもとれるのだから、
サウスポーらしい試合運びに徹すればよかったのだが、
それをさせないだけの能力が対戦相手にあった。
右ジャブをいつ打とうかと悩み逡巡しながら、次々に被弾を繰り返したのは
プランBを持っていなかったことの証明だ。
やや消化不良気味のストップだったが、あのストップのタイミングは妥当。
だが、ロハスはまだここで引退する必要などはなく、
若手の壁としてあと5戦は戦えるだろう。

WBC世界ライト級王座決定戦 エドウィン・バレロVSアントニオ・ピタルア

2009-05-11 21:17:53 | Boxing
バレロ 2ラウンドTKO勝利

考察 ~バレロ~

パンチの重さとキレは文句無し。フィジカルの仕上がりも上々。
当て勘も頭抜けているし、相手の力量も十分にあった。
にもかかわらず、手放しで称賛できないのは何故か。
サウスポーにおける右フックはワン・ツー・スリーのとして確立されて久しいが、
型破りなファイターのバレロにしてもこれは当てはまった。
ジャブは肘を屈曲させた状態から前腕をねじ込む打ち方で、
右足の踏み込みは力強く、引きの速さもある。
悪いところが見当たらないが、これは欠点がないのではなく、
真の強豪との試合で試されていないだけだとの見方があるからか。
打たれ強さや駆け引きの面ではまだ未知数で、
それゆえに本人が望むビッグマッチを手繰り寄せるには、
目の前の相手を確実にキャンバスに這いつくばらせていくしかない。
もしも現時点でパッキャオと戦えば大激戦になる予感がするが、
マルケス兄には大差判定負けするビジョンが浮かんでくる。
プレスコット戦も駄々をこねずに諾々と戦い、淡々と相手を沈めればそれでいいのだ。

考察 ~ピタルア~

サンタクルスを屠った試合は見事だったし、
ここ数年の連勝とKOで年齢による衰えも影を潜めていた。
一発で明確なダメージを与えられるだけのパンチもあり、
当てる技術もあり、相手に呑まれないだけの精神力もあったが、
この試合では初っ端から面食らったのではないか。
「ちょっと待て、こんなパンチ力の持ち主が相手とは聞いてないぜ」って感じで。
倒さなければ倒されるという強迫観念に囚われたがゆえの序盤KO負けで、
腕っぷしに自信があったがゆえに勝負に出て、勝負に負けたわけだ。
新鋭に喰われるベテランという役回りをしっかりとこなしてくれた。

ライト級10回戦 マイケル・カチディスVSヘスス・チャベス

2009-05-11 20:45:03 | Boxing
カチディス 7ラウンド終了TKO勝利

考察 ~カチディス~

左ジャブ、左フックの精度に確かな成長を見せたが、
ある意味で欠点も伸ばしてしまったと言える。
強いパンチを的中させたい意識が相当に強く、
左をガードに戻すタイミングが以前よりもさらに半呼吸遅れている。
ゆえに右をたびたび被弾した。
攻撃においては逆に相手の左ジャブを顔面でブロックし、
自身の右をクロスカウンター気味にヒットさせていく。
まるで矢吹ジョーのようだ。
それにしてもカサマヨルに沈められ、J・ディアスに明確に退けられたにもかかわらず、
この男のメンタルの強靭さはいったい何に支えられているのか。
川嶋勝重から一発を引いて連打型に改造したらこうなる、
というスタイル分析は容易だが、メンタリティを解剖することは難しい。
テクニシャンが主流となりつつある現代ボクシングシーンに逆行しているからだ。
陣営が先日、R・ハットンにラブコールを送っていたが、
実現すればガッティ×ウォードの再現になる可能性もあるカードだ。
その前に壊れなければいいのだが・・・

考察 ~チャベス~

序盤こそ技術で試合をコントロールする予感を漂わせたが、
相手の間断ないプレスと連打に肉体と精神、両方のスタミナが尽きたようだ。
パンチに自信はある、技術ならば優っている、フィジカルもまだまだ若い、
という自負もあったのだろうが、相手がターミネーターではしょうがない。
ベテランの妙味は十分に堪能させてもらったが、
ベテランゆえのあっさりとした負けに腑に落ちない感も残った。
この男も古豪というポジションに落ち着いたがゆえに、
冷静さが闘志に勝ってしまったか。

さらばデラホーヤ

2009-05-07 22:42:32 | Boxing
チャベス戦、クォーティ戦、ウィテカー戦、トリニダード戦、バルガス戦、ホプキンス戦、
シュトルム戦、マヨルガ戦、メイウェザー戦、そしてパッキャオ戦と、
思い出は尽きない(といっても半分は父のビデオで観たのだが)。
believerもいればnaysayerもいる。
それはある意味でスーパースターの宿命だし、
デラホーヤこそがそれを決定づけたとも言える。
メキシカンは2度引退するというが、もうリングに帰って来てはいかんよ。
ボクサーは極端な話、名勝負一つで何十年も語り継がれる。
デラホーヤほどの実績と功績、そして晩節の汚れがあれば、
今後数百年は人間らしいボクサーとして尊敬を得られるはずだから。

しかしWOWOWも渋いね。
デラホーヤへの惜別テーマがPuddle of Muddの"Blurry"とはね。
好きなpassageをいくつか。

I stumble then I crawl
つまずき倒れた俺は立ち上がろうともがいたんだ

Can you take it all away?
お前に治せるのか?
Can you take it all away?
この痛みを全部取り除いてくれるのか?
When you shoved it in my face, this pain you gave to me.
この痛みはお前が俺の顔面にぶちこんでくれたものなんだぜ…


ボクシングかくもあらん。

WBC世界Sフェザー級 ウンベルト・ソトVSベノワ・ゴード

2009-05-07 21:54:33 | Boxing
ソト 9ラウンドKO勝利

考察 ~ソト~

ジャブ、ジャブ、ストレートを基調に一気に懐に飛び込み、
打ち合いに巻き込みたかったのだろうが、
相手のelusivenessにプランを崩された。
中盤からは右ストレートから左フック、単発の左アッパーを主武器に
被弾を繰り返しながらもタフさに任せて強引に攻め続けた。
あの右アッパーはずっと温存していたパンチ。
おそらくセコンドから指示があったのだと見る。
現Sフェザーでは随一の実力者で、パンチのキレと重さもトップクラス。
ただし攻撃パターンが限定的で、グスマン戦の敗北はその限界を露呈した試合だった。
リナレスがプランを練り上げれば十分攻略可能な選手だ。
帝拳はそんなマッチメークはしないだろうが。

考察 ~ゴード~

ボディワークもフットワークも巧みでカウンターも上手い。
自らの射程距離もよく理解しており、回転力もあり、当て勘もある。
しかし、パンチのフォロースルーとナックルの返しが全般的に甘い。
初回の被ノックダウンで相手を警戒したのもあるだろうが、
このスタイルは自身のボクシング哲学でもあるのだろう。
両腕を常にブロッキングに備えておきたいという意識が見え隠れしている。
パンチ力以外で勝負しようとし、かなりの程度まで実行できたが、
高いガードゆえにアッパーに沈む結果となった。
内山の世界前哨戦(先日やったばかりだが)で日本に呼べそうな気がする。

THE BATTLE OF EAST AND WEST

2009-05-03 17:23:20 | Boxing
IBO・Ring Magazine王者 リッキー・ハットン VS 挑戦者 マニー・パッキャオ

2ラウンド 2分59秒 パッキャオTKO勝利

HBOのインタビュアーがパッキャオを指してthis generation's Henry Armstrongだと
語っていたが、もはやそれだけの修辞を弄しても異論はどこからも出ないだろう。
K・チューのパンチにひるまなかったハットンを3度倒しての勝利は
ケチをつけようにもつけられない。
1ラウンドの冒頭こそハットンの圧力に押されたかに見えたが、
クリンチの際のもみ合いで打たれてもカッカせず、
クイックネスで冷静に距離を組み立て直し、
ジャブに自信をつけたハットンの接近に冷静に右フックを合わせていた。
最初のノックダウンはメイウェザーJrがハットンに浴びせた左フックの
右バージョンだと言える。
2度目のノックダウンはSバンタムからSフェザーまでで
猛威を振るったパッキャオ得意の突き刺す左。
最後のノックダウンは内藤が小松からダウンを奪った右フックを
左に置き換えてグレードアップさせたものだったように見えた。
ハットンが正統派ボクシングと相撲の両方を交えてきたのは想定の範囲内、
それに対するパッキャオの対応策もこちらの予想通り。
だが、結末の唐突さと鮮烈さにおいては長谷川VSマリンガを超えた。
メイウェザーJrの対デラホーヤ、対ハットンのパフォーマンスを
遥かに凌駕したパッキャオは、メイウェザーの復帰(VSマルケス兄とは!)が
実現した今でもパウンド・フォー・パウンド・ランクの1位の座を揺るぎないものとした。
2009年のKnockout of the Yearは(まだ5月だが)パッキャオに決定した。

下馬評ではややパッキャオの後塵を拝したBritish Hitmanだったが、
実際の試合では天と地ほどの力の差を見せつけられる結果となった。
勝っていたのは当日の体重と応援団の数ぐらいか。
ハットンとしては中間距離でボクシングをしては勝負にならないとことは
本人、メイウェザーSrを含めた陣営全員が覚悟していたはず。
ならばstreetfightまたはbrawlに引きずり込むしかなかったが、
もともと揉み合いになっても相手を打たないパッキャオだけに、
今にして思えばこれも実現不可能なプランだったんだな。
フィジカル面でのadvantageを前面に押し出そうにも、
相手のパンチの予想以上の切れと重さ、フットワークの軽さ、ボディワークの巧みさに
面食らったというか翻弄されっぱなしだった感がある。
あの失神KOはメイウェザー戦以上のトラウマになるだろう。
メイウェザー戦はコルテスに割って入られたという見方も不可能ではないが、
今回のKOは、50カウントぐらいは入りそうなKOだった。
もともと引退も視界に入っていた選手だけに素直に引退したとしても
引き際を誤ったとは誰も思わないだろう。
今後も戦い続けるなら、新鋭の踏み台にされる運命が待っている。

PS.
予想は勝利という結果だけが当たったが、
我が目の不明を恥じる気になれない。
パッキャオがあまりにも予想以上すぎたからだ。
いや、予想通りではなく、予想以上の試合を自分は望んでいたのではなかったか?
なにやら上手く言葉にできない。
一つだけ確かなのは、今感じている気持ちは純粋な感動だということ。

Kudos to Manny Pacquiao.
You are so much the Fighting Pride of the Phillippines
as the Fighting Pride of Asian Boxing History.
There can't be too many accolades to truly appreciate
what you've shown to all those who love the sport of boxing.