BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

ミドル級12回戦 ポール・ウィリアムスVSロナルド・ライト

2009-05-18 22:33:01 | Boxing
ウィリアムス ユナニマスディシジョンで勝利

考察 ~ウィリアムス~

リアルタイムで観てはいなかったが、こいつはやっぱりハーンズより強い。
これだけの身長とリーチでインファイトまでこなすのは、
boxing abilityの高さを物語る。
ポンポンと手数を出すことでリズムを構築しているが、
フットワークとボディワークも巧みで、単発は被弾するが、
相手の打ち終わりを常に観察し、虚(フェイント)と実(パンチ)を織り交ぜたボクシングは
川嶋I~ムニョスあたりのミハレスを彷彿させる(現ミハレスはあの頃とは別人)。
というかこれだけの手数であれだけフェイント交えるか?
通常これほどのリーチなら、ショートの左右連打はナックルが返らないslapになるが、
この男には当てはまらず脇、肘、手首、ナックルまでのcoordinationの良さを証明する。
下半身に着目すれば右膝と左足首の合理的な使い方が目を引く。
右フックとダックしながらのピボット、ジャブ・ジャブ・ストレートは
ボクサーのボディメカニクスのひとつの到達点を表わしているようにすら思える。
この男がミドルで4団体統一をぶちあげればファンも乗るしかない。
シュトルム、パブリック、アブラハムの3人の牙城すら危ういかもしれない。

考察 ~ライト~

spoiler(最近ではネタばれの意味で使われるが)と辞書で引けば、
ロナルド・ライトの挿絵が出てくるのではないかという時期もあったが、
さすがにホプキンス戦以来のリターンでこの相手はきつかったか。
もともとブロッキングの技術でのし上がってきた選手だけに、
そのメンタルは常にディフェンシブ。
それではこの懐の深いのに好戦的なボクサーの勢いを殺ぐことはできない。
芯に来るようなパンチはそれほどもらわなかっただろうが、
自身のガードの隙間に次々に放り込まれるパンチには面食らっただろう。
予期しないパンチのaccumulationは肉体にガーンと来るというより
精神をじわじわと蝕む。
ライトも終盤には新旧交代(といっても最近の旧は新に対して妙に強いが)
の時期が到来したことを肌で感じたのではなかろうか。

WBA世界Sバンタム級 リカルド・コルドバVSバーナード・ダン

2009-05-18 22:23:01 | Boxing
ダン 11ラウンドTKO勝利

考察 ~ダン~

タフネスに自信があるのだろうが、あまりにも危険なファイトスタイルだ。
左ガードの置き所に一貫性が欠けており(そう見えた)、
サウスポーの右フックを次々に浴びた。
ボディへのダメージの蓄積から頭部への被弾でダウンさせられたが、
しかし、その闘志はいささかも衰えることを知らず、
サウスポーの右フックにオーソドックスの左フックで対抗。
結果オーライに近いが、この選択が奏功した。
くにゃくにゃ柔らかく、slickなボクサーを捕えるのは誰にとっても難しい。
ならば肉体ではなく精神にダメージを与えるべきだが、
それには互いのサンデーパンチをぶつけ合い、明確に上回ることが求められる。
それを実行できるだけの精神力は称賛に値する。
長く防衛する雰囲気は感じられないが、体さえ壊れなければ、
Irish Warriorとして今後も名勝負を生み出せる。

考察 ~コルドバ~

パナマ人ボクサーというのは見れば見るほど
自らのフィジカルを理解していると感服する。
柔軟性と反射神経に優れ、ディフェンスは距離感とボディワークで構築。
攻撃はジャブを基軸に脇を開いてスイング気味に振り回す右フックと
脇を閉めて小さく振り抜く左フックが持ち駒のコンビネーションで、
どれもサウスポーの定石だが、独特なのはパンチの引きの軌道だ。
伸びる右ジャブで顕著だが、高く掲げた肘から放たれながら、
引きの軌道は大きく下方に弧を描く。
フリッカーの打ち出しを逆回しに見るようだ。
3ラウンドに喫したダウンはそこに左フックを合わされたもの。
典型的なdelayed actionだったが、リズミカルなムーブと呼吸により、
そのダメージも短時間で回復できた。
だが相手のresilienceが予想以上で、泥沼の根性勝負に巻き込まれた結果、
大逆転負けを喫することとなった。

PS.
今日のレフェリーの試合裁きは見事だった。
後楽園や府立体育館でもこれぐらいのレフェリングが見たい。
もちろん試合内容もこれぐらい熱ければ文句はない。