BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

L・ヘビー級12回戦 ケリー・パブリックVSバーナード・ホプキンス

2008-11-17 23:17:26 | Boxing
ホプキンス 大差判定で勝利

ジョー小泉じゃないが、ホプキンスには「空気読め!」と言いたい。
いや、ホプキンスはそういう声をパワーに変えられるんだ。
まあ、そういうふうに納得しておこう。

この日のホプキンスはトリニダード戦の頃の彼のようでもあり、
川嶋と初めて戦った時の徳山のようでもあった。
つまり、脚を決して止めず、左ガードは下げたまま、
相手のサンデーパンチ(ティトの左フック、パブリックの右スト)をいなし、
自分主導のクリンチに持っていく。
パブリックを単純なヘッドハンターと見抜いてからはまさにやりたい放題。
パンチを上下に散らし、ガードの隙間にねじ込み、バッティングこそ多用しなかったものの、
ダーティテクニックも随所に織り交ぜた。
レフェリーの死角で堂々と相手の足を打つのは亀田ぐらいだと思っていたが、
ローブローやラビットパンチのさり気なさには驚きを通り越して呆れてしまう。
ショートレンジでの右カウンターは手打ちに見えるが、アレはアレで効くよ。
物理的な衝撃力が増す原理のカウンターも効くけど、
見えない角度から=歯を食いしばれないパンチってズキズキ残るし、ナーバスになる。
最終ラウンドのゴング後の挑発は明らかにパフォーマンス。
カルザゲに敗れた後のマッチメークにしては厳しいものがあると思ったが、
こういう場面で必ず空気を読まない男だということを忘れていたよ。
亡霊も人間だった、そして死刑執行人が処刑した、などという話ではなく、
「ホプキンスは人間じゃない、妖怪だ」というところまで株を取り戻した。
このホプキンスを『アメリカの妖怪』とするなら、
ケスラー、ホプキンスを立て続けに破ったカルザゲも『ヨーロッパの妖怪』か。

デラホーヤの後継者としてアメリカボクシングの期待を背負ったパブリックだったが、
6ラウンドから「俺、なんでこんなオッサンと戦ってるんだ?」
というふうに後悔したのではないだろうか。
打ち合いになれば根性勝負で勝てる、判定になってもスタミナでは優る、
キャッチウェートも減量苦から解放されてコンディションは五分以上と
観測していたと思われるが、駆け引きの面で大惨敗。
ビシ、ビシ、ドーンで勝てる相手ではなかった。
懐に入られてのショートパンチの上下の打ち分けとダーティテクニック、
そしてelusivenessに精神的にかき乱され、ダメージの蓄積で肉体も思うように動かせなかった。
3ラウンドからはグローブを平を相手に向け、パンチを打つことよりも
パーリングする意識が支配的になり、セコンドの声も耳には入るが、
脳には届かない状態。
この一敗は本格的なスーパースターとしてのキャリアを構築する上で分水嶺になる。
「あんな老いぼれを仕留められなかった」と自分を責めるか、
「勢いとパワーだけじゃダメだ」と悟るか。
たとえ逃げたと見られても、A・アブラハムとの統一戦は先延ばしした方がいい。

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