BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

ライトフライ級10回戦

2009-12-29 21:29:28 | Boxing
国重隆 VS 井岡一翔

井岡 判定勝利

考察 ~井岡~

パンチは硬いが軽い。
ハンドスピードとコンビネーションを眼目にした攻めゆえかもしれないが、
一つ一つのパンチに足がついて来ず、punishmentとはならない。
対照的に中盤以降に足を止めて呼び込んで見せるカウンターは素晴らしく、
右のショートアッパーは肘と前腕の角度が決まり、腰の回転もついてくる。
疲れを見せた中盤以降のジャブはしならせないフリッカーで、
これを軸にアウトボクシングした方がはるかに勝利に資すると思わせる。

次に世界戦?
今のままでは、たとえばビロリアあたりには眠らされてしまう。
KOにこだわりを見せるのは結構だが、路線と本人の資質が噛み合わない。
一発もクリーンヒットをもらわず判定勝ちするなどの課題があってもいいのでは?

最後に…
意図的に肘と肩を使うのはやめよう。
そういうのは20代半ば以降でやってくれたまえ。

考察 ~国重~

ソーサ戦で見せたようなボクシングの方が結果的にはダメージが少なかったのでは?
相手はオフェンシブに来たが、実は待ちのボクシングの方が上手く、
低い姿勢からクリンチに行く際にもらった左フックよりも、
入り際の右ショートの方が効かされた。
序盤にちょこちょこ当たった左ストは、皮肉にも相手が失速し始めた中盤からは当たらず、
踏みこんでのダブルの左も全く機能せず。
かなり打たれ弱さを見せてきたが、やはり世界戦敗退が尾を引いているか?
クリンチ戦法を封印してもこの夜の相手には敵わなかったと思うが、
結果的に相手のポテンシャルに新たな可能性を示した点で
ベテランの役割は果たしたと言える。

WBA世界Sウェルター級暫定タイトルマッチ

2009-12-29 20:57:38 | Boxing
王者 石田順裕 VS 挑戦者 オネイ・バルデス

石田 判定勝利

考察 ~石田~

相手はガードを高く保ち、べた足で追い掛けてきたので、
強いジャブを打ち落とすことで出足を止めにかかったが、これは危険な選択。
接近戦のボディ攻撃交換を見て、終盤の嫌倒れを予感したが、
これは王者の様子見だった。
ジャブの引きに合わせて右から左と切り返されたが、
その距離さえ見切ってしまえば、あとは余裕の展開。
相手の中盤からのサウスポーへのスイッチも手数こそ減らしたものの、
パンチの的中率はキープできた。
解説はサウスポーを得意というが、
これはサウスポー対策が上手いというだけで
サウスポー攻略に長けているというわけではない。
それでもフットワーク、ボディワーク、ブロック、パリーと
総合的にディフェンス技術に熟達しており、果敢に打ち合うハートもある。
ノーガードで誘った時、徳山のシルエットが見えた。
本人は納得しないだろうが、陣営としてもファンとしても納得の完勝と言える。

石田はマスクも良く、受け答えもはっきりしっかりしており、
ボクシングにも派手さはないが、堅実さがあり、
プランを実行する忠実さと修正する柔軟さがある。
このような優れたボクサーが日の目を見ないのはおかしい。
暫定という名にばかりこだわり、実を見ようとしないのは理不尽だ。

考察 ~バルデス~

スイッチの意図がよく分からない。
相手のジャブがうるさくなったからだと思うが、
右ストレートには下がるだけとなってしまった。
Sウェルターとしては標準的な体格で、
防御はブロッキングに依存するが、リターンのパンチが伸びず、
懐の深い相手は自然苦手となる。
踏み込み、飛び込みが伴わないパンチは全てスイング気味となり、
王者の心胆寒からしめるものたりえなかった。
34歳というものの、バネがきいたパンチは切れ味抜群に見えて実は重さ重視で、
こういうパンチはブロッキングの上を叩けるうちはいいが、
空振りを繰り返すと異様にスタミナをロスする。
終わってみれば追い足なし、一発なしで王座初防衛の相手としては
全く強くなく、かといって弱過ぎることもなし。
ダウン後の猛反撃、そして最終ラウンド残り20秒の魂の打ち合いと、
敵地でしっかりと見せ場も演出してくれた。

PS.
インタビュアー下手過ぎ。
「相手はいかがでしたか?」ってアンタ試合観てへんかったんかいな?
会場、そして茶の間のファンが知りたいのは、
どこで試合の流れを掴んだと確信したか、
相手のどのパンチが最も効いたか、
セコンドの指示は何だったのかetcなのだ。
プロ野球やサッカーのお立ち台でもしばしば見受けられるが、
日本のスポーツジャーナリズムはいつまで経っても成熟しない。

2009年 RECAPITULATION

2009-12-29 01:07:53 | Boxing
☆ Fight of the Year ☆

○WBA・WBO世界ライト級王座決定戦 ファン・ディアス VS ファン・マヌエル・マルケス
マルケス 9ラウンドTKO勝利

初回から試合終了までtop notchのドツキ合い。
連打と圧力の若武者と老獪にして稀代のカウンターパンチャーの対決は
ボクシング名勝負史に確実に記された。
ベテランと若人の意地とプライドのぶつかり合い以上に
技術、スタイル、コンディション、戦術の妙をたっぷりと味わうことができた試合で、
年間最高試合の栄に浴するに充分。
管理人「涼しい木星」は塩試合が大好きだが、
手に汗握る攻防白熱の試合も好きなのだ。

次点:ミドル級12回戦 ポール・ウィリアムス VS セルヒオ・マルチネス 
ウィリアムス 判定勝利

次々点:WBC世界ヘビー級タイトルマッチ 王者 ビタリ・クリチコ VS 挑戦者 ファン・カルロス・ゴメス
クリチコ 9ラウンドTKO勝利


☆ Knockout of the Year ☆

○The Battle of East and West マニー・パッキャオ VS リッキー・ハットン
パッキャオ 2ラウンドTKO勝利

HBOの実況が"There is no way Hatton can make it up from this!!"と
絶叫していた通り、あんなの喰らったら立てませんがな。
脳味噌はこうやって揺らせ、というお手本のようなワンパンチノックアウトで、
あれで脳に器質的損傷が生じていないわけがない。
脳は人体で最も重要な器官で、一般には脳細胞の特異性は理解されていない。
細胞の障害と治癒について脳と人体の他の部分ではシステムが異なるのだ。
ハットンの無事を祈ったと同時に、いつかさらに勉強して、
脳にダメージを与える危険性とそのことのボクシングにおける不可避性・必然性をものしてみたい。
うーむ、俺はなんでボクシングファンなんかやってるんだろうか?

次点:WBC世界Sバンタム級 王者 西岡利晃 VS 挑戦者 ジョニー・ゴンサレス
西岡 3ラウンドTKO勝利

次々点:WBC世界バンタム級タイトルマッチ 長谷川穂積 VS ブシ・マリンガ
長谷川 1ラウンドTKO勝利

SUPER SIX Stage 1 アルツール・アブラハム VS ジャーメイン・テイラー
アブラハム 12ラウンドTKO勝利


閑話休題。

ジョーよ、王者の敵地KO防衛で渡辺二郎を引き合いに出すなら
徳山昌守を忘れないで欲しかった。
国籍なんか関係ないやん…


☆ Decision of the Year ☆

○ OPBF東洋太平洋フェザー級タイトルマッチ 
王者 細野 悟 VS 挑戦者 榎 洋之
細野 判定勝利

新鋭がベテランを喰うのは日常世界のどこにでも転がっている風景で、
スポーツの分野では特に顕著だ。
だが、それがボクシングとなるとそこに生まれる勝者と敗者のコントラストは
歓喜と哀愁の度合いをいや増すことになる。
接戦の末の判定ならばなおさらだ。
榎というボクサーの生き様を少しでも知るものならば、
キャリア3敗目となったこの試合の判定を聞いた瞬間、
胸に様々に去来するものがあっただろう。
だからといって細野が敗者になってめでたしめでたしともならない。
採点競技はつくづく難しい。

次点:WBA世界ライト級タイトルマッチ 小堀佑介VSパウルス・モーゼス
モーゼス 判定勝利

次々点:WBC世界フライ級タイトルマッチ
王者 内藤大助 VS 挑戦者 亀田興毅
亀田 判定勝利


☆ Upset of the Year ☆

○ WBO世界ウェルター級タイトルマッチ 王者 ミゲール・コット VS 挑戦者 マニー・パッキャオ
パッキャオ 12ラウンドTKO勝利

井岡一翔を見て「こいつは10年後にウェルターを獲る」と予感できるだろうか?
それぐらい異次元のachievementである。
序盤からパンチを交錯させあいながら、
なぜか失速していくのはSライト上がりのコットだったという衝撃。
インタビューでは「ホントは痛かったんだよ」と笑っていたが、
この男のどこがordinary fighterなのか。
これを番狂わせと言わずしてなんとする。

次点:SUPER SIX Stage 1 ミッケル・ケスラー VS アンドレ・ウォード
ウォード 11ラウンド負傷判定勝利

次々点:WBA世界Sフェザー級タイトルマッチ
王者 ホルヘ・リナレス VS 挑戦者 ファン・カルロス・サルガド
サルガド 1ラウンドTKO勝利


☆ MVP ☆

○ マニー・パッキャオ 

他に誰か候補がいるのだろうか。
ハットンを葬り、コットをなぶり殺した今年は、
フィリピンのみならずアジアの、いや世界のボクシング史が
過去の歴史を掘り返し、そして新たな歴史の1ページを書き加えた。
イチローのメジャー最多安打記録更新の時にもそんな雰囲気があったが、
もうアスリートとしてはイチローは越えただろう。
残すはメイウェザーしかいないのだが、
ドーピング疑惑で現在交渉は頓挫中(終わってしまった?)。
ステロイドがどーたらこーたらと言われているが、
個人的にそれはないと確信できる。
その根拠については来年早々に気が向けば長文で書いてみたい。

次々々々々点:西岡利晃 

次々々々々々点:長谷川穂積 & 小堀佑介